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 本日も早朝の王都を、その冷たい空気を切り裂いて駆ける一筋の流星、五星新聞配達員のアンディ君ダヨー。

 なんか最近、歴史の授業とか受けだしてからテンションあがらねーっすわー。

 いやまあ興味深い授業ですけどね、ある意味色々と面白い話ではあるとは思うんですがねー。

 大抵の騒乱だのに俺の『ご同輩』らしき連中が関わってさえいなければ。

 基本ロクな事やってないんだよなあ、目指すところを知っている俺としては何がやりたかったか分かるだけになんとも言えない気分になるが。

 もちっと周りの状況見てから事を起こせよと思わなくも無いが、その状況が自分からしてロクでもない物だったら結局何かしらの行動は起こすのかねえ。

 しかし結果が須らく酷い、なんなのこれ、文明の破壊者って奴ですかね。

 そんな感想を持ったらその日の晩に変な夢を見た。

 なんか目の前に昔の刑事ドラマの張り込み中の刑事みたいな格好をしたイース先生が、この文明も『■』によって破壊されてしまった、おのれ『■■』ォォォォ!とか何とか言いながら俺に殴りかかってくるという素敵過ぎる夢を。

 ねーよ、色んな意味でねーよ、なんか全て俺の所為にされそうな流れだけど俺は何もしてねーよ、とか呟きながら目覚めてしまったわ。

 恐ろしい夢だったぜ、とか慄きながら言った後に急速に馬鹿らしくなったが。

 実際俺は何もしてねーし、するつもりもねーから知らぬ、そう思うことにした。

 まあ、歴史の授業はまだまだ続くんだが、ついでにまだまだなんか嫌な予感がヒシヒシするんだがね。

 





 オウフ、口から変な汁が垂れそう。

 本日、歴史の授業だったんですが、こう今までの流れで耐性ついたかなあとか、きっともう『ご同輩』が何かやらかしてても生暖かい気持ちで受け流せると思ってたんだけどオウフ。

 なんか先日の愚民化政策ブン投げた王様の話とかから数ヶ月経ったんだけど、歴史の授業はそれからも続いたんだけどなんだろうこれオウフ。

 とりあえずザックリとダイジェストでお送りしたい気分なこの数ヶ月、突っ込みどころ満載だがとりあえず一気に振り返りたい。


 えー、まず各国の支配階級ってか施政者?ってのかね、の連中が民が馬鹿だから賢くしないと俺たちが頭おかしくなって反乱で死ぬ、的な恐怖に駆られてトチ狂ったのが前回までの流れだったかと思う。

 で、下々をさっさと頭良くしようとする試みがなされたんだが、驚くほどに難航したらしい。

 まあ、いきなり馬鹿に勉強しろつってもね、あれだよね、勉強?何それ食えんの?とか言われる感じだよね。

 実際そんな感じのやり取りが多々あったらしいが、命じれば素直に従う連中ばかりだったので教育を受けさせること自体は反発などなかったらしい。

 反発は無かったがやる気もなかったと言うオチだが。

 教育を大多数の人間に受けさせるための諸々の環境だの設備だのの整備は、まあ国々の状況で色々とあったらしいがそこら辺は割愛されて説明されたんだが、というかそれ言ったら各々の国で進捗も違うだろうし、そっちへ舵を取らない国ってのも当然かなりの数あったらしい。

 兎に角、大体の国々で民達の教育を行う方へと舵を切り、読み書き計算できるぐらいまでは大抵順調に行ったらしいが、他の教育がイマイチ捗らなかった。

 というか、歴史とかを教える段階まで行った者の大半が、その途上で学習意欲を失っていったらしい。

 元々が勉学と言うものにあまり意欲を感じていなかった大多数の民達だったのだが、読み書き計算は必要性を学ぶうちに実感として得られた。

 しかし、それから先の事柄となるとこれって必要なのかと、逆に中途半端に賢しくなった所為で考え出したらしい。

 そして歴史を学びだすとそれが極端に加速して行った。

 歴史なのだから当然今までどう言った事が大陸で起こったか、それを主に施政者側の目線ではあるが教えられるわけだ。

 その当時に何故教育を民達に施し始めたかの理由にも関わるわけで、特に熱を入れて教育課程が組まれていたらしいのだが、施政者側の熱の入れようとは逆にそれを受ける民達は割りと引いたらしい。

 ここら辺、施政者側にとってかなり諸刃の刃だとは思うのだが、教えることを躊躇はしなかったらしい。

 民達がその気になれば施政者を、支配者達をその座から引き摺り下ろすことが出来る、その体制を変革することができるというそれまでの歴史的事実を。

 その先に何も知らない民達では統治が務まらず漏れなく崩壊し、滅びへと走っていった事を。

 異常な鬼気を迸らせ、血走った眼でそう民達に説く施政者達の恐怖に駆られたその容貌に民達はドン引きしたらしい。

 そして実際に以前と同じ方針で国を治めていた所で乱が起き、そこが滅ぶとさらに民達は引いた。

 伝え聞くその様は人を伝ううちに色々と歪んではいたものの、どれを聞いても碌な物ではなく、半端に賢しくなったが為にその恐ろしさがよく分かった。

 そんでまた教える側がなんとも尖ったチョイスが多かったようで、どうも基本そういう反乱だの革命だのの混乱で命辛々逃げてきた王侯貴族連中を教師として宛がう国が多かったそうで。

 そんな奴等が民達に説くのだ、我らが築いたものは何もかも無くなってしまった、と。

 奪われ、殺されるのも恐ろしいが、築いた物が何の意味も無く焼き捨てられるのを見るのも我が身を裂かれるのと同じくらいに耐えられない、と。

 お前たちは自分が育てた作物や家畜を奪われ、食われもせずに目の前で焼き捨てられるのに耐えられるのか、と。

 奪うならせめて使え、せめて食って糧にしてくれ、築いた館が、城が、町が、華々しい繁栄の証が、見るも無残に、何の意味も無く壊されていくのはもう嫌なのだと。

 だから簒奪するならせめてそれの使い方を知ってからにしろと、体制に文句があるなら聞いてやるから現実的な意見を出せ、と。

 そう言って半ば八つ当たりのように悲憤する様を見せられて、民達はもう勘弁して欲しいと言わんばかりに腰が引けたらしい。

 懇意的というか本当にもうなんというか穿ち過ぎなその教員のチョイス、その効果はまさに劇的だった。

 というか、施政者側の民達に対する腰の引け具合というか捨て身っぷりが半端なかった。

 それだけ当時の状況がアレだったんだろうと言う事なのだが、ヤケクソと言うか正にトチ狂ったレベルである。

 で、そんなん見せられた当時の人々は思ったわけだ。

 もう分かったんで、余計なことしないから畑に戻っていいですかね、と。

 読み書き計算が出来るようになって色々と便利になった、頭も良くなり色々と試したいことも出来た。

 そして歴史の授業が始まって、何故王様達が自分たちに勉強をしろと言ったかも理解した、もう嫌と言うほどに理解した。

 と言うわけで、正直これ以上はなんか踏み込むと碌な目に合わない気がするんで、もういいんじゃないですかね、と。

 半端に頭が良くなった所為で、逆に面倒事を察知して家畜に戻ろうとかし始めてしまった。

 施政者達は焦って引きとめた。

 いやいやいや、色々不満とかあるだろうと、一緒に問題点を考えようぜ、と。

 民達は焦って距離をとった。

 いやいやいや、確かに不満は色々あるけど、俺らじゃ頭悪いしそこら辺は王様達が考えてくれたほうがきっといい結果になりますよ、と。

 施政者は更に焦った。

 いやいやいやいや、そこを頭を良くして、色々物を知って、同じ土俵に立って考えていこうって話だろう、と。

 民達は更に距離をとって言う。

 いやいやいやいや、そう言うの良いんで、別に今の暮らしをぶち壊してまでそういうの求めてないんで、余計なこともしないんで王様達に従いますんで、と。

 施政者は怒った。

 ふざけんな、そんなこと言ってて不満があったらいきなり反乱とか起こすんだろ!あの国みたいに!あの国みたいに!!

 民達は怒った。

 ふざけんな、もうわかったっつーの、そんな事したら酷いことになるんだろ!あの国みたいに!あの国みたいに!!

 施政者は自身を落ち着かせるように息を吐いて、そのあと満面の笑みで言った。

 だから、そうならないように勉強しよう、なっ、お前たちも自分たちの事は自分たちで決めれるようになったほうがいいに決まってるだろう?と。

 我々と共に手を携えて国を栄えさせていこうじゃあないか、と。

 民達は顔を青ざめさせて後ずさった。

 俺たち今の暮らしに大きな不満なんてないし皆もそうだよ、なっ、王様達だって今まで通り楽できるしその方がいいに決まってるだろ?と。

 俺たちが支えるから国を栄えさせて行ってくれよ、と。

 施政者は吠えた。

 ふざけんな、そうやって積み上げたもんがお前らに崩されると分かっててそんな不毛な事ができるか!

 この苦労を分かち合え、権利をくれてやるから今より楽になるんだ義務を果たせええええ!

 民達は叫んだ。

 ふざけんな、もうそんなことしねえって言ってんだろうが、こっちだって畑に塩まくような真似なんてしねーよ!

 あと、例え楽になるかもしれなくても、今の生活と命が少しでも天秤にかかるんなら権利なぞいらんわああああ!


 なんだこれ、というのが俺の偽らざる感想なんだが、ナニコレ酷い。

 まあ、これはかなり極端な事例の一端らしいが、大体こんな感じで一定の水準まで頭が良くなった民達は、これ以上賢くなったら絶対に面倒なことになる、俺は畑に戻るぞー!とか言い出して勉強から逃げ出したらしい。

 で、引き止めようにも施政者側が色々と腰が引けてるんで強権的に行えずグダグダに。

 しかし、そんな事している間にも旧態依然とした国で反乱騒ぎやらなんやらの話が聞えてくる。

 本当にアイツ等わかってんだろうか、大丈夫なんだろうかと気を揉むうちに、ある国の王族が疑心暗鬼に駆られて特に問題が無かったはずの国を夜逃げするという前代未聞の珍事を起こした。

 別に特に圧制を強いていたわけでもないその国だったのだが、連鎖的に他の貴族達も恐慌に駆られて国を逃げ出したせいで見事に統治が混乱。

 ある程度の国民の教化が進んでいたのでなんとか、辛うじてなんとか国は崩壊しなかった。

 しかし、混乱の波及を恐れた周辺国は一切の手出しを、良い意味でも悪い意味でも行わず、統治者が不在のままその国は民の他国との行き来すら制限された状態で長らく混迷することになる。

 で、そんな様子を知った民達はあまり勉強から逃げてると、王様達が逃げてしまうんじゃないかと慄いた。

 そうなっては敵わないと考えつつも、自分たちが思う必要以上の勉学も気が引ける。

 それでもじりじりとおっかなびっくり距離を詰めるかのように民達は勉学の場に戻ってきた。

 施政者側も事を急ぎすぎたと反省しつつ、おっかなびっくり民達との距離を計った。

 耳に届くその王達が逃げ出した国の困窮具合を聞きながら、そうやってじりじりと距離を計っていた両者だったが、その動きとは別に民側がおかしな事をやりだした。

 現状に不平不満を声高に述べる人間を自分たちで吊し上げだしたらしい。

 魔女狩りというか、異端狩りというか、ともかく王様達を不安にさせないように不穏分子の狩り出しなんて真似を自主的にやり始めてしまったそうで。

 満面の笑顔で吊し上げた仲間であるはずの同じ民を『献上』しにやって来る民達に施政者達は慄いた。

 止める様に言ってもそれは一向に止まらず、逆にエスカレートして行った。

 施政者達は恐怖した、そして気がつく、既に前例がある為に何処へ行くにも民達の目が光っている。

 自分たちを逃がさぬように、何処へ行っても笑顔で彼らは自分達を取り囲んでいるのだと。

 そして今日も供物が館へと届けられる。

 下手を打てば明日は我が身と言わんばかりに。

 止めても止まらず、そして恐怖に慄き民におもねれば、民達の笑顔が深まり、そして供物の数が増えていく。

 民の、民による、施政者のための粛清、大陸は恐怖の暗黒時代へと突入したらしい。






 怖っ、なんでこういう方向に走るんだよ異世界怖いよ。

 途中までコメディタッチだと思ったらなんだよこのホラー、勘弁してくれ。

 これも巡り巡って俺らの『ご同輩』の所為だとでも言うのかよ、これは違えだろ絶対。


 

 

 




 


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