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妹に婚約者も家名も奪われましたが、私は王妃の遺言状を握っています 〜虐げられた公爵令嬢を捨てた王宮が、三日後に血塗れの相続争いで崩壊しました〜  作者: 御神常陸介寛浩(常陸之介寛浩)


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第10話 姉の机に座った妹

 リリアナは、姉の机に座っていた。


 朝の光が東翼執務室の窓から差し込み、磨かれた机の上を白く照らしている。


 昨日までは、この光の中にエレノアがいた。


 黒や濃紺の落ち着いたドレスをまとい、背筋を伸ばし、山のような書類に目を通していた。時には羽根ペンを走らせ、時には女官へ短く指示を出し、時には王太子ユリウスの演説草稿を黙々と修正していた。


 その姿を、リリアナは何度も見たことがある。


 昔は、それを綺麗だと思った。


 姉は何でもできる。


 姉は誰からも頼られる。


 姉は王妃様に信頼され、王太子殿下の隣に立ち、父にも母にも「優秀だ」と言われる。


 だから、自分もいつかああなりたいと思った。


 けれど、いつからか違う気持ちになった。


 なぜ、お姉様ばかり。


 なぜ、私には誰も任せてくれないの。


 なぜ、殿下はお姉様の隣では笑わないのに、それでもお姉様が選ばれたままなの。


 その答えを、リリアナはずっと探していた。


 そして、昨日まではこう思っていた。


 お姉様が譲ってくれないから。


 お姉様が何でも一人で抱え込むから。


 お姉様が、私を子供扱いするから。


 でも今、リリアナは姉の椅子に座っている。


 姉の机も、姉の部屋も、姉が使っていた女官も、姉が持っていた王太子妃候補という立場も、すべて自分の前にある。


 なのに、心はちっとも晴れなかった。


 むしろ、机の上に積み上げられた書類が、彼女を責めるように見えた。


「……どうして、こんなにあるの」


 小さく呟いても、返事はない。


 机の上には、昨日マルタが整理し直した資料が分類ごとに積まれていた。


 茶会関連報告。


 セルベリア大使館関連。


 王妃基金遺産目録。


 地方貴族陳情。


 王太子演説草稿。


 王妃教育記録。


 女官配置表。


 儀礼確認書。


 それぞれの束に、細い紙片が挟まっている。


 エレノアの字だった。


 整っていて、迷いがなく、どこまでも読みやすい。


 けれど、リリアナには、その読みやすさがかえって腹立たしかった。


 まるで、こう言われている気がする。


 ここまで整理してあるのに、あなたには分からないのね。


 リリアナは唇を噛んだ。


「違うわ」


 誰に言うでもなく、そう呟く。


 分からないのは、自分が愚かだからではない。


 お姉様が、難しくしているからだ。


 自分にしか分からないように。


 自分だけが必要とされるように。


 そう思えば、少しだけ息がしやすくなった。


 リリアナは、一番上にあった書類を開いた。


 王妃基金支出確認一覧。


 題名だけで、もう胸が重くなる。


 その下には細かな数字と日付が並んでいた。


 王都南区孤児院、屋根修繕費。

 申請日。

 差し戻し日。

 再申請日。

 確認者。

 不足書類。

 担保品登録。

 関連宝飾品、月涙石の首飾り。


 月涙石。


 その文字を見た瞬間、リリアナは指を止めた。


 昨夜、王妃の遺品目録の不一致が報告された時、ユリウスの顔がわずかに変わったのを覚えている。


 月涙石の首飾り。


 それに似た首飾りを、リリアナは二年前の社交界デビューで身につけた。


 父が贈ってくれた。


 母が「とても似合うわ」と微笑んでくれた。


 ユリウスも、その夜、初めて自分に長く視線を向けてくれた。


『リリアナ嬢は、春の月のようだな』


 その言葉を、リリアナはずっと宝物のように覚えていた。


 けれど、昨日からその記憶に小さな棘が刺さっている。


 まさか、と思う。


 父が王妃様の宝飾品を、自分に与えるはずがない。


 そんなこと、あるはずがない。


 だが、書類の中の「月涙石」という文字は消えない。


 リリアナは乱暴にその紙を閉じた。


 次に手に取ったのは、王太子演説草稿だった。


 表紙には、こう書かれている。


 王太子殿下演説草稿・修正履歴

 外交式典用

 作成者、王太子殿下側近ローレン

 修正確認、エレノア・ヴァレンシュタイン


 中を開く。


 赤いインクでいくつも修正が入っていた。


 この表現はセルベリア側に対し高圧的。

 王妃陛下の喪中につき、華美な比喩を避けること。

 国境孤児保護協定については「施し」ではなく「共同保護」とする。

 薬草交易は恩恵ではなく相互利益として記す。

 王太子殿下の私的感情を前面に出しすぎないこと。


 リリアナは、眉をひそめた。


 姉の字が、そこにもある。


 まるで王太子殿下の言葉まで、姉が正していたようだった。


 それが嫌だった。


 ユリウス殿下は、優しい方だ。


 少し不器用で、時々言葉が強くなるけれど、本当は温かい。


 リリアナにはそう見えている。


 けれど、この修正履歴を読むと、殿下が何度も不用意な言葉を使い、それを姉が直していたことが分かってしまう。


 リリアナは、それを認めたくなかった。


「お姉様は、殿下のことまで下に見ていたのね」


 声に出すと、少しだけ楽になった。


 きっとそうだ。


 姉は自分だけでなく、殿下のことも子供扱いしていた。


 だから殿下は息苦しかったのだ。


 だから自分を選んだのだ。


 そう思えば、昨日の茶会の失敗も、今朝の重い書類も、全部お姉様の影のせいにできる。


 リリアナは次の束へ手を伸ばした。


 貴族夫人派閥図。


 それは、ほとんど絵図のようなものだった。


 侯爵家、伯爵家、子爵家、男爵家。


 婚姻関係。


 過去の対立。


 寄付先。


 王妃基金への関与。


 教会派か、軍務派か、財務局寄りか。


 線が何本も引かれている。


 赤線、青線、黒線、点線。


 その横に、エレノアの細かな注釈。


 ハウゼン侯爵夫人、ミルド伯爵夫人と同席不可。

 ローゼン侯爵夫人、王妃基金への発言力大。慎重対応。

 ロウ伯爵未亡人、孤児院支援。財務局に不信。

 財務官夫人、宝飾品の話題に注意。

 セルベリア大使夫人、亡き王妃陛下と親交深い。席次最重要。


 昨日の茶会で起きたことが、そのまま書かれていた。


 すべて、事前に。


 リリアナはその紙を見つめた。


 胸の中で、何かがざわつく。


 お姉様は知っていた。


 誰をどこに座らせてはいけないか。


 どの話題を避けるべきか。


 どの夫人が何に傷つくか。


 知っていた。


 そして、それを引継書に書いていた。


 それなのに、自分は読まなかった。


 読めなかった。


 いや、違う。


 リリアナは頭を振った。


 あんなにたくさん渡されたら、誰だって読めない。


 昨日の朝から、急に全部を理解しろなんて無理だ。


 お姉様は、きっとそれを分かっていた。


 分かっていて、渡した。


 私が恥をかくように。


 私が失敗するように。


 そうでなければ、こんなに難しいことを急に渡すはずがない。


 リリアナは、ぐっと拳を握った。


「ひどいわ、お姉様」


 そう呟いた時、扉が叩かれた。


「リリアナ様。入ってもよろしいかしら」


 母セレスティアの声だった。


 リリアナは慌てて書類を閉じる。


「お母様。どうぞ」


 扉が開き、セレスティアが入ってきた。


 柔らかな灰色のドレスをまとい、心配そうな微笑みを浮かべている。その表情を見た瞬間、リリアナの胸の中に溜まっていたものが一気に溢れそうになった。


「お母様……」


「ああ、リリアナ」


 セレスティアはすぐに歩み寄り、娘の肩を抱いた。


「顔色が悪いわ。昨日から大変だったものね」


「私、頑張ろうとしたの」


「分かっているわ」


「皆様に喜んでいただきたかっただけなのに、どうしてあんなふうに言われなければならなかったの? 私、悪いことをしたつもりなんてないのに」


「ええ。あなたは悪くないわ」


 その言葉に、リリアナの目に涙が浮かぶ。


 欲しかった言葉だった。


 昨日からずっと、誰かに言ってほしかった。


 あなたは悪くない。


 あなたは優しいだけ。


 あなたは頑張った。


 マルタも、夫人たちも、書類も、皆リリアナを責める。


 けれど母だけは、いつも自分を守ってくれる。


「お姉様の机、こんなに書類ばかりなの」


 リリアナは、子供のように訴えた。


「難しい言葉ばかり。数字ばかり。誰と誰を隣にしてはいけないとか、どの商会がどこと関係しているとか、そんなことばかり。私、王太子妃になるなら、もっと皆様に笑顔を届けるのだと思っていたわ」


 セレスティアは困ったように微笑んだ。


「エレノアは昔から、物事を難しく考えすぎる子だったのよ」


「やっぱり?」


「ええ。あなたは優しい子だから、まず人の気持ちを見るでしょう? エレノアは手続きや規則を先に見てしまうの」


「だから皆、苦しくなるのね」


「そうかもしれないわ」


 母の声は優しかった。


 けれど、その優しさは、事実を確かめるものではなかった。


 リリアナの痛む場所に、柔らかい布をかけるだけのものだった。


 それでも、今のリリアナにはありがたかった。


「でも、お母様。王妃様の遺品のこと……」


 リリアナは声を潜めた。


「本当に、大変なことなのかしら」


 セレスティアの表情が、ほんの一瞬だけ強張った。


 リリアナはそれに気づかなかった。


「マルタが言うの。宝飾品が足りないとか、基金の担保だとか、薬草園の印章がないとか……財務官様もお困りだったわ」


「女官長は、王妃様に長く仕えた方だから、少し神経質になっているのよ」


「でも、書面にまとめることになったの」


「あなたが許可したの?」


 母の声が少しだけ高くなった。


 リリアナは肩をすくめた。


「だって、マルタがそうした方がいいと言うから。私、何を選べばいいか分からなくて」


「ああ、リリアナ」


 セレスティアは娘の頬を撫でた。


「一人でそんな難しいことを決めなくてよかったのに」


「でも、皆が私を見ていたの。王太子妃候補として、って」


「あなたはまだ慣れていないのよ」


「でも、お姉様はやっていたのでしょう?」


 その言葉が出た瞬間、セレスティアは少しだけ黙った。


 リリアナは母を見上げる。


 母はすぐに微笑みを作り直した。


「エレノアは、そういうことが好きだったのよ」


「好き?」


「ええ。書類や規則や、難しいこと。あなたとは違うわ」


 リリアナは、少し安心した。


 好きでやっていた。


 そうだ。


 お姉様はきっと、こういう難しいことが好きだったのだ。


 だから苦ではなかった。


 だから、私が同じようにできないからといって、責められる必要はない。


 そう思えば、姉への後ろめたさが少し薄くなる。


「お母様」


「何?」


「私、殿下のお役に立てるかしら」


「もちろんよ」


「でも、昨日も今日も、失敗ばかり」


「失敗ではないわ。周りがあなたに慣れていないだけ」


「私に?」


「そう。王宮はずっとエレノアのやり方で動いていたでしょう? だから、あなたの優しさや柔らかさに、まだ皆が戸惑っているの」


 リリアナは、その言葉を胸の中で繰り返した。


 私が悪いのではない。


 皆が私に慣れていないだけ。


 王宮が、お姉様の冷たいやり方に慣れすぎていただけ。


 それなら、時間が経てば変わる。


 自分が笑顔でいれば、皆きっと分かってくれる。


 殿下も、自分を選んだことを誇りに思ってくれる。


 リリアナは涙を拭いた。


「私、頑張るわ」


「ええ。その意気よ」


「でも、この書類は……」


 机の上を見て、また気持ちが沈む。


 セレスティアは優しく言った。


「難しいことは、誰かに任せればいいの」


「誰かに?」


「ええ。財務のことは財務官に。外交のことは外務局に。女官のことは女官長に。あなたは王太子妃として、皆の心をまとめればいいのよ」


「皆の心……」


「あなたには、それができるわ」


 母の言葉は甘かった。


 けれど、その甘さは危うい。


 リリアナは気づかない。


 責任を人に任せることと、役割を分担することは違う。


 判断を放棄することと、信頼して任せることも違う。


 それを知らないまま、彼女は母の言葉に頷いた。


「そうね。私、皆の心をまとめるわ」


「それでいいの」


 セレスティアは、ほっとしたように微笑んだ。


 その時、扉が再び叩かれた。


 今度は、遠慮がちではあるが、先ほどより硬い音だった。


「リリアナ様。失礼いたします」


 入ってきたのは、女官長マルタだった。


 彼女はいつもの黒い女官服をまとい、背筋を伸ばしている。その顔には疲労が見えたが、目は揺れていない。


 リリアナの胸が、少しだけ縮んだ。


 マルタは、自分を子供扱いしない。


 だから苦手だった。


 優しく叱る母とも、甘やかしてくれるユリウスとも違う。


 マルタは、リリアナを「王太子妃候補」として扱う。


 それが、今は怖い。


「何かしら、マルタ」


 セレスティアが先に口を開いた。


 その声には、わずかな牽制がある。


 マルタは深く礼をした。


「王宮評議会より、リリアナ様へご出席の要請がございます」


「評議会?」


 リリアナは目を瞬かせた。


「はい。本日午後、王妃基金および遺産目録不一致について説明を求められております」


 部屋の空気が止まった。


 リリアナは、最初、言葉の意味が分からなかった。


「私に?」


「はい」


「どうして?」


「リリアナ様は、現王太子妃候補として、昨日の遺品確認に立ち会われました。また、書面化を了承された責任者として記録されております」


 責任者。


 その言葉が、机の上に落ちた石のように響いた。


 リリアナの顔から血の気が引いていく。


「責任者って……私は、ただマルタがそう言うから」


「最終的にご判断なさったのは、リリアナ様です」


「でも、私は何も分からないわ」


「ですから、評議会でご存じの範囲をお話しください」


「そんな……」


 リリアナは母を見た。


 セレスティアも戸惑っている。


「マルタ。リリアナはまだ慣れていないのよ。評議会など、あの子には早すぎます」


「王太子妃候補として遺品確認に立ち会われた以上、出席を避けることは難しいかと」


「でも、専門的なことは財務官に任せればよいでしょう」


「財務官自身が監査対象に含まれる可能性がございます」


 セレスティアの表情が、また少し硬くなった。


「監査対象?」


「はい」


「財務官様が?」


「王妃基金関連台帳の提出命令が出ております」


「誰がそんなことを」


 マルタは一拍置いた。


「王弟カイン殿下でございます」


 その名を聞いた瞬間、セレスティアは黙った。


 カイン。


 冷徹宰相。


 泣き落としも、社交辞令も、家名の圧力も通じない男。


 リリアナもその名は知っている。


 王宮で見かけたことは数えるほどしかないが、一度視線が合った時、まるで心の奥まで見透かされたようで怖かった。


 その人が動いている。


 昨日まで、リリアナは王太子妃候補になったことで、自分が華やかな場所の中心に立つのだと思っていた。


 しかし今、自分の前に開かれているのは、茶会でも舞踏会でもない。


 評議会。


 王妃基金。


 遺産目録。


 監査。


 説明責任。


 知らない言葉ではない。


 だが、自分の身に降りかかるものだとは思っていなかった。


「私……行かなければならないの?」


 リリアナの声は震えていた。


 マルタは静かに答えた。


「はい」


「泣いたら、駄目?」


 その言葉は、ほとんど無意識に出た。


 セレスティアが眉を寄せる。


 マルタは、少しだけ目を伏せた。


 そして、はっきりと言った。


「泣かれても構いません。ですが、質問にはお答えいただくことになります」


 リリアナは、何も言えなくなった。


 泣いても逃げられない。


 その事実が、初めて現実の重さで彼女にのしかかった。


 今まで、泣けば誰かが来てくれた。


 母が抱きしめてくれた。


 父が相手を叱ってくれた。


 ユリウスが庇ってくれた。


 姉が黙って譲ってくれた。


 でも評議会では、泣いても書類は消えない。


 泣いても月涙石の首飾りは戻らない。


 泣いても王妃基金の数字は合わない。


 泣いてもカイン殿下は、きっと質問をやめない。


「お姉様は……」


 リリアナは、かすれた声で呟いた。


「お姉様は、こういう場所にいつも出ていたの?」


 マルタは答えた。


「はい」


 短い返事だった。


 その短さが、かえって重かった。


「一人で?」


「多くの場合は」


「……殿下は?」


「王太子殿下の補佐として出席されることもございましたが、資料確認や事前説明は、ほとんどエレノア様が担っておられました」


 リリアナは机の上の書類を見た。


 姉の字。


 姉の分類。


 姉の注釈。


 どれも、急に違うものに見えた。


 意地悪のために作られた迷路ではなく、誰かが迷わないために置いた道標だったのではないか。


 一瞬、そんな考えが浮かんだ。


 けれど、リリアナはそれをすぐに追い払った。


 認めたくない。


 認めてしまえば、自分が奪ったものの重さを見なければならなくなる。


「……分かったわ」


 リリアナは、震える声で言った。


「出席します」


 マルタは深く頭を下げる。


「では、評議会前に最低限確認すべき資料をお持ちします」


「まだあるの?」


「ございます」


 リリアナは泣きそうになった。


 だが、ここで泣いてもマルタは去らない。


 それを、もう理解し始めていた。


 セレスティアが娘の肩に手を置く。


「リリアナ、無理しなくていいのよ」


「でも、行かなければならないのでしょう?」


 リリアナは母を見上げた。


 その目には、昨日までとは違う不安があった。


 ただ慰めを求めるだけの不安ではない。


 自分が逃げられない場所に立っていると知った者の、不安だった。


「お母様」


「何?」


「私……王太子妃候補になったのよね」


「ええ」


「なら、どうしてこんなに怖いの?」


 セレスティアは答えられなかった。


 マルタも何も言わなかった。


 ただ、机の上にある姉の書類だけが、静かにそこにあった。


 午後の評議会まで、あと三時間。


 リリアナは初めて、姉の椅子に座るということが、ただ美しい場所に座ることではないのだと知り始めていた。


 だが、まだ知らない。


 その椅子の下に、王妃の遺言状というさらに大きな亀裂が走っていることを。


 そして翌朝、姉が王太子の隣ではなく、冷徹宰相カインの隣に立って王宮へ戻ってくることを。

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