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冒険者は話を聞かないやつが多い?



「ふー、やっと着いた。道案内ありがとうなシロ」

「ウォン」


シロの頭を撫でてやると、シロは満足気に尻尾を振って喜ぶ。

俺はシロの道案内のおかげで、無事に森を抜けることができた。目の前には、辺境都市バランの外壁が見える。

えっ?毛皮取ろうとしてたくせにもう名前付けてのかよって?

うるせぇ!色々とあったんだよっ!結局、森ぬけるのに三日もかかったんだよ!三日も一緒にいたら愛着の一つや二つ沸くよ!

・・・というわけで、俺はシロを今後も連れていく。異論は認めん。


「あー、やっとまともな飯が食える・・・」


この三日間、食べるものに困ることはなかったけど。三日連続で焼いただけの肉と木の実生活はきつかった。うん、マジできつかった。

調味料の大切さを思い知った三日間だったよ。あぁ、早くご飯が食べたい。でもその前に、冒険者登録して素材売って金を作らないといけないな。


「それじゃ、行くかシロ」

「ウォンっ」




・・・




「そこのお前!止まれ!!」


はい。今現在、門番の衛兵さんに通行止めをくらってます。衛兵さん、シロをめちゃくちゃ警戒してる。そうだよね。ノリでシロを連れて入ろうとしたけど、二メートルの狼なんてやっぱり無理があるよね。俺が衛兵さんの立場でも止めるわ。さて、どうしたものか。


「どうしました?疲れたんで早く休みたいんですけど」

「どうしたじゃない!なんだその魔物は!」

「魔物?この子のことですか?この子は、犬ですが・・・」

「ウソをつけ!そんなでかい犬がいるかっ!」


とりあえず、すっ呆けてみたけど無理だった。ですよね。二メートルの犬なんていませんよね。

だが、俺は諦めん。


「いやいや、実際に目の前にいるじゃないですか。それに魔物がこんなに人に懐きますか?」

「むっ、それは・・・そうだが」


これみよがしに、シロの頭を撫でる。シロはシロで、撫でられて嬉しいのか尻尾をブンブン振っている。さらに、もっと撫でてと言いたげな眼差しはまさに犬そのものだ。


「ほら、シロ。衛兵さんにも挨拶しなさい」

「ウォンっ!」

「むむっ」


よしよし、シロのワンコムーブに衛兵さんも毒気を抜かれている。・・・これは、いけそうだな。


「シロ、お座り!」

「ウォンっ!」


俺の命令通りに、シロは華麗にお座りと決める。そのあざと可愛さに、周囲にいたみなさんもニッコリ顔だ。衛兵さんも、何かに耐えるように悶えている。・・・あと一押しってところか。


「おまけに、毛皮がモッフモッフで気持ちいいんですよ」

「むむっ、モッフモッフなのか」


俺は、シロの美しい毛並みを思う存分にモフモフする。シロもお腹を出して、もっと撫でてアピールをする。周囲のみなさんのハートは鷲掴みだ。衛兵さんも、手がワナワナしてる。・・・止めといきますか。


「モッフモッフ・・・」

「良かったら衛兵さんも撫でてみませんか?」

「良いのかっ!・・・ごほん。そ、そういうのなら撫でてみよう」

「どうぞどうぞ、シロ。大人しくしてるんだぞ?」

「ウォンっ」


衛兵さん、一瞬だけどめっちゃ笑顔になったな。この人、間違いなく動物好きだ。


「それでは失礼して・・・おおぉ、これは・・・」


シロの頭を撫でた瞬間、衛兵さんは蕩けたような表情をする。

そうでしょうそうでしょう。シロの毛並みはとても綺麗だし、毛触りも抜群に気持ちいいのだ。そしてシロさん。あなただぁれ?って感じで衛兵さんを見つめるその表情あざといっす。

あなた、三日前までは野生でしたよね?最後に、衛兵さん。いかついおっさんの蕩けた表情は正直きついっす。


「衛兵さん、シロが魔物に見えますか?」

「ハッ!う、うむ。確かにこれは犬そのものだな。疑ってすまなかった」

「いえいえ、衛兵さんもお仕事ですから」

「そう言ってもらえると助かる」


俺の話をすっかり信じた衛兵さんは、俺に頭を下げてくる。ゴリ押してみるもんだね。そして衛兵さん、ちょろいっす。


「最後に確認なのだが、この都市に来た理由を伺っても良いかな?」

「あー・・・冒険者にでもなろうと思って来ました」

「ほう、冒険者にか。冒険者登録しに来る若者は多い。よし、通行を許可しよう」


へぇ、冒険者志望の人って多いみたいね。素直に理由を言ったら、特に疑われることもなく受け入れられた。


「ちなみに、冒険者ギルドってどこにありますか?」

「街の中央にある大きな建物が冒険者ギルドだね。行ってみたらわかると思うよ」


なるほど。衛兵さんの話を聞く限りでは、ゲームと同じ位置にあるっぽいな。後は見て確かめてみるか。


「わかりました。行ってみます」

「あ、ちょっと待ってくれ」

「遅くなったが・・・ようこそ、辺境都市バランへ」

「・・・ありがとうございます!」


まさか、こんなところで聞けるとわ・・・


RPG(ロールプレイング)における超メジャーなセリフ 「ようこそ○○へ」 をナマで聞けて、俺は感動する。ゲームをプレイすると、必ず聞くといっても過言ではないセリフの一つだ。


なんだか自分がゲームの主人公になった気分だなぁ。

日本にいた頃は良くゲームの世界で活躍する自分を妄想してた椎名にとって、先ほどの一言は椎名の心の琴線に触れた。めっちゃ触れた。


「よし、シロ。行くかー!」

「ウォンっ」


いやー、異世界って結構良いな。俺はご機嫌な気持ちで冒険者ギルドへ向かうことにした。




・・・




「よし、着いた。ゲームの配置とあんまり変わらないな」


衛兵さんと別れた後、俺は迷わずに冒険者ギルドの前まで着くことができた。

なぜなら、差異はあるものの街の配置や景観がゲームの頃とほとんど変わらなかったからだ。


「すっごい賑わってるなぁ」


ただ決定的に違うのは、人が多くとても活気があることだ。ゲームでは街中にはプレイヤーしかおらず、必要最低限のNPCしか配置されていなかった。

けど、ここはゲームじゃなくて異世界。なんていうのかな、ゲームにはない活気と生活感があるよね。

こういうのを目の当たりにすると、ゲームじゃなくて現実なんだなぁって改めて思う。


「キャー、モッフモッフ」

「可愛いワンコ~」

「わふぅ」


俺が感慨に耽ってる中、シロは住民のみなさんに撫でくりまわされていた。

最初はみんなシロを見てぎょっとした表情をするが、野生を捨てたあざと可愛いシロのワンコムーブにハートを鷲掴みにされていった。

多くの人に撫でられるシロ。嫌がるかな?って心配したものの、むしろ撫でられて喜ぶシロ。

お前、野生疑うどころか本当に魔物か?本当は犬なんじゃね・・・?

でもシロの人気のおかげで、屋台のおっちゃんから串焼きをもらえた。シロ様々だ。もう一本食べたかったけど、お金がないから我慢した。・・・冒険者ギルド行くか。


「よし、行くぞシロ!」

「ウォーン!」


俺の声に反応して、シロの尻尾がバッサバサ揺れている。

うん、いちいち可愛いなお前。すっかり俺もシロの可愛さにやられてるな、毛皮にしようとしてた頃の俺を殴ってやりたいわ。


さっ、とりあえず売りますかー。そして、さっきの串焼き買うわ。


「っっ!シロ避けろ!!」

「ウォンっ!」


突然頭の中からアラームが鳴り響き、咄嗟にシロに指示を出す。シロがいた場所には、矢が刺さっていた。矢が飛んできた方向を見ると、若い冒険者風の男女三人組がいた。みんなそれぞれ武器を構えている。

・・・完全に、シロを狙ってやがったな。

それと同時に、森にいたころからちょこちょこ鳴っていたアラームが何かやっと分かったわ。恐らく技能の【危機察知】が、アラームという形で頭の中に警鐘を鳴らしていたんだろう。

・・・あれ?そういえば、アラームが鳴るのって木の実とか魔物の肉とか食べる時ばっかりだったな・・・うん、考えるのは辞めよう。今は、シロに矢を射った奴が先だ。


「・・・シロ、俺の後ろにいろ」

「クゥーン」


俺の指示に素直に従い、俺の後ろへ避難するシロ。

・・・可哀想に、こんなに怯えてるじゃないか。シロの悲しそうな表情に垂れ下がった尻尾を見てると、怒りがフツフツとこみ上げてくる。


「お前ら・・・どういうつもりだ?」

「お前こそなぜ魔物を庇う!そこをどけ!」


三人組のリーダーらしき少年が、剣をシロへ向けつつ俺に怒鳴る。後ろにいる弓を引いている少女も、今にも攻撃してきそうな権幕だ。もう一人の少女の方は、杖を両手に抱えてオロオロとしている。


「魔物?どこに魔物がいる?」

「お前の後ろにいるだろう!」

「シロのことを言っているのか?この子は、少しばかり大きいが犬だ。魔物じゃないぞ」

「ウソをつかないでちょうだい!あなた、魔物を街の中に入れて何を企んでいるの!」


弓を持った少女が、話に割ってはいる。良く見ると耳が長い・・・エルフか?

違った形で出会っていれば、エルフキターと喜んでいたところだが、こいつはシロに矢を放ったやつだ。正直、ぶん殴りたい。


「何をもってウソと決めつけてんだ?衛兵さんも犬って言ってたぞ?」

「どうせ、衛兵を上手く騙したんでしょ。エルフである私の目は騙せないわ!」


・・・あー、エルフってそんな設定あったなぁ。魔力の流れを見る精霊眼だっけか、忘れてたわ。

しかし、衛兵さんにも周囲の住民の方々からも受け入れられているシロが優位なことには変わりない。その証拠に、周囲の三人組を見る目を厳しい。さすが、シロさん人気者。ここはそれに乗じて、ごり押しで通させてもらおう。


「お前の目が何なのか知らないが、いきなり俺の相棒に矢を射った事実は変わらんぞ。衛兵を呼んでお前らを捕まえてもらっていいが、お前らが謝るなら許してやるがどうする?」

「ふざけないで!誰があんたなんかに謝らないといけないのよ!」

「話にならないな、そこの少年。お前らも同意見なのか?」

「・・・」


エルフ少女の方は、興奮しすぎてて話にならない。俺は少年の方へ、質問を投げかける。冷静に考えて、いきなり矢を射ってきたのはそっちだ。衛兵を呼ばれて困るのは、どう考えても三人組の方だ。

正直殴り倒したいが、まだ若そうだし謝ったら年上の器量で許してやるか。後、シロ魔物だしな。


「・・・俺は」


そうそう、大人しく謝りたまえ。人は自分の非を認めれることで、人として成長するって、死んだバーちゃんが言ってた。


「俺は、リリィを信じる!」

「アルスっ!」

「なんでやねん!」


高らかに宣言する少年、そしてそれを潤んだ瞳で見つめる少女。そして、呆れた表情でそれを眺める俺と周囲のみなさん。なんでや、謝る以外選択肢なかったやろ!


「どうあっても、シロを魔物扱いしたい見たいだな」

「あぁ、俺は仲間を信じるっ!」

「アルス・・・」


話を聞かない少年に、その少年を熱っぽい視線で見つめるエルフ少女。さっきのやりとりだけで何となくわかったわ。こいつら、勘違い系熱血野郎だな。青臭い上辺だけの正義感で、自分の考えが正しいと思ってるタイプとみた。・・・もういいや、めんどくさいしこいつらぶっ飛ばそう。


「衛兵に突き出す前に、ちょっと社会の厳しさを教えてあげないといけないみたいだな」

「ようやく、本性を現したな!俺達、Dランクパーティーのブレイバーが相手だ!」

「ブ、ブレイバーって・・・ぶはっ」


俺の悪役っぽい言葉に、それみたことかと得意げに名乗りに出す少年。

しかし、その名乗りに思わず噴き出してしまう。ブレイバーって確か勇敢な者たち・・・つまり勇者て意味だろ?

Dランクの駆け出し冒険者が自分たちでブレイバー(勇者)って・・・いかん、気を抜いたらが笑ってしまいそうだ。


「何がおかしい!」

「ぶふっ、いやすまん。でもブレイバーって・・・ぶはっ」


顔を真っ赤にして怒る少年の姿も相まって、我慢できずに笑ってしまったわ。周囲のみなさんも思うとこがあったのか、クスクスと笑っている。

あ、少年がプルプルし始めた。


「笑うなぁぁぁああっ!【スラッシュ】!!」

「おっと、危ない危ない」

「なっ!?」


癪に触ったのか、鬼の形相をした少年が無抵抗な俺に武技を放ってきた。振り降ろされた剣を難なく片手で掴む俺、そして驚愕の表情を浮かべる少年。

ごめんな、少年。俺・・・色んなスキルが発揮されてて、低級の武技程度じゃ多分傷もつけれないんだわ。

実際に少年の動きは、ひどく遅く見えた。というか無抵抗かつ無手な俺に、いきなり剣で武技を放つとかこいつ大丈夫か?俺だったから良いものの、他の人だったら無事じゃ済まないぞ。


「これはお返しだ。【三段掌】」

「ごふっ!がはっ!げふぅっ!」

「「アルス(さん)っ!!」」


さっきの【スラッシュ】のお返しに、極限に手加減した【三段掌】をプレゼントする。俺の放った三段掌は、少年の顔面・胸・腹の急所にクリーンヒットする。

少年は4~5メートル吹き飛んだ後に、白目を剥いて気絶している。少年の元に少女達が慌てて駆け寄るのを確認しつつ、俺は安堵の息を吐く。


・・・上手いこと、絶妙に半殺しにできたな。

弱そうだから、めっちゃ手加減したけど。ちょうど良い塩梅に半殺しにできたようだ。あと少し強く打ってたら死んでそうだし、人間相手にうっかり殺しちゃったは通用しないしな。うん、手加減具合は今後の課題だな。


「アルスさん、今回復します!【癒しの・・・「【指弾】」あうっ」


杖の女の子は、治癒師か魔法使いと踏んでいたが、治癒師の方だったか。ポケットに仕込んでいた小石を使って、【指弾】で杖を弾きスペルの発動を防ぐ。杖だけを狙ったんだけど衝撃が強かったのか、少女は倒れこんでしまった。どうやら、気を失ったようだ。


「リリアっ!あんた、アルスに続いてリリアまでっ!」


杖の少女はリリアと言うらしい。まぁ、覚える気はないけどね。お前らは、ブレイバー(笑)で十分だよ。


「最初に仕掛けてきたのはお前らだ。恨まれる覚えてはなんだけどな」

「うるさいうるさいっ!【ストレートショット】」


俺は放たれた矢を素手で掴む。こいつ、明らかに顔を狙ってきやがった。コイツといい少年といい、俺を殺す気なのか?・・・最初に弓を射ってきたのもコイツだし、コイツには強めのお仕置きが必要だなぁ。


「・・・お前、今のは殺しにきたと判断していいか?」

「ひっ、来ないで化け物!【トリプルアロー】」


飛んでくる矢を掴みながら進んでくる俺に、弓の少女は顔を青ざめながらも矢を乱射してくる。


「来ないで!来ないでってばぁ!!」


俺は歩みを止めない。なるべく恐怖を与える為に、戦士の技能【威圧】を抑え気味に発動しながらゆっくりと弓の少女へと歩いていく。【威圧】が効いているのだろうか、徐々に近づいてくる俺に弓の少女は涙と鼻水を垂らしている。あ、とうとう座りこんじゃったな。


・・・これ、傍から見たら俺が悪者じゃね?

どう見ても十代半ばの少年少女をいじめる、二十二歳の俺の図しかないな。うん、深く考えるのは辞めよう。


「来ないでこない・・・はうぅ」


少女の目の前まで到達すると、弓の少女は気絶しちゃった。あっ、股から水が。

・・・やりすぎたか?いやいや、でも先にやられたのはこっちだし。いやでも・・・

目の前の失禁し気絶している少女を見下ろしつつ、物凄い罪悪感が襲ってくる。いきなりシロが攻撃されて頭にきてたこともあるけど、大人げなかったかな?一応、反省しとこう。

俺も反省したし、こいつらも報いを受けたし。とりあえず、このままにしとくのも可哀想だし起こしてあげるか。


「おい、大丈夫・・・」

「何だぁ、うるせぇな・・・ってリリィちゃんじゃねぇか!おめぇ、リリィちゃんに何しやがった!」


あっ、これ不味いパターンだ。この展開、ラノベで呼んだことある。

冒険者ギルドから出てきたいかついおっさんは、この弓の少女と知り合いなんだろうな。気絶(おまけに失禁)してる少女を見て、めっちゃ俺に怒鳴りこんでる。

何とか誤解解けないかなぁ。


「おい、どうしたんだ?・・・ってリリィちゃん!良くみたらマルスにリリアちゃんまで倒れてるじゃねぇか!」

「「「何だ?どうしたどうした?」」」


あぁ、これは誤解解けないやつだなぁ・・・冒険者ギルドから二十人くらいワラワラと出てきたよ・・・みんなブレイバー(笑)の姿を確認すると、次に俺を睨みつけてくる。熟練のコンビネーションとでも言うのかな。あっという間に、取り囲まれてしまった。


「アルスはどうでも良いとして・・・俺たちの天使リリアちゃんに・・・」

「リリィちゃん・・・怖い目にあったんだな、顔が青ざめてやがる。アルスはどうでもいいけど」


・・・アルス、人望ないなぁ。まぁ、イケメンが美少女二人侍らせてるような感じのパーティーだしな。やっかみがあっても当然っちゃ当然か。


「おめぇさんが、リリアちゃんとリリィちゃんをやったのかい?」


冒険者の一人が俺に問いかけてくる。お、話し合いのチャンスでは?

筋骨隆々のおっさん達に、囲まれるのは正直きつい。なんというか、密度が濃いというか臭いが凄いというか・・・早く誤解を解いて離れてほしい。


「確かに俺だがそれは・・・」

「おい!聞いたかお前ら!リリアちゃんとリリィちゃんの仇だ!やんぞ!!」

「「「おおおおおおお!!!」」」

「だああっ、仕方ない。相手してやんよっ!」


話し合う気ないんかい!俺めがけて殺到してくる冒険者たちに、やけっぱちで答える。

何でこうなった?素材売りたいだけなのに・・・串焼き・・・





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