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「うん。わかった。いいよ」

 いつものようににっこりと笑って(嘘のようなかげろうの言葉を疑うこともせずに)よぞらは言った。

「なにか話をするためにきたみたいなのに、ごめんね。よぞらくん」かげろうは言う。

「ううん。大丈夫。僕の話はあとでいいよ」よぞらは言う。

 それから「こっち、こっち」とよぞらの黄色いコートを引っ張って、自分の部屋の窓際までかげろうはよぞらと一緒に移動をした。

 それから「ほら、あの光だよ。あそこに奇跡の星の光があるんだ」とかげろうは真っ暗な空を指差してよぞらに言った。

 でも、「星? 星の光なんてどこにもないよ?」と一眼レフのカメラを両手で持っている、よぞらは首をひねりながら言った。

「え? あれ?」

 かげろうは空を確認する。

 すると確かによぞらの言う通りに、そこにはもう『かげろうのみた奇跡の星の光』はなくなっていた。

 そこにはいつもの、かげろうが見上げる、幽霊ホロウの街の真っ暗な星の光のない永遠の夜の世界が広がっているだけだった。

「……星の光。なくなっちゃった」

 窓枠に両手をついて、身を乗り出すようにしながら空を見ていたかげろうは、しょんぼりした声でそういった。

「そんなことないよ」

 と、落ち込んでいるかげろうによぞらは言った。

 かげろうはよぞらを見る。

「一瞬だったけど、かげろうくんは星の光を見たんでしょ? それは『とても幸運なこと』だよ。その今は消えてしまった星の光だって、もしかげろうくんが見つけなかったら、永遠に誰にも、その存在を知られないままだったかもしれないんだから、それはすごく幸運な出来事だったと思うし、とても価値のあることだったんだと僕は思うな」

 とにっこりと笑いながらよぞらが言った。

「……うん。ありがとう。よぞらくん」

 にっこりと笑ってかげろうは言った。

 星の光を写真にとってもらえなかったことも、それに、あの奇跡のような星の光が本当に一瞬で消えてしまったことも、すごく残念だったけど、『確かに僕はあの星の光をこの目で見た。あの星の強い光を、希望の明かりを、僕は今も覚えている。目に焼き付いている。たとえ写真に取れなかったとして、一生忘れることはないだろう』。

 かげろうはそう思った。

 そう思うと、なんだかとっても元気が出てきた。

「よぞらくんの言う通りだね」

 かげろうは言った。

 よぞらはにっこりと笑って、「でも、本当は僕もその星の光を見たかったし、このカメラで写真にも撮りたかったんだけどね」とかげろうに言った。

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