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25.旅立ち

  俺が目を覚ますと、中庭は地獄絵図だった。



 綺麗に芝が生え揃え、整えられていた中庭の地面はめくれ返り、草が抜け、所々赤黒く染まっている。そして中庭のいたるところにいくつもの肉の塊が転がっている。


 そしてその肉塊にすがりついて泣く人々。

 若い男性、年老いた老婆、まだ年端もいかぬ少女とさまざまであったが、彼らから感じさせる感情は皆同じだった。



「生存者がいたぞ! ひどい怪我だ……救護班、急げ!」



 するとこちらに気づいたのか俺の元に数人の大人が駆け寄ってくる。

 男達の手には包帯や瓶に入った液体が握られている。

 おそらくあれが薬なのだろう。倒れている俺の口に薬が流し込まれる。


 飲まされた薬はこの間ドレスを着た少女に飲まされたものと似た味がした。

 しかしあの時とは違い、体が温かくなる感覚も何もしなかった。もちろん俺の怪我も全く回復しない。



「なっ……ポーションが効かないぞ!

どうなってるんだ!」


「バカ言え! こいつは最上級の回復ポーションだぞ! そんなことあり得るわけが……」



 なんでって……俺が聞きたいわ……まさかステータスがなくなったからか? このポーションって薬はHPを回復させる薬ということなら…………



「とりあえず医務室へ運べ!

そこで治療するぞ!」




 俺の体は大人達に持ち上げられ運ばれる。そうして俺は地獄を後にしたーー






  あの時間から数日、結局俺の怪我について追求されることはなかった。それどころではないからだろう。


  国王が死に、勇者達は全員さらわれた。

今はその事実をなんとか隠してはいるが、外に漏れるのも時間の問題だろう。


 情報が漏れると国はパニックに陥るだろう。

 勇者という希望が消え、残ったのは異世界から来たというだけのただの一般人。そんなことが気づかれたら……

 そうしたら俺は身軽に動きづらくなる。

 どうにかその前に国を出たい。幸いなことに怪我はあらかた治って来ている。


 その日の夜中。城内が寝静まっている頃に城を出ることにした。

 なんとか体も動くようになった。これ以上ここに居座る意味もない。

 ベットから体を起こすとまだ体のあちこちが痛む感じがする。が、この数日筋肉痛などの痛みに耐えて来たおかげで耐性ができたのだろう。さほど気にならない。

 俺は医務室の窓から飛び降り、中庭に静かに着地した。


 そして音を立てないように正門まで進む。 途中片付けきれていない肉片を踏んで小さく悲鳴をあげたがどうやら気づかれなかったようだ。マジでびびった……


 また、その肉片の近くのめくれ上がった地面に隠されるように落ちているあるものが目に付いた。

 それはこの数日、俺が嫌という程目にしたものだ。毎日握り、振るった。細部の至る所まで全て記憶通り。赤黒く変色した持ち手。何度もの剣戟を受け止め傷の付いた丸められた刃。

 俺は迷うことなく木剣(それ)を手に取り正門へと向かって行った。


 正門には当然門番がいた。だがそれは想定内だ。俺は門番の背後に回り込み、その後頭部に思い切り木剣を叩きつける。

 門番は何が起こったのか知る間も無く気を失ってしまった。

 まさかおっさんと同じことをする羽目になるとは……門番の人、ごめんなさい。


 この世界に来てから、ずっと暮らしていた城だ。多少なりとも思い出はある。

 おっさん……いい人だったな

 もう二度と会うことはないだろうけど。

 この世界で俺に戦う術を与えてくれた。あの人のことは忘れないだろう。

 国王……瀬川についたとはいえ、召喚した俺たちへのケアを忘れないでいてくれた。時折城の中で会った時に、俺に対して申し訳なさそうな顔をして謝ってきたあの人の顔を忘れない。


 俺は城に向かって深々と頭を下げる。

 


「本当に……今までありがとうございました……」



 そうして俺は旅に出た。

 

 魔王を倒す……いや、ゆきを救う旅に。






俺たちの冒険はこれからだ!

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