表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡なヒロインですみません (改訂・休止中)  作者: アキヨシ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/115

11.謝罪ですか?① [改]

 あれからもカイエン先生のお説教が淡々と続いた翌日、今度は伯父さまがやってきた!

 予約なしのいきなり訪問ですよ。これは本来マナー違反です。


 通常は、事前に訪問したい日時を手紙で伺い、相手の了承を得てから訪問します。たいてい最短で三日後です。

 現代なら電話かメールかSNSか、すぐ連絡つくのに。それが三日後以降って、遅っ!

 平民の下町っコのように、「よっ、いるかい?」と庭からやってくるなんてことも、貴族間ではありえません。我が家のご近所ならこれに近いけど。


 我が家は貴族区画の端っこだから、ご近所は平民が多いのですよ。

 ただ裕福な方々ばかりで、我が家より良い暮らししてるんじゃないかなーとか、ついつい比較してみたりしなかったり。

 うん、まぁ、それは置いといて。


「ようこそおいでくださいました……あら?」


 いきなりやって来たお客さんにだって、にこやかに出迎える天使な母さま。

 ただ「あら?」が気になって、居間のドアから首を伸ばして扉を覗うと、伯父さまには連れがいた。

 背丈からの推測では子供。……まさかね。


 父さまは家にいるんだけど、魔導具作りをしていると工房に籠りきりで、外野の音に無反応なくらい集中してしまうから、執事さんが呼びに行っても多分気づかないかも。


「突然すまない」


 伯父さまがいきなり訪問って初めてじゃないかな。

 自身が忙しいから、何週間もスケジュールびっしり決まっているらしいのよね。だから思い立ってやってくるということがなかったのに。


 居間に案内されて、伯父さまと一緒にやってきたのはヒース君だった。

 バルド君がいないことに、ちょっと胸をなでおろす。

 でもさ、週末のお休みの日に、そんな機嫌悪そうな顔をわざわざ見せに来たのか。迷惑だわー。


「改めて謝罪をさせてほしい」


 立ったまま、伯父さまに頭を押さえつけられ、形ばかりの謝罪にはなっているけど、ヒース君は口を真一文字にして無言を貫く。

 次に伯父さまに会ったら優しくしようと決めていたので、わたしは伯父さまに笑顔を向けた。


「実害はなかったので大丈夫ですよ? どちらかというと、おばあ様から母さまへ謝罪がほしいです」


「それは……難しいだろうな。代わりに俺から謝罪する」


 苦労してますね、伯父さま。ハゲなきゃいいけど。

 下げた頭頂部はまだまだ髪の毛ふさふさ。大丈夫そうだね。


「お義兄さま、頭をお上げください。お義母さまのことは慣れていますし……いつか和解できればと思っていますので」


 和解? おばあ様に隕石が落ちて、脳天にクレーターでも出来ない限り無理そうですけどねー。

 母さまとしてはそう願うしかないってところなんでしょう。

 ちょっと困った顔で、淡く微笑む姿! 思わずぎゅっと抱きしめたよ、わたし。


 改めて席を勧め、全員ソファに収まった時、ようやく父さまが工房から出て居間に姿を現した。

 また伯父さまとの謝罪云々があって、その間も出されたお茶とクッキーに手を出さず、ただただ床を睨むヒース君。

 キミ、何しに来たの?


「ヒース! アリスに謝罪するんだろう」


 じれて、口を開かない息子をきつく(たしな)める伯父さま。するとようやく、ぼそぼそとヒース君がつぶやいた。


「……るい」


「なに?」


 声が小さくて聞き取れず、伯父さまが問い返すと、今度はキっとわたしを睨んで叫んだ。


「アリスはずるい! 優しくて仲のいい両親が揃ってて、父上にも大事にされて、その上うちの援助で小学にも通うんだろう!? なんでアリスだけこんなに恵まれているんだよ!!」


「ヒース!!」


 キミ、謝罪じゃなくてケンカ売りにきたのか!


 とんだ言いがかりに、伯父さまの額に青筋がくっきりと浮かぶ。

 謝罪させなければと、無理やり連れてきたんだろうなぁ。でもねぇ、全然本人納得してないよね。

 なぜ叱られるのか、どうしていけなかったのか、説明が必要ですよ、伯父さま。


 わたしは努めてきりりとした表情をまとうと、ヒース君をまっすぐ見つめる。

 テーブルを挟んだ向かい側で良かったよ。


「まぁ落ち着いて、ヒース君」


「……くん!?」


「そう、ヒース君。先ほどの発言は間違いだらけよ?」


 三つも年下の大人しそうに見えていた女の子から、いきなり上から目線で言われて、ヒース君はこれでもかと目を剥いた。


「まず、わたしの両親が優しくて仲がいいのは本当だけれど、それはキミとは関係ない話よね?」


「親戚だろう!?」


「叔父と叔母であって、ヒース君の両親じゃない。キミの両親が揃ってないのは、わたしのせいじゃない。違う?」


「なっ……」


 ヒース君は咄嗟に言葉も出ないようだ。たぶん、この辺が核心だと思うんだよね。

 でもわたしは次へと話を進めた。


「次に、伯父さまがわたしに目を掛けてくださるのは、大変ありがたく思ってます。我が家にいらっしゃって、わたしに色々なことを話してくださるのも楽しいですし。ただ、その間、ヒース君が寂しくしていたのなら、それはわたしのせいです。ごめんなさい」


「さ……寂しくなんか……」


 ヒース君が言い終えないうちに、わたしは言葉を重ねる。


「さらに、ヴィンスリ―家の援助で小学に通わせていただくのも、大変感謝しております。でも、ヒース君のお金じゃないよね。いずれ跡を継ぐとはいえ、まだ資産に関与していないキミに文句を言われる筋じゃないと思うのよ」


「……」


 ヒース君は絶句しているみたい。そして事の成り行きを見守る大人たちも絶句している。

 ふふふ、ちょっと言い過ぎてるかしら。でももう止まらない。


「伯父さまがわたしにこれだけ援助してくださるのは、先行投資をしているに過ぎないわ。いつかこの御恩を目に見える形でお返しする、つまり、ヴィンスリ―家の利益となるモノを提供するか、縁組をするかということだけれど、そのためにわたしは成績優秀者として小学を卒業して特待生となるべく勉強しているの。今の所、目指すは上級魔導師よ」


 大人たちが何とも言えない顔色でわたしを見ているけど、今は無視。ヒース君は口を半開きで固まっている。フリーズしたのかしら。

 動け、この! という念を込めて、テーブルを掌でぱしぱし叩く。


「そしてね、これらは今日の訪問目的とは全く別の話なのよ? 今日は何しに来たの? この前、わたしにパンをぶつけて暴言を吐いたことを謝罪するためでしょう!?」


 処理速度が低下していたヒース君の脳内活動が復活してきたらしく、はっとした顔をした。

 おーけー、おーけー、戻ってきたね。さぁ、ここからだよ。


「どうしてわたしにパンをぶつけたの? わたしはヒース君に何もしていないし、何も言ってないわ」


「……むかついた」


「は?」


「むかついたからだ!」


「どうして?」


 理由はなんとなく推測している。

 晩餐の席に、ヒース君のお母様がいなかった。離縁しているのか、別居しているのか、もしくは亡くなっているのか。

 対して、わたしは優しい母さまと仲良くして見せた。ヒース君の目の前で。それをやっかんだんじゃないだろうかと。

 でもそれを男の子が白状するかなー。無理かなー。


 案の定、ヒース君はむっつり口をつぐんでそっぽを向いた。



続いてしまうんですよー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ