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平凡なヒロインですみません (改訂・休止中)  作者: アキヨシ
第二章(学園入学編)

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02.入学式 [改]

 小中学校の入学式って、まずクラス分けの確認して、教室に入ってから体育館や講堂に集められて式典、という段取りだったよね。

 じゃあ、こちらの学園はどうなのかな? クラス分けは?


 答え。クラス別けなんてありませんでした。

 新入生が二十人ですからね、分けようもありません。


 それにしても少ない!

 この国はあちらの日本と同じく少子高齢化社会なんです。

 とにかく、貴族の子供は生まれ難く育ち難い。それは魔力量に原因があるみたい。


 夫婦の相性には、家格や性格よりも重要な『魔力の相性』というものがあり、魔力の性質と量が合わないと、妊娠し辛く、たとえ妊娠してもかなりの難産になり、胎児の死産や母親の産褥死に繋がるという深刻な問題なんですと。

 一人の貴族女性が出産する人数は一人。多くて二人がやっとだって。


 魔力量の多い高位貴族はそれが顕著で、更に人口の男女比率が、女性は四割を切るほど少ないから、貴族の嫁取りは熾烈を極めるそうだ。

 だから結婚出来るのは嫡男くらいで、次男や三男は生涯独身か、継げる身分がない場合は平民になり、平民の女性と結婚するらしい。

 後は、魔力が多い平民女性をどこかの貴族家に養女にしてから妻に向かえる、という方法も大っぴらではないけれど珍しくなくなっているんだって。


 男女比率がおかしいのは貴族だけで、平民はおおむね半々で健全。

 それに魔力量も極僅かだから、『魔力の相性』を気にすることなく結婚相手を選べる。

 日本人の感覚が抜けてないわたしからすれば、平民の方がいいなぁと思ったりするわけです。


 こんな実情を何で知っているかと言うと、伯父さまから聞かされたんだよ。

 年齢一桁の幼女に聞かせる話じゃないと思うんだけどなー。あの伯父さまだからなー。


 現世のわたしは、貴族としての家格は底辺だけど、個人の魔力量は多い上に五属性持ちという希少さ。

 売れ残る事はないだろう、なーんて呑気な事を考えちゃいけないんである。

 バレると漏れなく王族や高位貴族に無理やり娶られるだろうって話で、常に目立たず程々にしときなさいと言われているのよね。

 誰からって? 両親や伯父さまやカイエン先生からですよ。


 だったらなんで高位貴族しか入学出来ないはずのオーディン学園なんだ! ファリス学園でひっそりこっそりモブに紛れる気満々だったのに!


 ――という気持ちで出来るだけひっそりと、皆様の後ろの方に佇んでる現在。


 講堂に案内され、学園長以下教師陣と、在校生の代表数人が迎えるなか入場。

 順番? そりゃ暗黙のルール、身分順に自然と並びましたよ。

 わたしは空気読んで一番最後です。ぶっちぎりのビリを守りました。

 先頭は我が国の第二王子、ウイリアム殿下です。まだちゃんとお顔を見てません。


 学園の理念は、「学生皆平等」を謳ってます。

 素晴らしいですね。身分の垣根を取っ払い、勉学に勤しむことが本当に実現すれば。


 わたしにだってわかります。

 本音と建て前。

 礼節を重んじましょう。

 上位の者へは速やかに道を開けましょう。

 決して下位の者から話しかけてはなりません。


 まぁそこは一般常識通り行動すればよい訳ですが……。

 王子と同級生かぁ……面倒くさそう。

 粗相がないよう気を使いまくるじゃないですか。


 王子以下、公爵・侯爵・伯爵のご令息・ご令嬢が居並ぶ中、一人ぽつんと底辺男爵令嬢。

 間違っているよ。

 違和感しかないよ。

 身の置き所がないよ。


 そういえば低学年にはいませんが、高学年には他国からの留学生が何人もいるそうです。

 最終学年には西の隣国の第三王子がいらっしゃるそうですよ。

 大変美しい方だそうです。わたしの隣の席の令嬢たちが噂してます。


 学園長が祝辞の最後に、今回初めて一学年から特待生を受け入れたと説明があったわ。

 今までは四年生か五年生で、成績優秀者がファリス学園から特待生として編入されるんだよね。

 何人かがわたしを振り返る。

 バレてる!? うう、視線がなんか痛いんですけど。


 学園長と入れ替わり、教頭から学年担任と各教科の教師が紹介され、最後に生徒代表としてシリウス・ハノーヴァ様が祝辞を述べた。

 なるほど、生徒会執行部会長ですか。わーそれっぽい。


 改めてまじまじと眺めてましたが、容姿端麗、隙のない立ち居振る舞い、祝辞の完璧さ、どれをとってもクールビューティ!

 令嬢たちがきゃっきゃしてます。ちょっとうるさい。

 前列の公爵令嬢らしき金髪の女の子がちらりと睨んできました。

 ううっ、わたしじゃないのに。


 ああ、それにしても一人別に席を設けられている王子が、上半身をゆらゆらさせて、まぁ落ち着きのないこと!

 いいのか、あんなんで。

 そしたら新入生代表挨拶で王子が舞台へ呼ばれたわ。

 緊張してたのかしら。

 これでようやくお顔が見れます。


 少し癖のあるはちみつ色の髪は襟足にかかる程度に整えられ、くっきりとしたエメラルドグリーンの瞳は強い光を放ち、生気に溢れてます。

 整っている顔立ちだけど、やんちゃっぽいイメージだなぁ。

 会場をぐるりと一瞥、いや睨んで口を開きました。

 いや、開いたまま固まってる?


 ……もしかしてだけど、セリフ忘れた?


「…………あー、本日はー、めでたい」


 なんだそりゃ。

 これからまだ言葉が続くのかと思ったら、もう戻ってきたよ!

 終わりかよ! 挨拶考えてなかったのかよ!


 最短記録かもしれない王子のお言葉に、みんなまごついて、ようやくまばらに拍手。

 忖度するのがツライ相手かもしれないわ。

 第二とはいえ王子だよね。大丈夫かな、この国の将来。

 遠くに見えるシリウス様がめっちゃ冷ややか。こっちまで寒気がする。


 とにもかくにも、微妙な式典が終わり、引率されて教室へ移動中。

 ちらちら、ひそひそ。

 一番後ろを歩くわたしに視線が突き刺さってくる。


 理由は分かってる。小学でもあったことだし。

 一年生で初の特待生だし! 眼鏡かけてるしね!

 目立たないように魔法が掛けられているのに、眼鏡を掛けていることで逆に目立つって、本末転倒現象です。


 認識阻害魔法のアイテムを眼鏡にしたのはわたしじゃありません!

 苦情はカイエン先生まで!


 なんていっても、カイエン先生だけじゃなく、父さまや伯父様、もしかすると神殿長様まで噛んでますよね?

 わたし自身は眼鏡に忌避感なんてなく、平然と掛けていましたけど。


 小学では平民でメガネっ子が少しいたけど、貴族ではいなかったな。

 目の不調は回復魔法で治療出来るから、治療師に治してもらうのが普通。

 治療費がめっちゃ高いらしいけど!

 つまり治療出来ないほどの病があるか、貧乏かのどちらかになるわけよ。


 確かにウチは貧乏男爵家だけど。

 でも、最近は魔導具やハーブ茶みたいにヒット商品があって、実入りがかなり良くなってるのよ。

 メイドさんなんて現在三人もいるんだから!

 なんて心で言い訳しててもなぁ。


「あなたのその眼鏡、どこかお悪いの?」


 シリウス様にきゃっきゃしていた令嬢の一人が、嫌そうに声をかけてきたわ。

 遠巻きにするのではなく、わざわざ訊いてくるなんて、モノ好きさんがいた!

 しかしね、眼鏡に忌避感があるのなら、シリウス様だって掛けてるんですよ?

 あっちは良くて、わたしはダメなの?

 

 不満はあるけど、それを言ってもしょうがない。

 眼鏡への言い訳は用意してますよ。


「これはですね、光過敏症に対する緩和策なんです」


 光を眩しく感じすぎるから眼鏡掛けてるんですよーという言い訳です。


 なのに言ってる途中で横から誰かの手が伸びてきて、ぱっとわたしから眼鏡を奪っていった。

 あまりにも突然で避けられなかったわ。

 呆気にとられるわたしと令嬢。


「なんだこれ、何も変わって見えないぞ」


 あちこち角度を変え、光に透かしたりして、乱暴に眼鏡を振り回す不埒者は、ウイリアム王子でした!


「返してください!」


 やーめーてー! 壊れるー!!


 焦って手を伸ばすも、敵はすばしっこかった。手がわずかに届かない。

 認識阻害で外見が微妙に違って見えるのが、初日にバレるなんて最悪だ。

 片手で目元を隠しながら王子を追うのが面白いのか、当の王子はにやにやしているし、誰も助けてくれない。


 こんの、悪戯小僧め!!!


 怒りで魔法が飛び出す寸前、王子の手首を捕えて眼鏡を奪取した救世主登場。


 有無を言わせず、くるりと手首をひねって後ろ手にし、王子の行動を封じてわたしに眼鏡を返してくれた人物は――


「早く掛けろ」


「はいっっ!」


 どこからともなくやって来たシリウス様でした!



2022.12.30/変更点→同級生の人数を変更。

なんで子供の人数が少ないのか、背景の説明を加筆しました。


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