初めてのダンジョン
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「よし、シロ隊員。今日もギルドに、依頼を受けに行きたいと思います。準備はいいかね?」
「ウォンッ!」
「よろしい。ならば、私についてきたまえ!」
「ウォンッ!」
「今日も仕事かい?精がでるね、気を付けていってらっしゃい」
「あ、はーい。いってきまーす」
「ワフッ!」
毎日恒例となった、俺とシロの掛け合い。すっかり宿屋に馴染んだ俺とシロを、おばちゃんが笑顔で送り出してくれる。宿泊者のみんなも、俺の後ろを付いてくるシロに笑顔で手を振っている。
・・・良いなこの感じ、なんか拠点というかホームって感じがする。あったけぇ。
「昨日は薬草摘みだったから、今日はいっちょモンスターでも討伐してみるか!」
「ウォンっ」
俺は、やる気と温かみを胸に冒険者ギルドへ向かう。
「ん?なんかやけにザワついてるな」
正確にはいつも騒がしいけど、俺が入ると途端に静かになる。って改めていうと、何か悲しくなってきたわ。・・・うぉっほん、話を戻そう。そう、俺が入ってきたのに騒がしいままなんだよね。
なんというか、みんなピリピリしてる。俺になんかに構ってられない、そんな感じだ。
お、ちょうどマイカちゃんがいる。聞いてみるか。
「おーい、マイカちゃん」
「あ、シーナさん。すいません、今立て込んでて依頼はもう少し後からでも良いですか?」
ちなみに、マイカちゃんとは薬草摘みの報告の時にお互い自己紹介済みです。
「それはかまわないけど、何かあったの?すごい騒がしいけど」
「えーっと、それはですね・・・ブレイバーのみなさんが、ゴブリン討伐依頼を受注してですね」
「それがどうかしたの?」
「それが、その・・・」
マイカちゃんは、とても言いづらそうにしてるけど意味がわからない。冒険者が討伐依頼を受けたってだけだろ?しかも、ゴブリン。人型魔物最弱の名を欲しいがままにしてる魔物だ。
そんな雑魚魔物と、仮にもDランクパーティーのあいつらが何の関係があるんだ?
「俺が代わりに説明しよう」
「ギルドマスター!」
「後はいい、マイカは別の受付を頼む」
「・・・はい。わかりました」
言って良いのか決めかねているマイカちゃんの元に、ギルドマスターがやってきた。さっきの続きは、ギルマスが話してくれるらしい。マイカちゃんは、俺にお辞儀をすると受付業務に戻っていった。
「どうも、それでどうしたんですか?」
「あぁ。さっきマイカが、ブレイバーがゴブリン討伐依頼を受けたとこまでは聞いていたな?」
「うん、聞いた。けど、それの何が問題あるんだ?さっきからみんなピリピリしてるけど」
俺の疑問はそこに尽きる。あのゴブリンだよね?Dランクのあいつらなら、問題なく狩れると思うんだけど・・・
「ゴブリン討伐自体は問題じゃない」
「はぁ、なら何?」
「あいつら、どうやらゴブリンの巣に向かったみたいなんだ」
「えぇ・・・」
・・・呆れた。ゴブリンの巣とは、ゴブリンがうっじゃうじゃいて、なぜか執拗に女性を狙ってくることで有名な場所だ。ゲームでは、一番最初に攻略するダンジョンだね。何も知らないで行ったときは、女性アバターに群がるゴブリンの群れを見て気持ち悪かったなぁ・・・
女の子連れて、なんでそんなとこに行くかね。意味がわからん。
「あいつらはゴブリンの巣の特性は理解してるのか?」
「・・・多分、知らん。知っていたらリリィとリリアを連れていくはずがない」
「ちなみに、ダンジョン経験は?」
「・・・ないはずだ。俺が、まだ早いと止めていた」
「つまり、ダンジョン経験もないのに女性を連れてゴブリンの巣に行っちゃったと。そして、いつまで経っても帰ってこないと」
「・・・そうだ」
「うわぁ、救えねぇ」
俺の発言に、周囲の冒険者たちが険しい目で俺を見る。ギルドマスターも苦虫を潰し切ったような渋い表情してらっしゃる。
いやいや、そうだろ。なんの下調べもせずにダンジョンに行くとか、冒険者稼業なめてるとしか良いようがないよね。救いようがないよ。
「助けにはいかないんですか?」
「・・・ハイゴブリンの目撃情報がある。今は迂闊に動けん」
「ははーん、我が身可愛さに誰も助けに行かないと」
おぉー、ギルマスの額にぶっとい青筋が。周囲のやつらも今にも俺に飛び掛かってきそうだ。あ、一触即発の空気にマイカちゃんがオロオロしてる。可愛い。
「・・・お前のせいだ」
「ん?なんで?」
俺を囲んでた冒険者の一人が、なぜか俺のせいにしてきた。周りのやつらも、そうだそうだって野次を飛ばしてくる。・・・わけわからん。
「お前にやられてから、住民たちから冷めた目で見られるんだ!」
「そうだ!俺なんか、こないだ街を歩いてただけで指さされて笑われたんだぞ!」
「お前のせいで、バランの冒険者が舐められてるんだ!」
「アルスはなぁ、そんな俺たちバラン冒険者のイメージを払しょくするためにゴブリンの巣攻略に行ったんだ!」
一人を皮切りに、どんどんと俺に対する不満をぶつけてくる・・・いや、知らんがな。
お前らが勝手に俺に襲いかかってきて、返り討ちにあった。ただそれだけじゃん。自業自得じゃん。
「それで、何でお前らはあいつらを助けにいかないんだ?」
「・・・それは、聞いてただろ!ハイゴブリンがいるんだ。俺たちじゃ勝てねぇ」
「はぁー、冷たいねぇ。お前らの為にゴブリンの巣を攻略しにいったのに、あいつらのピンチにはお前らは何もしないと」
「っ!強いお前には、俺たちの気持ちはわからないだろうよ」
こいつらの筋肉は飾りかな?どいつもこいつも、ハイゴブリンにビビってるチキンじゃん。っていうか、ハイゴブリンってそんなに強かったっけ。ゴブリンよりかは強かった記憶しかない。
はぁー、めんどくっさ。
「まぁ、俺には関係ない話だね」
「・・・貴様!」
「俺に当たるなよ。そもそも、あいつらをゴブリンの巣にけしかけたお前らの責任だろ?」
「ぐっ!」
俺の発言に、周囲の冒険者たちが俯く。どうやら、自分たちのせいであるということは自覚してるようだ。ただやり場のない怒りと不安を、俺にぶつけてきたみたいだ。気持ちはわからんではないが、八つ当たりされる方としては迷惑この上ない。
はぁー、ほんとめんどくっさ。
「マスター、ゴブリンの巣ってどこだ?」
「・・・おい、どういうつもりだ?」
ギルマスは俺を訝しい目で見る。言外に、助けに行ってやるって言ってんだから察しろよ。
「どうもこうも、助けてやるっつってんだよ。マイカちゃん、地図お願い」
「は、はいっ!すぐに持ってきます!」
マイカちゃんは俺の助ける発言に、ニパァっと笑顔で地図を取りに行く。うん、やっぱり擦れてない子は素直で可愛いね。かといって、ギルマスは周囲のエセ筋肉どもがニパァって笑っても殴り倒すけどな。気持ち悪いし。
「・・・シーナ」
「なんだ?お前らの尻拭いしに行くんだが、文句あんのか?」
「いや、アルスたちを頼む」
「・・・あいよ」
ギルマスは俺に深々と頭を下げくる。威勢だけは良いチキン野郎たちとは違って、ギルマスだけはまともなようだな。チキン野郎たちは、今も俺とギルマスのやり取りをただ見てるだけだ。
・・・この騒動がある程度落ち着いたら、この街を出てくのもアリだな。
「お待たせしました!シーナさん、お気をつけて・・・」
「ありがとう。行ってくるよ」
前言撤回、ギルマスとマイカちゃんだけはまともだ。俺はマイカちゃんから地図を受け取り確認する。良かった。地図を見る限り、ゲームの頃とほぼ変わらんな。
俺は、ゴブリンの巣に向かって駆け出す。
あー、めんどくっさ。面倒ごとに顔を突っ込んじゃう自分がめんどくっさ。
・・・
「ここが、ゴブリンの巣だな」
「ワフ・・・ワフゥ・・・」
俺は今、ゴブリンの巣である洞窟の入り口付近に身を隠している。洞窟の入り口を伺うと、ゴブリン二匹が入口を守っているのが見える。ちなみに馬を使って三時間かかる工程を、俺とシロは一時間で走ってきた。
俺はもっと早く走れたけど、シロさんが色々と限界だったのでセーブして走った。
狼より足が速いって、どうよ?俺だったら人間疑うね。
冗談はさておき、本当に自分が怖いわ。シロさんはバテすぎて地面に突っ伏してるのに、俺は微塵も疲れを感じない。全職業カンストの恩恵、恐るべし。
「シロ隊員、そろそろ行くけど。大丈夫かね?」
「・・・ウォン」
シロは足をプルプルさせながらも起き上がる。・・・ギリギリだけど、歩けるくらいには体力復活したみたいだ。
「ここから先は全部俺が倒すから、シロ隊員ははぐれずに付いてくるように」
「ウォンっ!」
何だかんだで、人型の魔物と戦うのは初めてだ。ブレイバーを助けるついでに、ここらで戦闘の経験値を積むのも悪くない。
「それじゃ、行くぞ!【迅雷】」
「グギャっ!」
俺は入り口を守っていたゴブリンの片割れに、神速のタックルをかます。吹っ飛んだゴブリンは、岩に激突し爆散する。
「ギャギャッ!?」
「遅い!【烈波】」
「ギャッ!」
今度はいきなり現れた俺にびっくりしてる残りの片割れに、両手掌打を腹にかまし全身に衝撃を与える。掌打が当たった瞬間、ゴブリンは爆散した。
よし、スムーズに二匹とも処理できた。だけどこれはグロい。まるで惨劇が起きたみたいに、周囲一帯が血で真っ赤に染まってるわ。
初めての人型魔物との対戦で、ちょっと緊張してたのかな?武技の威力コントロールが甘くなってたみたいでこのザマである。
「でも、人型でも魔物だからかな?罪悪感はないな」
「ワ、ワフゥ・・・」
あらやだ、シロさんドン引きしてらっしゃる!いや、わかるよ?俺もドン引きしたもん。でもすぐに技能先生によって鎮静されちゃったから、今はもう何も感じないや。
洞窟内で拳系の武技は辞めとこうかな。洞窟内で爆散されても困る。
「次は小剣を試していくか」
「ワ、ワフ!」
剣なら大丈夫だ、剣なら爆散することはないに決まってるさ。だから、シロさん俺との距離あけないで。
若干、シロさんが俺にビビってるのを気にしつつ、俺たちは洞窟の中へ入っていくことにした。
「最低限の灯りはあるけど暗いねぇ・・・【光球】」
俺は、光球で薄暗い洞窟内を照らす。うん、良い感じに明るい。照らされた洞窟内は一見ただの一本道のように見えるが、実はゴブリンが潜める大きさの横穴がいくつも掘られている。
洞窟の暗さを利用して、のこのこと入ってきた侵入者を挟み込み奇襲をかけるっていう寸法だ。二度目は通じないけど、初見には中々有効な攻撃だと思う。ゴブリンのくせに考えてるね。
「おぉー、いるいる」
しかし、そのゴブリン戦法も俺にはまったく無意味だ。暗さは光球で照らせるし、横穴に潜んでても技能の【気配察知】が発動してゴブリンがどこに潜んでるか手に取るようにわかる。
「ギョアッ」
「グギャッ」
「グギョッ」
俺は洞窟内を進みつつ、横穴に潜んでいるゴブリンを的確に小剣で突き刺していく。
・・・バレない前提であんなに狭い穴に潜んでるんだもんなぁ。そりゃ、剣を突き刺されたら避けようがない。
「んー、武技を使うまでもないなー」
「ワフゥ」
正直、張り合いがない。俺はあくびを噛みしめながらも、奥へ進んでいくことにした。
・・・
「お、あれは・・・ハイゴブリンか?」
「ギョギョッ!」
「ギョエギョエ!!」
しばらく進んでいると、通常のゴブリンよりも二回りほど大きくムッキムキなゴブリン四匹が俺の前に立ちはだかってきた。何だかご立腹の様子である。そりゃそうか、俺たち侵入者だもんね。
「パンツ・・・いや、せめて腰巻くらいは穿いててほしかったなぁ」
「ワゥゥ・・・」
目の前のハイゴブリンたちは、生まれたままの姿だった。正直見ててツライ。それは、人間社会に染まったシロも同様でゲンナリとしている。
「ギャッ!ギャウギャッ!!」
「うげぇ・・・」
俺の言葉が通じたのか、ハイゴブリンたちが怒気を強めて襲い掛かってくる。こっちに走ってくる度に・・・立派なモノがブルンブルン揺れて迫ってくる。
もう一回言うね。正直ツライ。
「嫌だけど、こいつらで試すか。【スラッシュ】」
「ギョエァッ」
俺は二匹のハイゴブリンを、豆腐のように地面ごと斬り捨てる。
「【五月雨】」
「ギャッ!ギャッ!ギャッ!ギャッ!」
続いて神速の突きを放ち、ハイゴブリンを文字通り蜂の巣にする。剣がハイゴブリンの体を貫通しまくって、壁も蜂の巣みたいに穴が空いた。
「最後だ。【バイトスラッシュ】」
「アギャッ」
最後の一匹は、高速に上下に剣を振る連撃で三枚に卸す。ついでに壁と地面も卸してしまった。
「んー。勢い余って壁や地面も大変なことになってるなぁ」
「・・・ワゥ」
拳系の武技と違って、敵が爆散しないのはグロさが減って良いんだけど、今度は周囲への被害がひどいな。
初級の武技でコレだぞ?もっと派手な武技使ったら洞窟崩壊しちゃうんじゃないか・・・?
うん。狭いとこや人が多いとこでは、なるべく注意しよう。生き埋めやら巻き込み事故で殺人とかゴメンだしな。
そして、シロさんが俺をまるで化け物を見るかのような目で俺を見ている。いやいや、シロさん。あなた魔物ですやん。
「あ、そういえばハイゴブリンなら魔石が取れるんじゃないだったっけ?」
魔石とは、中級の魔物から取れる魔力が凝縮して石になったもののことだ。なんで魔力が凝縮すると石になるかは、俺も知らん。
「うーん、でもハイゴブリンの死体漁るのも気持ち悪いな。シロ、任せたわ」
「ワフッ!?」
えっ!ボクっすか!?みたいな表情を浮かべるシロさん。え、ばっちぃから嫌って?いやいや、シロさん。あなた魔物ですやん。・・・そっか、嫌か。
「うぇっ、気持ちわるっ。こんな思いして小粒かよ・・・」
魔石は、俺が取り出しました。でも、ハイゴブリン程度の魔石じゃこんなもんか。取り出した魔石は小指くらいの大きさだった。
魔石の用途は、主に魔道具の作成に使われるんだけど。これくらいの魔石じゃ大した魔道具は作れないな。まぁ、一応とっとくけどさ。
「しかし、大分奥まで進んだけど。あいつらこんな奥まで来れるんかな?」
「ウォン?」
俺の疑問に、シロさんも同意のようだ。
洞窟内は等間隔に松明が置いあるとはいえ薄暗い、俺みたいに光球みたいな光源や気配察知の技能を持ってないと割と危ないと思う。
ちなみに、ここまで来るまで一本道のみだ。あいつらの実力を考えると、ハイゴブリンはどう考えても無理なんだよな。それなのに、まだ見つからないってことは、捕まった或は奥のほうに逃げたってことか?
「お、どうかしたのかシロ?」
「ワフワフ」
「この杖は・・・でかしたシロ!」
「ワォンッ!」
最悪の展開を考えてたら、シロが杖をくわえて戻ってきた。恐らくリリアちゃんの杖だろう。見覚えがある。でも、武器を手放しちゃってるあたり不味い状況な気もする。
「シロ、匂いを辿れるか?」
「ウォンッ!!」
出来るらしい、シロさんパネェっす!シロはあの襲撃事件の後、リリアちゃんとは仲良くしてたしな。匂いを覚えててもおかしくはないか。
「よし、頼んだシロ隊員!」
「ウオォーン!」
任せろと言わんばかりに力強く吠えるシロ。さっきまで後ろ着いてくるだけだったしな、活躍できて嬉しいのと、リリアちゃんのこと気にしてたらしい。
ふふ、帰ったらごはんいっぱい食べさせてあげないとな。
・・・
「ワフッ、ワフッ」
「ここか?岩しかないぞ?」
「ワォンッ!」
通路脇に出っ張ってる岩を爪でカリカリするシロ。うーん、ただの岩にしか見えないけど。シロは、自信があるらしい。
「あ、ちょっと隙間があるな」
どうやら、岩の奥に小さな穴が空いてるっぽい。ハイゴブリンが潜むようの穴かな?
「よっこいしょっと・・・お、ビンゴっ!偉いぞー、シロ」
「ウォンッ!」
岩を軽々と持ち上げてどけると、気を失って倒れているブレイバーの三人がいた。・・・うん。ボロボロだけど命の心配はなさそうだ。良かった良かった。
俺はお手柄の名犬シロを褒める。シロもリリアちゃんが無事で安心したようだ。リリアちゃんの顔を嬉しそうに、ペロペロ舐めてる。俺もリリアちゃんは嫌いじゃないから、彼女だけには回復魔法をかけといてあげよう。
「さって、見つけたし帰るかね。シロ、この三人を背中に乗せて歩けるか?」
「ウォンッ!」
余裕らしい。さすがっす。
「おお、そうかそうか。帰ったらご褒美に、いっぱいごはん食べさせてあげるな」
「ウォフッ!!」
ご飯って単語だけで、涎がすごいことになってるけど気にしてはいけない。俺はブレイバーの三人を、シロの背中に一人ずつ積んでいく。うん、三人乗っても問題なさそうだな。
「よっし、帰るぞー」
「ワフッ!」
「GUGYAAAAAA!!」
「・・・お?」
突然、洞窟の奥からけたたましい咆哮が聞こえてきた。咆哮の聞こえる方を見ると、ハイゴブリンを更に大きくしたようないかついゴブリンがいた。
「ありゃ、ゴブリンリーダーかな?・・・でも、なんだかなぁ」
ゴブリンリーダーは、ハイゴブリンよりも上位のゴブリンだ。そんなゴブリンリーダーが、洞窟の奥からこっちを睨んでる。そう、睨んでるだけだ。
本当は今にも襲い掛かりたいんだろうけど、俺らがいる通路が狭すぎてこっちにこれないでいる。
「・・・帰るか」
「ワフ」
俺は哀れみを込めた目で、ゴブリンリーダーを見詰めた後にそっと踵を返す。
「GYAAAAAAAAAA!」
行かないで!とばかりに咆哮を上げるゴブリンリーダーが哀れでしょうがない。一本道しかないのに、通れないとか・・・お前一生ここから出れないやん。
「恨むならここまで太った自分を恨むんや・・・」
「・・・GYAAA」
俺とシロは、哀愁漂うゴブリンリーダーの咆哮を背に戻ることにした。
・・・
「ふー、やっと戻ってきたなー」
「ワフッ」
俺たちは、バランに戻ってきた。行きは一時間だったけど、三人乗せたシロに無理をさせるわけにもいかず、三時間かけて戻ってきた。おかげで、もうすっかり暗くなっちゃってる。
お、街の入り口に人がいるな・・・ギルマスにアイカちゃん。あとチキン野郎どもか。
「おい!ブレイカーが帰ってきたぞ!」
「本当か!ブレイバーは・・・!」
「ブレイバーもいるぞ!」
あっちも俺に気づいたのか、こっちに向かって駆け出してきてる。
「・・・騒がしいなぁ。こいつらを引き渡したら、飯食いに行こうぜシロ」
「ワフワフ!」
あー、腹減った。




