☆②─5話 委員会で友達ゲットだぜ?
まぁそんなこともあったが俺にはまだやるべきことが残されている。そう、委員会活動の件だ。
今日はこの後の5限に、決まった委員会のところに向かって顔合わせをする時間がある。
ぼっちの俺にはここで友達を作るチャンスでもあるわけだ。
だから知り合いの白戸に来てもらって単騎突撃する羽目にならないようにしたかったのだが……それもなくなった。俺は本当に1人で頑張らないといけない。
俺だって友達は欲しい。不愛想なクラスメイトや小学生以外にも話し相手が欲しいんだ。
「では、ここに集まった人が図書委員会のメンバーですね。1年生の方から自己紹介をどうぞ」
きたぞ自己紹介。俺のクラスは1─1だからファーストバッターだ。
いや……俺で言うなら、キックオフ……か。
「は、はい。桜庭…楓っていいます。本とかはあんまり読まないんですけど……その、よ、よろしくお願いします。………………あ、終わりで」
よろしくお願いしますと言って自己紹介の終わりを告げたはずなのだがまだ皆は期待を込めた眼差しでこっちを見ていた。
俺の自己紹介があまりに少なすぎて何か気の利いた言葉を最後に言うんじゃないかと待っていたんだな。ごめんなさい……何もなくて。キックオフとかカッコつけてごめんなさい……。
高校生となり完全に根暗へと退化してしまった俺はそんな対策もしておらず。サッカーのことは言えないしで何も言えずに引っ込む形になってしまった。か、カッコわりぃ……。
「綾瀬秋乃です。趣味は読書で小さい頃から色んな本を読んできました。最近はミステリー小説をよく読んでいます。よろしくお願いします」
俺と一緒に図書委員会に入ることになった綾瀬秋乃さん。髪はおさげで身長は150cm後半くらいの女の子。優しそうな雰囲気が滲み出ている文学少女そうな女の子だ。
身長は関係ないが俺の中では絵にかいたような図書委員って感じ。しかも読書好きときている。
こういう人がいたりすると逆に俺みたいな奴は楽したいからここに入ってきたと思われていそうだよ。当たってるのが悲しいところだ。
そして自己紹介は3年生のところまで回っていき、後は自由時間となった。
帰りたい人は帰って良しだが……やはり顔合わせ目的で集まっているということもあって皆帰らずに周りの人と会話してる。
(俺も昔はあんな風に話せていたんだろうか。最近は小学生としかまともに会話してないから同年代と何を話せばいいのか……)
俺がポツンと1人で白戸みたいに机で肘をついていると隣に誰かが座ってくる。
「あ……桜庭くん、だったよね?」
「そう、だけど。えと、綾瀬だったか?」
なんと座って来たのは同じクラスの綾瀬秋乃さん。
話すとしたらこの子だと想定はしていたがまさか向こうから話しかけてくれるとは思っていなかった。うっ、隣に座ってきたせいか良い匂いがする……。
「うん。桜庭くんってなんで図書委員になったの?」
うぐっ!! そ、それはまたなんとも急所をついた質問を。きゅうしょにあたった!
「いや、あの、うーんと、その~…………ごめん。ちょっと楽かなって思っちゃって、それで」
俺はどうにかして誤魔化そうと思っていた。
けれど、それじゃ友達なんてできっこない。嘘ついてまで良い格好するなんてそれこそダサすぎる。もしかしたらこの一発で嫌われるかもしれないけど、正直に白状した。
「あはは……やっぱりそうだったんだね」
「え?」
おや……笑っている? ちょ、嘲笑とかじゃないよね?
「桜庭くん、委員会決まった時に後ろの白戸さんを見てたよね? あれって白戸さんと同じ委員会に入ろうとしてたんでしょ?」
「ああ、そうなんだ。今となっては別にどうでもよかったんだけど最初は、な」
「私がそこに入っちゃってごめんね」
「いやいや! 全然良いよ。むしろ白戸と比べたら何万倍も良い!」
これは嘘じゃない。
話し相手がいないからという理由で白戸を選抜したんだが(選抜どころか白戸以外いないけど)、今この時のように話しかけてくれる人がいるのなら白戸じゃない方が良いに決まってる。だってあの人、俺のこと人間扱いしてくれないんだもん。
「すごいよね。白戸さんって誰ともほとんど話そうとしないのに、桜庭くんは話せるんだから」
「『ほとんど話そうとしない』って言ってもまだ高校生活始まったばかりだろ? もう5月だけど。それでも暗い奴は好んで話そうとはしないんじゃないか?」
と、高校生活中にまだ小学生としかまともな会話をしてない男が言ってみた。なんとも業が深い言葉だよこれ……。まさに人のことよく言えたなってやつだ。
「ううん。白戸さんは中等部から上がってきた子だから。それで中等部の頃もあんな感じだったの。もっと言うと初等部の頃から」
「そ、そうだったのか。……うん? すまん、間違いなら悪いが……もしかして綾瀬は白戸と仲良くなってみたいのか?」
俺がそれを聞くとピクッと身体が動いた。当たり、か。
白戸と……あと口ぶりからして綾瀬も、初等部からここまで上がってきた奴だったことは初めて知ったが、綾瀬は今まで白戸のことを気にかけてきたみたいだ。普通暗い奴なんて数年経てば放っておこうってなると思うのに。
でも、ずっと気にかけてこないと「中等部の頃は~」なんて言葉は出ない。大抵の奴は「知らない」って答えるだろうから。
「うん。初等部の頃にね。私、ハンカチを失くしたの」
「ハンカチ?」
唐突に綾瀬は昔の話を出してくる。これは……?
「そう。お母さんに貰ったハンカチでとても大切な物だったの。周りの人にそれを伝えて探してくださいって言っても誰も探してくれなくて。それが悲しくて。失くしたのは自分なのにそれって勝手で迷惑だよね」
「別にそんなことはないと思うが……」
いくら小学生とはいえ困っている人を見捨てるなんて普通しないよな? これは俺が無垢な小学生しか知らないからだろうか? それとも男子がそんな血も涙もない生き物なのか? 同じ男として恥ずかしいぞ。
「それで放課後泣きながら1人で探してたんだけど……その時に白戸さんが見つけてくれてたの」
「マジか。あの白戸が?」
白戸にもそんな無垢で健気な時期があったんだなぁ。信じられん。…………それ本当に白戸だった? 人違いじゃない?
「制服も泥だらけになっててね。必死に探してくれてたんだなってわかったの。それで渡してくれた時にこう言ったの。『お母さんから貰った物のどこが大切なのかわからないけど、もう失くさないようにね』って」
前言撤回。全然健気じゃねえ! ロリの頃からメッチャ捻くれてますやん白戸さん!
ただ……白戸は『親がいない』って言ってたよな。その言葉もすごく引っかかる。
さっきの昼休み時の宇津木のプリントみたいに父さんと白戸によると、子供はわざわざやらなくてもいいことや言わなくてもいいことの中にメッセージを発するというが……それがそうなのかもしれないな。
「その時の言葉がなんだったのか知りたいっていうのと……単純に友達になりたかった。けど、白戸さんはその頃にはすでに周りに壁を作ってて話しかけられなかったの。それで桜庭くんと話してた時はすごくビックリした」
「そうか……よし、白戸に紹介しようか? 綾瀬のこと」
「え? いいの?」
「ああ。そんな話を聞いてはい、そうですかでスルーはできない。俺とも仲良くしてくれれば嬉しいが……あいつにも友達はいた方がいいだろうしな。ただ……あいつは難しい奴だから紹介すると言ってもいつになるかはわからんが。多分、かなり後になるかもしれん」
「ありがとう……! 桜庭くんって……優しいね」
綾瀬は明るく微笑んでくれる。
なんだか正しいことをして高評価を得られるっていうのはすごく嬉しいことだな。父さんなんか汚いことをやってナンボという考え方でその姿をずっと見てきているから感覚がマヒしていたよ。純粋っていいな。ほんとに。
「ところで綾瀬。ポケモン知ってるか?」
「ポケモン? ゴメン、あんまり詳しくない……」
「そうか。それならいいんだ。変なこと聞いてスマン」
白戸のことを聞けたり、綾瀬と自然に話すこともできたが、ポケモン作戦は大失敗!




