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新しい街へ、そして新しい装備




「ふいー、良い眺めだねぇ」


俺は現在、少し小高い丘の上で体育座りをしながら景色を眺めている。え?なんでって?・・・現実逃避ですよ、はい。ちなみにシロさんは、陽気が気持ち良いのか隣で丸まって寝てる。


「はぁー、帰りたくねぇー」


ブレイバーを救出してから一週間・・・街に超居づらいのだ。

事の顛末を説明しよう。俺はゴブリンの巣から、ブレイバーを救出して街に戻った。ブレイバーを連れて街に戻る俺。かけよるギルマスにマイカちゃん。そして、チキン野郎ども。みんな、ブレイバーの無事を確認して喜んだり泣いたりしてた。

ギルマスは俺に再度頭を下げ、マイカちゃんは泣きながら俺の無事を喜んでくれた。そして、それを微笑ましく見ている野次馬で集まってきた住民のみんな。

そう、ここまでは良かった。だが、問題はその後だ。冒険者のチキン野郎どもが、俺に対してまさかの悪態をついてきたんだ。


多分、意地になってて素直に謝ることが出来なかったんだろうな。ギルマスの制止を無視して、まー言いたい放題言ってくれたよ。マイカちゃんは悲しくて泣いちゃったし、野次馬できてた住民のみんなは汚物を見るような目でチキン野郎どもを見てた。


まぁ、かくいう俺も・・・プチっときたね。

えぇ、その場にいたチキン野郎ども全員ぶっ飛ばしましたとも。ちょっとスッキリした。

けど、この一連の流れがいけなかった。元々、住民からの評判が悪かったのに、バランの冒険者は恩を仇で返すやつ、口だけで実は大したことないというイメージがついてしまった。


ぶっ飛ばした日を境に、冒険者(俺とブレイバーを除く)に対する住民たちの態度がガラっと変わってしまった。

まず冒険者ギルドの依頼が激減したらしい。なんでも信頼できないやつらに、依頼なんて出せないそうだ。更には、冒険者お断りの店まで出てきてるらしい。冒険者稼業は信頼が大事だし、仕方ないね。

でもこれって、一番被害くってるのってギルマスだよね?あの人悪くないのに・・・ギルマスの毛根大丈夫かな。


ちなみに、俺がギルドに入ると。


「・・・チッ」

「・・・」

「ケッ!」


こんな感じで、めっちゃ嫌われてる。でも、俺にぶっ飛ばされたせいか、俺に突っかかってくるやつはいない。遠巻きに恨みがましく俺を睨むだけだ。


「あうぅ・・・」


俺に話しかけたいけど、他の冒険者たちの手前話しかけられず涙目でオロオロとしてるマイカちゃん。

・・・なんかね。マイカちゃんの姿がいたたまれなくて、そのまま帰ってきたよ。

なんだかなー。冒険者って人種は、能天気でサバサバしてるもんだと思ってたけど、実際は日本のやつらとあんまり変わらないようだ。俺がFXで大金稼いだ時も、クラスのやつらの妬みはすごかったしな。


「こ、こんにちわ。シーナさん。シロちゃん」

「ワフッ、ハッハッハッ」

「きゃっ、ふふ。シロちゃんったら」


俺が黄昏てると、リリアちゃんがやってきた。シロはいち早くリリアちゃんに気づいて、めちゃくちゃ甘えている。


「やあ、リリアちゃん。今日もシロに会いに来てくれたのかな」

「は、はい。・・・シーナさんにも会いにきました」

「ん?」

「い、いえ、何でもないです」


顔を真っ赤にして俯くリリアちゃん。・・・風邪かな?

リリアちゃんは今日みたいに、ちょくちょくシロに会いにやってくる。シロのついでに俺にも弁当とか作ってくれるし、すごい良い子だ。

他の二人はどうしたって?あのゴブリン事件から、アルス君は謝罪とお礼があったけどそれっきりだ。リリィちゃんに至ってはマジで知らん。

はぁ、命を助けてやったのにこの塩対応。若い子は薄情だねぇ。あ、リリアちゃんは違うけど。


「そろそろ、違う街に言ってもいいのかねー」

「・・・えっ?」


あぁ、思ったことがつい口に出ちゃってたみたいだ。でも、案外それもアリかもしれんな。

バランで、冒険者としての最低限のノウハウは学んだつもりだ。そろそろ、違うとこを目指しても良い頃合いかもしれん。居心地も悪いしな。


「・・・旅に出ちゃうんですか?」

「んー。ここで得るものももうないし、良い機会かなってね」

「そう、ですか・・・」


この街を出るとして、次はどこを目指すかな。ゲーム通りに行くなら王都だけど・・・それはそれで面白くないな。あ、その前にシロにも確認しないとな。


「シロさ、俺そろそろこの街を出ようと思うけど。ついてきてくれるか?」

「ウォンッ!!」


当然だと言わんばかりに強い返事を返してくれるシロに、ほっこりする。バランの森に愛着とかあったらどうしようかと思ったが、そうでもないようだ。バランウルフにボコられてたしな。


「あ、あの!」

「ん、どうした?」


どうせなら、美味いものがあるとこがいいな。あ、魚が食べたいかも。ここ山の幸ばっかで魚は干物ぐらいしかないしな。久々に新鮮な海の幸が食べたくなってきた。

・・・となると、湾岸都市シースあたりか?うん、良いんじゃないかな。


「わ、わた、私も連れていってください!」

「んー、いいよー」

「ほ、本当ですか!?」


そうと決まれば物資を集めないとな。ここからシースに行くとなると、大分長旅になるな・・・って、んん?なんか今、リリアちゃんがすごいことを口走った気がする。


「あのリリアちゃ・・・」

「ありがとうございます!私頑張ります!」

「いや、あのリリ・・・」

「さっそくお父さんとお母さんを説得してきますね!」

「ちょ、待って・・・行っちゃった・・・」


すごい勢いで街へ戻っていくリリアちゃん。・・・これは俺やらかしちゃったやつかな?

言えない。いろいろ考えてて、生返事してましたなんて言えない。今更ダメなんて言ったら、きっとあの子は泣く。あんな良い子を泣かせたら、俺の心は死ぬ。


「・・・ワゥ」


シロよ。そんな目で見るんじゃないよ・・・れ、冷静になるんだ椎名。あんな良い子が親に大事にされてないわけないじゃないか。俺だったら、超溺愛してる。

そんな子を、こんなわけのわからない新米冒険者と一緒に旅に行かせるわけがないじゃないか。うん、きっとそうに違いない。

ふふ、ちょっと気が楽になってきたぞ。そして、シロさん。その目をやめなさい。


「ま、何にせよ。準備は必要だな」

「ウォンっ!」


俺は、立ち上がると街へと歩き出す。リリアちゃんの件は、とりあえず保留にしといて。

目標も定まったし、色々と準備しなきゃな。




・・・




「おっちゃん、長剣(ロングソード)と槍を売ってくれ」

「久しぶりに顔を見せたと思ったら・・・おぬし、色々とやらかしておるみたいじゃな」

「おお、モテモテみたいだねぇ」

「・・・ほめとらんわい」

さてやってきましたよ。ファンタジー要素の塊、ムッキムキのツンデレドワーフのお店。武器屋さん!

いやね。この街を出るのを機に、小剣から長剣に持ち替えても良いんじゃないかなって思ったのよ。ほら、せっかく旅に出るのに装備が小剣だけってカッコつかないじゃん?それに、旅先でナメられそうな気もする。


「まー、モテモテなのもいい加減疲れてきてね。違う街に行こうかなってのが本音かな」

「・・・はぁ、長剣と槍じゃな。見繕ってくるから待っておれ」

「サンキュー、おっちゃん!」


俺が少し本音を漏らすと、おっちゃんは何も言わずに俺のリクエスト通りに武器を選んでくれる。

いやー、相変わらずのツンデレっぷりだね。これでムキムキおっちゃんドワーフじゃなくて、美少女ロりドワーフだったら完璧だったんだけど。現実って残酷だね。


「お、あの槍いかついなぁ」


おっちゃんの見繕いが終わるまで店内の武器を眺めてたら、店の端っこに埃をかぶっている槍が目に入った。装飾も何もないけど重厚で、無骨なまでにも自分が武器であることを主張しているような鉄槍だ。

・・・いいな。装飾された豪華な武器よりも、こういう素朴だけど武器として性能のみを追求した武器の方が俺は好きだ。

でも、何でこんなに良い槍が隅っこで埃かぶってるんだ?かっこいいのに。


「なんじゃ、その失敗作が気になるのか?」

「えっ?これ失敗作なの?・・・こんなにかっこいいのに」

「ふはは、かっこいいか!そうかそうか、ふははは」


おや、自分で失敗作って言ってる割には、槍を褒められてすごい上機嫌だ。

えー、それにしてもこの槍失敗作なのか・・・こんないかついのに強度とかに問題あるんかな?


「竜撃槍と言ってな。ワシの最高傑作であり・・・失敗作なんじゃ」

「ん?どういうこと?」

「この槍は、対竜戦を想定して作っておってな。竜の鱗を貫く為の強度・耐久度を考慮して作った結果、使う処か冒険者三人がかりでやっと持ち上げれる重さになってしまったわい。紛れもなくワシの持ってる全てを注ぎ込んだ最高傑作じゃが、誰も使えんとなるとタダの失敗作じゃわい」


竜撃槍・・・名前もめっちゃかっこいいやん。んー、でも重すぎて使えないのか。こんなにかっこいいのに残念・・・ん、待てよ?俺なら持てるんじゃね?

力自慢の冒険者が無理でも、全ての職業を極めてる俺なら・・・


「おっちゃん」

「ん?なんじゃ?」

「この槍、俺に売ってくんない?」

「ハン、持っていけるもんなら持っていくがいいわい」


よし、言質は取った。後は、自分の力を信じて槍を持ち上げるだけだ。・・・自分の力なのか?まぁ、そういうことにしておこう。


「その言葉、後から曲げんなよ・・・よっと」

「んなっ!?」


竜撃槍を片手で軽々と持ち上げる俺を見て、アゴが外れそうなぐらい口をパッカーンと開いてるおっちゃん。ふふ、俺も実はビビってるわ。というか、重さの感じが小剣持ってる時と対して変わらないんだが・・・自分のことチートだと思ってるけど、改めて実感するなぁ。


「うん、やっぱり良い感じだな。この槍」

「・・・」


持ち上げたついでに、竜撃槍を軽く振ってポーズを決めてみる。自分が前田慶次みたいな歴戦の武将になったみたいで、すっごく気持ちいい。

サブウェポンのつもりだったけど、この竜撃槍で大物相手に大立ち回りをするのも悪くないな。ますます欲しくなってきた。


「約束通り売ってもらうよ。おっちゃ・・・うぇっ!?」


催促しそうとおっちゃんの方を見たら・・・おっちゃんが泣いてた。しかも、割と号泣だ。ムッキムキのドワーフが感極まった顔で鼻水垂れ流して泣いている。正直、見ててエグい。


「お、おっちゃん?」

「・・・すまん。店の隅で埃を被ってた槍が、日の目を浴びる機会に恵まれたことが嬉しくてな」


あー、この槍っておっちゃんにとって、思い入れでもあるんかな?自分で最高傑作だけど失敗作って言うくらいだしな。でも、何か売ってくれそうな雰囲気だ。


「・・・持ってけ」

「え?お金は?」

「いらん、俺からの餞別だ。もってけ」


まさかの無料(タダ)である。いやいや、誰も使えないとはいえ、素人の俺から見てもかなりの業物ってのは分かる。あんまり高すぎると払えないけど、タダっていうのもすごい気が引ける。


「小僧のくせに遠慮するんじゃないわい。・・・その代わり、ちゃんと使ってやってくれ」

「・・・わかった。ぶっ壊れるまで酷使してやんよ」

「ふ、ふははは。そうかそうか、なら壊れた時はまた作ってやるわい」

「ふふ、その時は頼むよ」

「うむ、まかされたわい」


・・・おっちゃんの竜撃槍に対する思いが伝わってくるな。これを無碍にしたら、漢が廃るってもんだ。素直に受け取ろう。そして、決めた。この槍をメインにする。宣言通りぶっ壊れるまで酷使したるわ!

おっちゃんも嬉しそうだし、その方がおっちゃんも喜ぶと思う。


「よし、次は長剣の方をお願いするよ」

「あぁ、忘れとったわい。これなんかどうじゃ・・・」

「おぉ、これもなかなか・・・」




「ありがとうな、おっちゃん。そろそろ行くよ」

「おう、見送りにはいけんが達者でな。たまには帰ってこいよ」


俺はホクホク顔で、ドワーフのおっちゃんに別れを告げお店を後にする。長剣は腰に帯剣し、竜撃槍は肩に担ぐ形で収まっている。え、何で槍は担いでるのかって?だって、竜撃槍の重さに耐えれるホルスターがなかったんだもん。そりゃ、担ぐしかないじゃん。


「いやー、良い買い物だったな」

「ワゥン」


シロも俺の新装備に目を輝かせている。そうだろうそうだろう。

やっぱ武器って大事だよな。小剣は小剣で使い勝手が良いんだけど、やっぱり初心者用武器感が拭えない。現に小剣しか持ってない俺をナメて絡んできたり、バカ(冒険者)にしてくるやつが一定数いたしな。どこのヤンキーだよ。

でも、見よこの槍を!気分は歴戦の武将だよ。通りかかる人たちが、俺をみてギョっとした表情を浮かべてるよ。特に冒険者たちは、俺の眼をみないように避けて通ってるわ。


「よし、次はお隣で服買って。後はお世話になったとこに挨拶まわりだな」

「ウォンっ!」




・・・




「いやー、良い買い物したな。シロ」

「ワォン」


挨拶まわりがてら買い物もしてったら、荷物が大変なことになった。もうね、シロの背中パンパンですわ。

・・・でも、俺が旅に出るって伝えたらみんな寂しがってくれたなぁ。そうなんだよね。嫌な思いをしたのは大体冒険者関連なだけで、住民のみんなとは仲良くできてたんだよねぇ。


「さて、帰るか。宿屋のおばちゃんにも伝えないとな。行くぞシロ」

「ワンっ!」


出来れば次の街では、冒険者とも仲良くしたいねぇ。




ところで、シロさん。今ワンって鳴かなかった?


「・・・」


気のせいか。




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