「ミーアキャットのパン屋さん」2
バゲットはいそいでお店に走ります。
「たいへんだ、父さん 母さん、おじさん おばさん! ロゼッタがいなくなった! のこりの兄弟はみんなさがしに出てる!」
お父さんお母さんたちは 4人でそうだんします。
「じゃあ ロゼッタは ぼくらがさがしに行く。お母さんたちはお店をたのむ」
「わかったわ、みんな気をつけて」
グラハムとメイズも いっしょにサバンナに向かいました。日は少しかたむいています。
子どもたちはみんな大ごえで さけびます。
「ロゼッターー!」「ロゼッターー! どこーー!?」
「あまり大きい声を出すな、てきに気づかれる」
あたりにはこわいコブラや ハブにジャッカル。空にはタカやワシがとんでいます。そこへグラハムとメイズ、バゲットがやって来ました。
「三、四人ずつかたまって手分けしてさがそう。あまり声を出すなよ」
ミーアキャットたちは それぞれロゼッタをさがしに行きました。
一方そのころ ロゼッタは、サバンナの岩場にいました。岩のかげをあちこちさがしています。
シャーーーー
あっ、岩のかげから サソリが出てきました。
「見てろ、お兄ちゃんたち。ぼく一人だってサソリをやっつけられるんだ」
そうです、ロゼッタはサソリとたたかうために 一人でサバンナに出たのでした。
今出てきたサソリは バゲットが戦ったものより 大きくてきょうぼうそうです。
シャーーーー シャーーーー
「えいっ、やあっ」
ロゼッタはパンチしますが、うまく当たりません。
シャーーーー!
サソリはハサミと どくばりのついたしっぽを大きく広げて ロゼッタをいかくします。
「ううっ」
たじろいだロゼッタはあとずさりします。三歩、四歩とうしろに下がりました。
こつん
「あっ!」
ロゼッタは石につまづいて、あおむけにころんでしまいました。
「わっ、うわっ」
シャーーーー!!
ばしっ、ばしっ ばしっ
「だいじょうぶか、ロゼッタ!」
二人のお父さんがたすけにきました。あっというまに サソリをたいじします。
「どうして一人でサバンナに出たんだ。あぶないだろう!」
グラハムがしかると ロゼッタはなきだします。
「うええん、ごめんなさい。ぼくもサソリを一人でやっつけたかったんだ」
「そうか。でもおまえ一人で たおすにはまだ早い。
それじゃあ、こんどのお休みのとき、お父さんが手助けしてやる。
ちょっとずつだんかいをふんで たおしかたをおしえよう」
「ほんと? やったあ!」
ロゼッタは ばんざいしてよろこびます。
「じゃあお母さんたちがしんぱいする。早くかえろう」
――――
グラハムとメイズ、それに子どもたちは 自分たちのパン屋さんにかえってきました。すると――――
「すごいぎょうれつだよ、お父さん!」
「ほんとうだ、すごいならんでるよ!」
いつもならお父さん二人がパンをやいて お母さん二人がおかいけいをするのですが、今日はライがパンをやいて リファリーヌがおかいけいをしています。
今日はいつもの ばい以上の 手間ひまが かかっていました。
お父さん二人は エプロンをつけて しごとばのパンこうぼうに入りました。
焼くじかんが みじかくてすむように パン生地を小さく丸めて てっぱんにならべていきます。
あっというまに ミニバターロールと ミニクロワッサンがたくさんやきあがりました。
ぷーーん
お店の外にもこうばしい いいかおりが広がります。お客さんたちはパンのかおりを むねいっぱいにすいこんで まちきれないようすです。
「「よし、今日はとくべつだ、お店のパンは ぜんぴん はんがくにしよう」」
お父さん二人がせんげんすると お客さんたちは おおよろこび。お店のまえには さらにぎょうれつがふえました。
「ぼくらも おてつだいしよう」
子どもたちもみんな おそろいの小麦色のエプロンをつけました。
お店の中にパンをならべたり、おきゃくさんのバッグに パンをつめたり、ぎょうれつのさいこうびに たてかんばんをもってあんないしたり。
かぞくみんなで パンを売るのにいっしょうけんめいです。
「ありがとうございました、またおこしください」
ようやく さいごのお客さんが パンを買ってかえりました。
ミーアキャットたちも おきゃくさんも とてもうれしそうです。
ミーアキャットたちは エプロンをぬいで おもてに出てせいれつします。
夕やけでお日さまがまっ赤です。サバンナもみんなの体も オレンジ色にそまっています。
ふわーーーーあ ふわーーーーあ ふわーーーーあ
一人があくびをすると、つられてみんなもあくびをしました。
すーー、すーー、こてん。
一番小さなパニーニが よこになりました。
今日もサバンナの一日、そしてミーアキャットのパン屋さんの 一日がおわろうとしています。




