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二人はかげろうの部屋にある背もたれのある椅子にそれぞれ座った。
よぞらは、いつものように、『よぞら愛用の一眼レフのカメラ』をその首から紐に通して下げていた。
よぞらはそのカメラを、いつも、まるで宝物のようにずっと持ち歩いていた。
よぞらはそのカメラで写真をとること自体はあまりしないのだけど、カメラ自体の造形が好きなんだそうだ。
でも、もちろん、ときどきはそのカメラで写真を撮ったり、あるいはかげろうがよぞらに頼んで幾つかの写真を撮ってもらったりした。よぞらのカメラは(おそらくは今のかげろうのように)壊れているわけではなくて、年季が入っているけど、ちゃんと使える道具だった。
そのカメラは街の外にあるごみ捨て場で、かげろうとよぞらが二人で一緒に遊びに行ったときに、そこからよぞらがゴミの山から掘り出して、拾ってきたものだった。
それをよぞらが自分で修理して直したのだ。
よぞらはそういった機械いじりが大好きで、そのおかげで、(もともと才能があったのかもしれないけれど)機械関係の技術や知識に長けていた。
よぞらは数学や科学のテストもよくできて、そのおかげで成績があまり良くないかげろうとは違って、ひまわり先生からよく頭を撫でて褒めてもらったりしていた。
ひまわり先生はそのことでよぞらとかげろうのことを贔屓したりはしないのだけど、(ひまわり先生はとても優しい先生だった)かげろうはそのことをちょっとだけ気にしていた。
でも、いつかのテストで満点をとったときの『ご褒美』として、よぞらに『一眼レフのカメラ』を持ち歩く許可をひまわり先生は与えていた。
『ホロウたちの学校のご褒美とお仕置きについて』
テストで満点をとったりすると、ご褒美として特例を許してもらえる。あるいは、欲しいものを与えてもらえる。でも逆にテストで悪い点を取ると、『お仕置き』として拷問を受ける。電気ショックや水攻め。むち打ちのような体叩き、狭い部屋の中に長い時間閉じ込める、など。
なので、本来、規定の持ち物以外を持ち歩いてはいけないかげろうたち幽霊たちの中で、よぞらがこうして自分のカメラをいつも持ち歩くことができるのも、いわゆる特例(ご褒美)の一つであり、よぞらの成績が良いから、ひまわり先生から特別に、よぞらにだけ許されていることだった。(ひまわり先生は普段から成績がよく、物分りがよく、よく自分の言うことを聞くよぞらのことを気にいっていた)
「あ、そうだ。よぞらくん。ちょっといいかな?」
かげろうは言った。
「なに?」首をかしげてよぞらが言う。
「写真。撮ってほしいものがあるんだ」にっこりと笑ってかげろうは言う。
我ながら、いいアイデアを思いついたと思う。
かげろうは、あの奇跡のような光を放つ星の写真を、よぞらに撮ってもらおうと思ったのだ。(その写真を自分の宝物にしようとかげろうは思った)




