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隠しキャラ転生物語  作者: 瀬田 彰
四章

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クラリス様とご対面

閲覧ありがとうございます。

お待たせしました。

楽しんでいただければと思います。


「貴女をずっと待っていたわ!」


 部屋に入った途端、私はクラリス様に飛び付かれた。

 現状が理解できず私はパニックになる。


「ずっと貴女の登場(・・)を待っていたのよ!」


 そう言ってクラリス様は私をまじまじと見る。

 やっぱりクラリス様は何度見ても可愛らしい。

 流石主人公(ヒロイン)だ。

 普通の人とオーラが違う。

 でも残念だなあ。

 今のでクラリス様が何がしらの記憶もしくは情報を持っているって確定してしまった。

 『シル』としてはクラリス様と会うのは今が初対面。

 初対面の人間に『登場』なんて言葉は普通は使わない。

 ただ気になるのは『シル』と『シルヴィア』が同一人物という認識はなさそうだった事だ。

 もし知っていたらこんな好意的な態度は取らないだろう。

 

「クラリス様、いきなり飛び付いては新しい付き人が驚いてしまいますよ」


 クラリス様の専属のメイドだろう。

 キリッとしていて、美人系の人が声をかけてくる。

 美女ではないのよ。あくまで美人なの。

 第一印象としては敵か味方か分からない。

 でもあまり関わりたくないタイプだと感じる。

 要するに関わるべきじゃないってことだ。

 その辺『シル』は敏感に作ってある(・・・・・)

 そう。私が何年も正体がバレずに済んでいるのはこの『力』故だ。

 シルヴィアの魔力を削るだけではいけない。

 その力を別の力に変化させ、能力を分散する。

 そうして出来上がったのが『シル・アジャン』なのだ。

 無駄に様々な分野でのスペシャリストのお兄様とお姉様がいるわけじゃない。

 チートって言えばチートかもしれないけど『シルヴィア』自身は使えない。

 あくまでシルヴィアからシルになる為の魔力の逃げ道であって、他に応用などできなかったりする。

 

「あら、グレイシー。やっと求めていた付き人が来たのよ?喜びを表現しても罰が当たりはしないわ」


 私とグレイシーさんの目線が合った。

 するとギン!と睨まれる。

 それは殺意にも似た嫉妬と言うべきか、思わず小さく悲鳴を上げた。

 逃げたくて動こうとしたけれど、クラリス様が私をしっかりと抱き寄せてて逃げられない。

 意外と力強い。

 

「あのクラリス様、離して頂けませんか?」


 そう言うとクラリス様は「何で?」とキョトンとして私の顔をじっと見つめる。

 何だろう。この心を覗かれるような感覚は……。

 私は怖くなり、目をつぶる。

 怖い。

 気持ち悪い。

 近づきたくない。

 するとぐいっと腕を誰かに引っ張られた。

 アルだ。

 アルが私を抱き寄せたのだ。


「シル、大丈夫?」


 アルの声が耳元で聞こえた。

 とても心地良い。

 

「うん、ごめん。大丈夫……」


 あれ?不思議、アルがキラキラして見える。

 だってほらアルの回りに花が咲いてまるで少女漫画のワンシーンみたいな……。


「シル、しっかりしろ」


 今度はアルの声がはっきり聞こえて私はハッとした。

 う、頭がガンガンする。

 アルの顔が私に近付いてきて小声で囁く。


「今、クラリスが君に魅了魔法(チャーム)を使おうとした」

「え?」 

「大丈夫。耐性があるからかかってない。でもこれではっきりしたな。彼女は無意識に使っているわけじゃない……」


 ということは、意図的に使ってたってこと?

 記憶か情報があって、更に意図的に魅了魔法(チャーム)を使う。

 その行動はあまりにも身勝手だ。

 好きな人相手に使いたくなる気持ちは分からなくもない。

 でも彼女がしたことは許されることじゃない。

 さっきのメイドの話を真に受けて全てを信じるわけじゃない。

 でも、人がいなくなっているのは事実だし、人生を台無しにされている人もいるはずだ。

 それにシルヴィア()も無実の罪で陥れられそうになった。

 とても他人事だと無視する事はできない。

 

「シル、大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ。引っ張ってくれてありがとう」


 私はアルにお礼を言ってクラリス様を見た。

 クラリス様は相変わらずキョトンとした顔をしている。

 

『ねえ、それは演技?』


 本当は面と向かって今問いただしたい。

 でも今はその時じゃないと『シル』の直感が言う。

 

「何?どうしたの?大丈夫なの?」 

「ええ、大丈夫ですよ。このお話を受けてから緊張してしまって、目眩を起こしたみたいです」

「あら?そうなの?」


 クラリス様はコロコロと笑う。

 男受けしそうな顔だと感じる。

 ああ、何てことだろう。『シル』()は完全にクラリス様を拒絶している。

 

「そんなに緊張しないで。知ってると思うけど私は庶民の出なの。だから私達、『友達』になりましょう」


 そう言ってクラリス様は手を差し出した。

 私は「いいんですか?」と戸惑ったフリをしながらクラリス様の手を取った。

 

『これが本心からの言葉ならよかったのにね……』

 

 私は私の内なる声を聞いた気がした。

 

「ふふふ、嬉しいわ」


 喜ぶクラリス様。 

 彼女は気がついているのだろうか?

 アルフィード様が嫌悪していることに。

 そしてクラウド様もその手を離そうとしていることに……。

 

「あら、そう言えば貴女の後ろにいる殿方はどなた?もしかして私の新しい護衛様?」


 そう言ってアルへと視線を動かした。

 

「ダメっ!」

 

 私は咄嗟にそう叫んでアルとクラリス様の間に立った。

 クラリス様は目をパチクリさせる。

 数回まばたきをして、不思議そうな顔をした。


「何がダメなのかしら?素敵な殿方に挨拶をするのに貴女に許可をとらなければいけないの?」


 クラリス様の問いかけに私は言葉が詰まる。

 咄嗟に叫んでしまったけど、確かに今の私の行動はおかしい。

 別にクラリス様はアルに色仕掛けも魔法も何も使ってない。

 それなのに私は……。

 私が困っているとアルがフッと笑う。

 

「嫉妬かい?マイハニー?」

「え?マ、マイ、ハニー……?」


 私もそうだけど、皆も「え?」という顔になる。


「だってやきもちだろ?これ」


 嬉しそうに笑うアルにキュンとしつつ、今の私とアルは恋人同士で嫉妬してもおかしくない状況だと気がついた。


「や、やだあ。マイハニーなんて呼ぶなんて、恥ずかしいじゃない」


 照れた素振りを見せて手をアルの腕に絡める。


「ごめんなさい。あまりにもクラリス様が綺麗だから私心配しちゃって……」

「大丈夫だよ。君と俺の仲じゃないか」

「そうよね」


 そう言ってクラリス様をチラリと見た。

 するとクラリス様は私とアルを交互に見て少し考える素振りを見せる。


「貴方達の関係って何かしら?貴女が答えて頂戴」


 まさか質問されるとは思わず私の頭はパニックになる。

 私も簡単に「恋人です」と言えばいいのに、慣れてないのと恥ずかしさも重なって「こ、こ、こ」とどもってしまう。

 クラリス様に「こ?」と疑いの顔で見られた。

 それがいけなかった。

     

「こ、この人は私の()です!」

「え?夫?」


 これにはアルが驚いた顔をする。

 私はしまったと後悔するけどもう遅い。

 言ってしまったのは取り消せない。


「だから、その……、実は私達結婚してるんです!」

「え?そうなの?」


 これにはクラリス様も心から驚いたのか目を見開く。

 まるで新しい情報を知ったかのようだ。

 

「そうなんです!それでその報告を旧友に伝える為にこの国に来たんですけど、旧友達を驚かせる為に彼に頼み込んで夫ではなく恋人のフリをしてもらってたんです!」


 頭の中が真っ白になり、パニックになっている私はもう自棄で口を動かした。

  

「そしたら旧友達に教える前にお城の人に今回のお話を持ちかけられてしまって、話すに話せなくなっちゃったんです!!」


 我ながらよくもまあペラペラ出てくるものだ。

 肩で息をしながら私は喋りきる。

 

「その話、本当ですか?指輪もしていないし、そうなると貴方達は城の者を欺いたということになりますよ?」


 グレイシーさんが突っ込んでくる。

 ああ、やっぱりダメだった……。

 そうですよね。

 突発的な嘘だし、バレますよね……。

 泣きそうになるけど、泣ける状態ではない。

 何とかしないとこれはピンチだ。

 どうしよう。今から逃亡する?


「指輪をしていれば認めて俺達が夫婦だと認めてくれるんですか?」


 アルが冷静にグレイシーさんに問いかけた。

 グレイシーさんは「そうですね。そのくらいあれば少しは信じます」と答える。

 するとアルは何やらごそごそとポケットに手を入れて箱を取り出した。


「はい。俺の奥さん(・・・)、君の大事な指輪だよ」


 そう言って私の薬指にはめる。

 サイズはぴったり、違和感なしだ。

  

「え?あれ?何で……?」


 私がアルに聞くと自分も指輪をはめてにっこりと笑う。

 

「城の人を欺くなんて、恐れ多い。そもそも嘘か本当かわからないほどこの城の方々は腑抜けではないでしょう?」

「そ、それは……」


 グレイシーさんは頬を赤らめて困った顔をする。

 指輪が出てくるとは思っていなかったのだろう。

 私もそうだけど……。

 クラリス様は「あら、素敵な声」と気にも止めずに頬を赤らめている。 


「クラリス様の付き人になる様に言われ際に、夫婦別姓を名乗り公私混同せずに対応してほしいと言われたんですよ。それで指輪を外していたんです」  


 アルが穏やかな口調で答える。

 

「本当はクラリス様の付き人は女性である妻のみでした。けれど名前は夫婦別姓、指輪も禁止、そんなの俺はとても耐えられない」


 大げさなのでは?と言うくらいのオーバーリアクションをするアル。

  

「だから俺は彼女の側でないと嫌だと意義を申し出たんです。だって俺の()はこんなにも愛らしいでしょう?」


 そう言ってアルは私の顎を持ち上げる。


「指輪も名前も無理ならせめて隣にいたい。そう思ってるのは俺だけなのかと心配したけど、この思いは妻も同じようでした。まさか自ら俺との関係を暴露するとは、とても嬉しく思います」


 そう言って躊躇うことなく私に口づけをする。

 クラリス様を含め、皆から「キャー!」と甘い声が発せられた。

 というか、人前でキスとか恥ずかしいんですけど!!

 私が顔を真っ赤にしているとアルはニヤリと笑う。

 

「本当に私の妻は可愛いなあ。籠に入れて誰からも見られない様に鍵をかけて閉じ込めてしまいたい」


 ん?

 あの……、それはちょっと怖くない?

 ちょっと血の気が引いたけど、アルは私に合わせてくれているんだ。

 なら私も合わせるしかない。


「もうあなた(・・・)ったら人前でそんな事を言ったら恥ずかしいわ」


 するとアルが固まる。

 あれ?何か間違えた?

 私がどうしようかと思っているとアルに強く抱き締められる。

 

「ああ、君は世界一可愛いよ。その姿、誰にも見せたくない。今すぐ君の姿を見ている全員の目玉をえぐりだして俺しか見れないようにしてしまいたい……」


 怖っ!

 アル、流石にそれは怖いよ!

 目玉をえぐるって、何そのグロテスク。

 私を含め部屋の中にいる全員が青ざめるのがわかった。

 流石のクラリス様も引いているようだ。


「そういうわけでクラリス様、間違っても俺の妻に男など近づけさせないでくださいね?俺は貴女の護衛ではありません。あくまで俺の可愛い妻の付き人です」


 それを聞いたクラリス様は「そ、そうなのね。じゃあ、挨拶はこんなものでいいかしらね」と焦りながら言った。

 気のせいでなければ少しずつ後退りしている。

 流石のクラリス様もアルがいくらいい男でもこういうタイプの男は苦手のようだ。

 好きな人は好きだろうけど、横取りしてまでは手に入れたいと思わないのかもしれない。

 ふと、熱い視線を感じて見るとグレイシーさんだけは頬を赤めてこちらを見ていた。

 何?グレイシーさんはこういうタイプが好きなわけ?

 私が引きぎみでグレイシーさんを見ているとクラリス様が彼女に話しかける。

 

「グレイシー、他の()達が彼らに不用意に近づかない様に周知なさい。いい?両方に近付かないように言うのよ?」


 グレイシーさんは始め曖昧に返事をしていたけれど、クラリス様に強く注意されて「わかりました」と答えていた。

 何だろう。クラリス様が私の機嫌を損ねないようにしている気がする。

 私が複雑な気分で彼女達を見ていると、アルが私の手を握ってきた。

 一瞬驚いたけどここは合わせなければいけない。

 

「もう皆が怖がってるじゃない。ダメよ?怖がらせたら」


 そう言ってアルの手にスリスリする。

 それがまたアルに何か火をつけてしまう「だって君を愛しているから」と言われ手にキスされたり、「こんなに煽ったんだから今夜は眠らせないよ?」とか言ったりと事あるごとにベタベタとくっつき、挙げ句の果てにクラリス様の散歩中、見回りの兵士に対して「今私の妻に色目を使わなかったか?」と迫ったりした。

 可哀想に余程怖かったのかその兵士は半泣きだった。

 最早痛い夫婦がクラリス様の付き人になったとその日に囁かれたりする始末だ。

 何はともあれ、私とアルはクラリス様との対面を無事に乗り越えたのである。

読んでいただき、ありがとうございます!

少しでも楽しんで頂けたらと思います。

いよいよゲーム内の主人公も出てきたりしました。

さてはて、どう絡んで来るのやら……。

では良ければ次回もよろしくお願いします!

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