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06

 



 早朝、まだ日が昇らない王都の中を俺は走っていた。

 まだ殆どの家が寝静まった静かな王都、肌寒いその中を俺は走りぬける。

 目的の場所の一つに辿り着き、そこに自分が背負っている鞄から目的のものを投函する。

 そして次の目的地へと再び駆け出す。

 鞄の中身も大分軽くなってきた。

 今日の分ももうすぐ終わりだ。

 次の目的地、というか民家が見える。

 鞄から物を、新聞を取り出す。

 ポストへと投函して次へ、また次へ。

 早朝の空気が俺の肺をひんやりと冷やしているこの気分、いいねえ爽やかだねえ。

 学園の寮から焼き出されて2ヶ月が経った。

 俺は、新聞配達に精を出していた。





 何故こんな事をしているのか、理由は簡単である。

 先日のアンドレイおじさんとの会話で危機感を持った俺はアルバイトを始めようと思ったからだ。

 学園がゴタゴタして業務を停止している、って学び舎としてそれはどうなんだとも思うんだが、その間に俺は学業の片手間に出来る、というのは建前で流石に学校の授業時間には働いたら不味いかなと考えたからだが、バイトを探した。

 なんか他の連中は自主学習とかしてるのかも知らんが、既にあの日に校長室登校を決めて即日校長が更迭されて居場所を失った俺には関係ない話だ。

 最早悪目立ちが云々とか気にしても、既にこの上なく学園内で悪目立ちしているんだから知らぬ。

 あーあーあーあー、知らないったら知らない、もうずっと業務停止してりゃいいのにとか思ってないよ。

 とりあえずほとぼりが冷める、さめるのか甚だ疑問だが、までは学園とは距離を置くことにしたのだ。

 ある意味いい機会だったと思わなくもない。

 まあ目覚めて火の海とか直後に全裸でフリーフォールのあとにマラソンとかは二度と御免だが。

 とにかく、七歳で出来るアルバイトである。

 そんなもんあるわけないかとも思ったんだが、意外とこの王都、この世界と言うべきか?は子供の就労には寛大だった。

 まあ、魔法もあるしわりと低年齢で働きに出る奴というのもいるらしく、最もそうであっても圧倒的少数ではあるのだが、探してないこともなかった。

 まあ、魔法が使えない七歳という時点で大体何処からも敬遠されたが。

 おじさんが紹介してくれると言ったが、何か人のツテで入ると大抵ろくなことにならないと俺の『前世』が囁くので断り、何故か非常に都合よく目の前に現れるなんだか好条件の胡散臭い諸々の案件をスルーし、辿り着いたのがこの新聞配達であった。

 いや、おじさんの紹介断ったのもアレだが、その好条件の胡散臭い案件ってのがね、まあ胡散臭くないのもあったよ。

 なんかまるで運命を感じるかの如きタイミングで絶妙にするりと目に入る、懐に潜り込んで来るなんか凄くいい感じの案件やらさ。

 しかし、しかしですよ、なんか条件がいいのはいいので逆に気後れするっつーかね、お給金に見合ったお仕事をこの生ゴミがこなせるか自信がないって言うかあ。

 いやね、それに喰らい付いていって能力を伸ばすもんであって、そういうのが俗に言う仕事が人を育てるっていうのは理解してるし俺も実感としてあるんですけどね。

 なんかこう、ピンと来ないというか、何処となく選ばされているような嫌な予感が、ってきっと俺の被害妄想的な何かなんだろうけど何時もの。

 まあ、とにかくそう言うのを避けて俺が辿り着いたのが、このなんかニッチでマイナーな臭いのする『五星新聞』の配達業務である。

 こう、大々的な募集をするでもなく寂れた広報版的な所に張ってあった配達員募集の張り紙を見てなんとなくね、その支部とやらに行ってみた訳よ。

 で、担当の人に話を聞いてみたんだけどいい人でねえ。

 諸々の事情、辺境から出てきた、学園で学びつつ合間に出来るバイトを探している、魔法は使えない等、を話したら偉く感動というか同情されてねえ。

 なんか『村』の面々のあの過剰反応を思い出して顔が引き攣った状態のままそのままその担当さんの勢いに流されるように働くことになってたんだが、いやまあ悪くはない条件なんだよね。

 あの担当さんと絡むたびに『村』の面々を思い出して変なプレッシャーを感じるが、俺が個人的に勝手に感じるだけなんだけどね。

 他の連中は全然そんな感じじゃないからあの人だけ人がいいんだろうと思われる。

 なんか怪しげな香りがする?馬鹿な、ちとお花畑な環境団体系の新聞だよ。

 自然回帰的な文明の利器を使わずに生きましょう的なわりと笑える紙面内容だが。

 最初に軽く一面の字面見ただけで読む気が失せたけどそのぐらいのアレな奴のほうが配達先も少なくて楽なもんさ。

 部数のわりに配達範囲が広いのが難点だが。

 まあ、『前世』でもマイナーな新聞、っつーかアレは機関紙だったか?配ってたが似たようなもんだなあ。

 これも機関紙に類するもんな気がするが、あれだな、イデオロギーに同調できないと傍から見てるとよくわからん内容だったりするのがなんとも。

 まあ、とにかく、この新聞を配って得た金銭で自分の欲しいもんや食いたいものを購入して日々を過ごしているわけだ。

 いやあ、働いた金でする買い食いはいいもんですね、なんか充実してるよ最近。

 早起きは元々の『村』の生活がわりと早起きだったのもあって意外とちゃんとできるし、ってか俺は起きなきゃいけない用事があればちゃんと起床できるんだよ。

 『前世』でも仕事に寝坊したことはないし、いや、仕事中に寝てしまうことは多々あったが。

 体動かす仕事は眠くならないし、汗を掻くのは嫌いじゃないし走るのも嫌いじゃない。

 なんか配達も効率よく回れるようになったし、範囲広げるのもいいな。

 確か基本的に人が足らなくて担当じゃない人間が借り出されてるみたいだし、言えば喜んで回して貰えそうだ。

 いやあ、働くっていいもんですねえ。

 寮みたいにやる事もなく自室で過ごすということもないし、王都生活満喫しちゃってる感があるねえ。



 そんな風にして日々を廻すこと更に数ヵ月後、なんか忘れてる気がした。

 学園の方は授業再開してるが、なんか今更行き辛いし行ってどうにかなるとも思えず不登校だ。

 まあ、それは正直どうかとも思ったんだが、今行っても校長も違う人になってるんだしこう、ね。

 休学届けとか出せるのか聞いてみたら、色々事情もあるだろうし出来れば登校して欲しいが、登校しなくとも休学する必要はないとか言われたんでそのままだ。

 担当した職員さんの態度がなんか変だったが、元々俺自体があまり人の目を見ない奴なんでイマイチはっきりと変だと言い切れないのがなんともアレだが。

 とりあえず、当分は学園にも行かずに過ごして学年が変わったら一度顔を出すかなあと考えている。



 更に数ヵ月後、何か忘れている気がしたのだが、よく考えたらあの日以来病院に行っていないことを思い出した。

 よって足を運んでみたのだが、なんか病院が無くなっていた。

 何処かに移転したのかとも思い周りに話を聞こうかと思ったのだが、正直なんの成果もなく通うのはダルかったのでもうこのままでいいかと思いそのまま帰宅した。

 

 

 さて、今日も今日とて早朝の王都を走る。

 日に日に配り終える時間が早くなり、それに伴って配達範囲を増やして行ってなんか楽しい。

 走りながら日々最短のルートを考え、それを実行してタイムの長短に一喜一憂する。

 そして配り終えたら早い時間から開いている店で飯を喰い、王都をブラブラと散策する。

 配達コースを見て日が昇っているとなんかそれだけで違って見えるなあ、とか思いながら配達のルートの変更を考えたり。

 知らないところをぶらついて新しい店を発掘、主に人があまり多くなくて利用しやすそうな店だが、したり。

 まあ基本当て所なくブラブラとするわけだ。

 大抵の子供が学校に通っている時間にうろついていると目立ってしまうが、特に体質の問題で人目を引く俺はそれが顕著だが、もういい加減それにも慣れはしないが気にしないでいられる程度にはなった。

 感じる視線をない物として扱えるというか、なんかただでさえ人の機微に鈍感なのが加速した気がせんでもないが。

 まあしかし、あまり立ち寄らない所に行くと大人達に学校は?と聞かれたりもするんで面倒ではある。

 学校には行ってない、バイトで稼いだ金でプラプラしている的な事を言えば特にそれ以上何か言われることもない。

 なんでも、大多数は学校に通うがそうでないのも結構な数いるらしく、稼業を手伝ったり丁稚奉公的な感じで商家やらに通ったり、それこそ何もせずプラプラ遊び回ってるのもいるらしい。

 つか、若くしてその日暮しの遊び人というかフリーターみたいな輩が王都には結構な数居るらしい。

 実際、見るたびになんか違うことしてる若いニーちゃんとかちょくちょく見かけるが、それでいいのか王都。

 いや、人口が多い都会だから色んな奴がいるわな、それこそ俺みたいなの不登校でアルバイトしてる七歳とかもいるし。

 まあ、そんな感じで一度説明してしまえば大抵の大人は納得、いや決していい意味ではないのはわかってるんだが、する。

 一部の方からは若いうちからそんなんじゃああなってしまうよ、とそこら辺をうろついてる遊び人的な輩を指差して諭されるわけだが。

 まあ、そう言うやり取りをその区画で何回かやれば一度会ったら大抵の人から覚えられるこの存在感(笑)のお陰で、怪訝な顔などされなくなるというわけだ。

 まあ、相手から覚えられても俺は殆どの相手を覚えてないんだが。

 しかし、こういうのも顔が売れると言うのかねえ、全然うれしくないが。

 というか、そうなると変な事はできないというか、所作に気を使うというか。

 いや、変な事なぞするつもりはないんだが、あと所作に気を使うとか集中力が残念だから、継続できないから無理なんで最初からやってないが。

 そんなこんなで王都をぶらついて、同世代の連中が下校するぐらいの時間と被らないように家に帰る。

 学園の連中はあまり寮の外をうろつかないが、それでも全く出てこないわけでもないし顔を合わせるとまた色々と面倒なことになるかもしれない、というか今までのことを考えると間違いなく面倒ごとになる。

 そして、学園生以外の学校通いの連中は、それこそ病院通いしてた時の事もあるから、絡むのが面倒というか絡まれるのが面倒というか。

 そんで家に帰り着いたら干していた洗濯物を取り込んで、風呂を掃除したあと菓子を摘んだりしながらダラダラしたり掃除をしたり。

 で、夕方になったら買ってきた材料で飯を作ったり、出来合いのもので済ませたり。

 そして沸かした風呂に入ったらダラダラと時間を過ごす。

 しかし、時間を潰す方法が少なくて困るんだよな。

 家電はあるのにTVないし、ラジオすらない、本を読むぐらいしかやることがない。

 何故ないのか疑問ではあるが、自動車も見当たらないしまあそう言うもんなのかねえと思うことにした。

 本は色々と面白いものがあっていい感じなんだが、問題はこの世界の歴史やら地名を完全に把握してないから戦争小説的なものが史実なのか、それをオマージュした架空戦記なのか、完全オリジナルなのかがイマイチよくわからんところだ。

 歴史を調べようかとも思ったんだが、一体何処から手をつけようか取っ掛かりがつかめなくて調べてないんだよなあ。

 そういや、『前世』の俺は歴史だとどの時代が好きで、何が理由でその時代を調べたっけか、学校の授業か漫画、ゲームからだったっけか。

 まあ、そうやって時間をある程度潰すのだが大抵すぐにやることがなくなって、明日も朝が早いしってことで早々に寝ることになる。

 さて、明日もさっさと配達終わらせて王都を見て回るかね。

 まだこの広い王都の一部しか見てないし、次はもちっと離れた所でも見に行くかなあ。










 

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