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隠しキャラ転生物語  作者: 瀬田 彰
三章

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疑問点

閲覧ありがとうございます。

今回はアル視点で話が進みます。


 一通り見終わった後、シルは疲れたのかベッドに腰を下ろした。

 俺はまだ結果に信じられず腕を組む。

 

「覗き見や盗聴の類いの魔法とか怪しい物が全くなかった……」

「そうだね。私もてっきり何かで監視されるかと思ったんだけど……」


 シルも俺と同じ考えだったんだろう。拍子抜けだと言わんばかりのポーズをとった。


「アルも座ったら?」

「あ、ああ……」


 俺はシルに言われるがまま腰をベッドへと下ろす。 

 

「もしかして俺達が自らの意志で来たわけじゃないからか?だから警戒心が薄いのか?」

「そういうものなの?クラウド様はともかく、アッシュ様はめちゃくちゃ私達のこと疑ってたけど?」

「だよな……」


 俺は安易な考えを頭から消す。

 俺は独り言のつもりだったのにまるで予測していたように話すシルに嬉しく思った。

 それにしても絶対に何か仕掛けてあると読んでいたのに読みを外すとは……。

 悔しいという思いもあるがそれ以上にクラウドの考えがわからない。

 結局俺達をクラリス嬢の付き人にする理由もクラウドははっきりと言わなかった。

 いや、敢えて聞かせないようにしていたのか?

 ならば俺達は何かの囮に利用としている?

 いいやそれこそクラウドらしくない。

 俺がそんな事を考えているとシルがドサッと後ろへと倒れた。

 驚いてシルに目線を動かす。彼女も何かか考えている様だった。


「何だかすっきりしない……。モヤモヤする……」


 そう言いながらもベッドが心地いいのだろうか、シルは気持ち良さそうに転がる。


「そういえばクラウドは俺達がジャイル国の人間だということを何度か強調していたな」


 最初は俺達の正体に気がついたのかと思ったのだが……。

 

「そういえばメイド達が言ってたけど、耐性がある人を集めてるって。その中でもクラリス様の側につく私達は重大な役目だって言ってたわ」


 そう言ってシルは身体を起こした。

 今更だけどシルの格好は目のやり場に困る。

 妙に色気があるというか、胸元とか肌の露出が多い気がする。ほら、今だって胸の谷間が……。


「アル?」


 シルが視線に気がついて俺に近づいてくる。

 良い香りと揺れる胸元……。

 俺はハッてして慌ててシルから目線をそらす。

 頼むから、せめてガウンを羽織ってくれ……。


「もしかしてクラウド様がジャイル国に拘るのって、スピティカル国の財政が危機的状況と関係がある?」


 シルの言葉に俺は驚き顔を上げた。

 

「流石ダーンの娘だな」


 別に馬鹿にしたわけじゃない。俺は心底感心して出た言葉だった。

 でもシルにとって嫌だったらしい。ムッとしながら「馬鹿にしないでよね」と答えた。

 

「ジャイル国と敵対すればスピティカル国は他の大国との交流を断たれ、スピティカル国は物資が入ってこなくなる。そうなれば国は滅びる。勿論他の三大国も同じことが言える。こんなの知識ある者なら誰でも知っているわ」

「ああ、四大国はそれぞれの足りないものを大国同士で補てんしている。それを繋いでいるのはジャイル国だからな」


 父上達が好き勝手をしても国が滅びない理由はこれだ。

 ジャイル国は四大国の架け橋であり、それを結ぶ『核』となっている。

 だからジャイル国は潤っているのだ。

 そしてスピティカル国がジャイル国を敵に回せない理由は他にもある。

 スピティカル国はその立地故に作物があまり育たない。

 それ故に他の大国からは勿論、特にジャイル国に作物関係を依存している。


「でもそこからは財政難というのは導かれないな」


 知りたい。

 シルヴィア嬢がどうやってその答えを見つけたのか。

 

「私を試してるの?」


 面白くなさそうな顔をしてシルは俺に聞いた。

 俺は「いや、これはただの興好奇心だよ」と答える。

 シルは少し悩みつつも「わかった。そんな難しいことじゃないんだけどね」と返事をした。


「さっき部屋中を調べて気がついたんだけど、ここの装飾品は殆どがレプリカなのよ」

「へえ……」  

「でもね私達が庶民だからと適当にするにしては手が込みすぎてると思わない?部屋の大きさ、家具の配置からして間違いなくこの部屋は上級階級用のゲストルームだと私は思ってる」


 そう言ってシルは辺りを見回した。


「これ程の豪華な部屋、豪華な装飾なのに置いてある物はレプリカ。おかしいって思わない方がおかしいわ」


 そう言ってシルは置物を手に取り軽く見て元に戻す。


「本物を置けない理由。それはお金に困っている可能性が高い。恐らく他の場所にもある装飾もいくつかはレプリカじゃないかしら?」     


 流石シルヴィア嬢だ。

 彼女は見極める瞳も持っている。

 

「でも財政難の原因はわからない。この国はそこまで浪費をしているようには見えないもの。私がいた町もそれなりに潤ってたし……」  

「使っているのはクラウド達じゃない。クラリス嬢だ」

 

 俺の言葉にシルは険しい表情になる。

 同じ女性として許せないのか、それとも何となく予想していたのかもしれない。


「だが理由がそれだと俺達への行動はおかしすぎる」

「そうよね。滞在城にはアルフィード様とシルヴィア()がいた。どうしても財政難ならクラウド様の行動は説明がつかないわ」

「ああ、クラウドの行動はアルフィード()の怒りを買う行為でしかない」


 いやそもそもクラウドが婚約を解消したという情報に踊らされること事態がおかしい。

 けれどクラウドは確かに俺の知るクラウドだ。

 替え玉とは思いたくはない。


「アルはさっきアッシュ様が言ってたメイドのマリーの事はどう思う?」

「アンリに確認をしてみないと答えようがない。俺よりアイツの方が詳しいだろうからな」

「そっか……」


 あの時にいたマリー。俺には密告するような人間には見えなかった。

 そしてそれはシルもそう思っているのだろう。

 アンリはどう思っていたんだろう?

 怪しいから探していた?

 いや、アイツはリリィを警戒していた。

 執事長とのことを考えても現時点でマリーを一方的に疑うのは早計か……。

 とりあえずアンリと連絡が取れるようにしなければならない。


「腕はもう大丈夫?」


 シルが心配そうに俺の腕に触れてきた。

 俺が難しい顔をしていたのは痛みだと思ったのかもしれない。

 それにしても、露出した肌が近づいてくるのは目のやり場に困る。


「アル?」

「だ、大丈夫だ。問題ない」


 声が上ずってしまい、慌てて口を押さえる。

 

「本当に?」

 

 俺の顔を見るためだろう。シルが更に近づけてくる。

 頼むからもう少し自覚をしてほしい。そう言いたいけれど、そう言う目で見ているのかと思われたくもない。

 俺は心の中で平常心平常心と唱え続けた。

 シルはそんな俺の心情に気がつくこと無く俺の腕をさすり、複雑そうな顔をする。

      

「何でクラリス様はアルに奴隷の烙印をしようとしたのかしら……」

魅了魔法(チャーム)に耐性があることはクラウドが連れてきたということで想像はつくだろう。だからかもしれない」

「でもそれって何の意味があるの?」  

「クラウドに対する警告か、それとも俺の正体に気がついて先手を打とうとした行動か……」

「前者はともかく、後者はないはずよ!」


 シルは信じられないと言う顔をした。

 俺も頷く。確かにそうだ。髪と目の色を変えているだけなのだが、これが中々同一人物と判断するのは難しい。

 だが……。

  

「サーガがクラリス嬢を毛嫌いする理由は知っているか?」

「ううん」

「彼女は話してもいない事を知っているんだ。まるで見てきたかの様に……」

「え?」


 この時、シルの表情が今までに見たこともないくらい血の気が引いていた。

 そして一言「まさか……」と漏らした。

 この時俺はまだ気がついていなかった。

 彼女はただ驚いていたわけじゃない。これには別の意味があった。

 けれどその意味を俺が知るのはもう少し先の事となる……――。

読んで頂きありがとうございます。

今回も長くなりそうだったので、少し強引に分割しました。

次もまだまだ夜は続きます。良ければまたお楽しみください。

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