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それからしばらくの間、かげろうはその場でじっとしていた。(金縛りにあったみたいに動けなくなった)
……やがて、とんとん、とかげろうの部屋のドアを叩く音が聞こえた。
その音を聞いて、はっとしてようやく動けるようになったかげろうは久しぶりにその視線を窓の外から、自分の部屋の中に戻した。
「……かげろうくん。もう起きてる?」
そんな声が聞こえた。
それはかげろうのクラスメートであり、友達である幽霊の一人、三日月よぞらの声だった。
かげろうは自分の部屋の中をドアのところまで移動してドアを開けた。
すると、そこにはよぞらがいた。
「おはよう。よぞらくん」
にっこりと笑ってかげろうは言った。
「うん。おはよう。かげろうくん」
かげろうと同じようににっこりと笑って、よぞらは言った。
よぞらは幽霊の正装ともいえる『フードのついた黄色いコート』(かげろうが裏ポケットにネジを隠したコートだ)をその小さな体に着ていた。それだけではなくて、その背中には小さなリュックサックを背負っていて、幽霊の学校に行くための準備をすでに整えた服装をしていた。
でも、まだ幽霊の学校に登校するには少し早い時間だった。
「こんな時間に学校に行く準備を終えて、どうかしたの? よぞらくん」
なので、かげろうはよぞらにそう言った。
「うん。ちょっと中で話をしても、……いいかな?」
体をもじもじさせながら、よぞらは言った。
「もちろん、いいよ」
かげろうはそう言ってよぞらを自分の部屋の中に案内した。
「お邪魔します」
そう言って、よぞらはかげろうの部屋の中にお邪魔をした。