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今更だが自分の驚く基準がイマイチわからんが兎に角驚愕した。
そりゃ空ぶっ飛んで帰宅する村長様が居るぐらいだから、飛行機的なブツとかあるかもなーとは思ってたし、それならこんぐらい驚くなよって話なんだが。
でも正直予想してなかったわ鉄道とはね。
目的の場所に辿り着いて停車した牛車から、そのコンテナから外に出て鉄道を眺める。
いや、普通に線路ですわコレ、道床バラストっぽいものにレールにマクラギ、ガタンガタン音がしてたから遠目にはわからんが普通に継ぎ目もあるんだろうね。
なんか迎えに出てきた商人らしき人物と話し始めた村長を背に俺は線路を見ながらそんな事を考えていた。
いや、俺は鉄道オタクじゃあないからな?
そんな風に暫く線路を眺めていると後ろから声がかかる。
振り向くと村長と商人らしき人物が俺を見ていた。
どうやら俺が線路を眺めている間に荷物の積み下ろしと二人の会話は終わったらしい。
そして村長からその商人らしき人物を紹介された。
なんでもある時期、と言っても既にどのくらい前かも定かではないらしいが、昔から村の産物を一手に引き受けてくれている商家の方らしい。
色々とお世話になっているらしく、俺の各種手続きにも同行して下さるらしい。
なんかそこまでしてもらうのも悪い気が、と言ったらその商人さんから驚かれた。
何だこの反応と思えば、年齢のわりにしっかりしている上にそれ以上に『村』の人間なのに慎み深いとか言われ困惑しつつもどことなく納得。
村の面々はあれですよ、おおらかで人がいいがちょっと他人との距離感がね。
他人の子供に入れ込んで号泣するような人々ですしなんてーか、うん。
そんな面子と比べれば良く言えば慎み深い、悪く言えば異常に余所余所しく見えるわなそりゃ。
というか、他の村人達を知ってるのかと疑問に思えば、なんでも口座の開設やら住民登録のような行政的な手続きに村の面々もある程度の年齢になると一度は訪れてるから会ったことがあるらしい。
一度きたら大抵二度と来ないらしいが村長以外は。
というか、その手続きの殆どをこの方がやって下さっているらしい、っておい村長。
昔から、代々商いと面倒をおかけしているわけですね、そりゃさっきの一言だけでも俺が慎み深く見えるわ。
商人さんの乾いた笑いに非常に申し訳ない気分になるが、まあ村長に任せるよりは安心は出来そうである。
なんか明らかに苦労人オーラ出てるし、なんか長年の付き合いっぽいし、非常に人が好さそう。
どこぞの村人達と違ってズレてない、普通の感じの人の好さが苦労性とともに滲み出るこの雰囲気。
シンパシーカンジチャウナー。
いやあ、王都に行くなんて出不精の村の方々では初なんじゃないかとか言われたが、俺の本意じゃないんですがと言いたくなった。
なんでも行政手続きとかで一度来ると、その煩雑さ、と言っても手続きはほぼ商人の方任せ、にウンザリするのか誰もそれ以降は顔を出さないとか。
あの村の出で王都に行くだなんてどんな奇才かと思ったら~とか言われたが、今言いなおしたけど奇人って言いかけただろ。
つうか、なんだか『村』出身ってだけで問答無用のイロモノ認定な予感がする。
その懸念を伝えると驚愕の表情で村長に向かって常識とか教育できたんですね、っておい。
それを言われた村長、イロモノってなんだっけという暢気な返しが。
アンタって人は、ってかわかっててすっとぼけてないですかね村長。
その返しを受けてやっぱ駄目だコイツ、みたいな表情になり俺を見て戦慄の表情の商人さん。
まさかあの『村』でこんな常識的な、いや年齢に見合わぬ、いやいや天才か、いやいやマイナスにマイナスをかけると、とかブツブツ呟かないでくれますかね。
なんか違った意味でイロモノみたいな扱いになりそうで嫌なんですがそれは。
そんな話をしながら町の役場へと向かって、その後銀行に行ったわけだが、手続きは言われるがままに書類に名前とか書くだけで終わった。
正直、退屈すぎて説明されたがよく理解しきらなかった。
しかし、意外というかなんというか、書類上俺の出身はこの町になるらしい。
なんでも、あまりにも外れに、辺境にあるせいで行政区分的にこの町の一部扱い的な?
なんだそのいい加減なのは、実は福岡と鹿児島ぐらい離れてるけど同じ九州なんで九州人ってことで、みたいな、端と端で住んでるとこめっちゃ離れてるが道民は道民みたいなノリか、そうなのか?
役場置くには離れすぎ、辺鄙すぎでとても面倒なんでもう町の一部で処理しよう的なことが昔に決まったらしい?
こう、書類上町の番地に乗っているが、足を踏み入れたことはなく、それが何処にあるのか決まった当時の人はともかく既に今居る役場の人間で知ってる人間はいないんじゃないかな、と。
それ国も存在知らないって事じゃないですかねやだー、村としての名前すらないのはそういうわけですか。
税も町の人間として口座引き落としで収めてるから問題ないと、ああはいもうそれでいいですわかりました。
まあそこら辺の問題はもう正直そう言うもんかと思うしかない。
まだ税を納める年齢でもなし、考えても仕方ない。
そんなこんなで諸々の手続きを終えて宿、というか商人さんの邸宅へと案内された。
商いしてるだけあって立派な御宅で、ちと気後れしつつも提供された久々の上等な寝床にその日はすぐに眠りについた。
それから数日は町をその商人の人、気さくにおじさんでいいといわれたんで以後おじさんと呼ぶが、と村長の案内で色々見ながら過ごした。
当初は「先生」の手配した案内の人間が迎えに来て王都へ行く予定だと聞いていた。
その為の連絡先というか集合場所と言うか、をこの商家に、というかなんでも村の依頼で「先生」を招聘してくれたのがおじさんだったらしい。
まあ、別に「先生」と直接ツテがあったわけではなく、その手の関係機関、この場合医療機関だろうか、にただ依頼を出しただけとの事だったが。
ともかく、最初の予定はこの商家で合流後にその案内人と王都へ、だった。
しかし、村の面々のマイペースぶりをよく知るおじさんとしては、色々と予想外の事が起きて村の出立が、そうでなくとも町からの出立が遅れたりするのではないか、と考えた。
そこを鑑みて商いで用事もあることだし自分が王都まで俺を連れて行くので、迎えは必要ないと断りを入れたらしい。
あー、うん、凄く、妥当な判断だと思います。
村長、笑ってないでお礼を言いましょうや。
俺はなんとも気まずげな笑いを浮かべながら頭を下げる。
おじさんは村長を見て駄目だこいつ、みたいな表情を浮かべた後にそんな俺を見て苦笑い。
予定外の行動と言ったがそれには私の個人的なお節介も含まれているから気にするなと言ってくれた。
まあ、そのお節介も必要なかったようだけれど、と言って笑った。
何のことかと尋ねれば、村から初めて外に出たならある程度の外の事情、まあ歳も考えるとそこまでは求めずともある程度の外の『空気』といったものに慣れる時間が必要かと思ってね、とのこと。
大人だ、俺が最近接した中で実に全うな意味の大人がそこに居た。
感動している俺におじさんは、でもこれなら大丈夫そうだ本当に余計なお世話だったねと頭をかいた。
歳に似合わぬ知性だのなんだの言われても、村の面々の贔屓目かもしれないし、下手すると何かベクトルの違う天災的なのが来るんじゃないかと気を揉んだけど、そうじゃなくて本当によかったとかは出来れば本人の前で言わないで欲しかったが。
いやあ、慣れない王都生活で愛郷の念に駆られて、それで軍の秘匿新型兵装を強奪して村に飛んで帰るようなことはなさそうですね、って・・・。
あははは、何ですかねそのロボットアニメの主人公みたいなの、面白い冗談、って目が笑ってない、だと・・・。
それを聞いて爆笑している村長におじさんは向き直ると、昔なかった事になってますけが一度だけ王都に村の人が行ったらしいんですよね、って嫌な予感が。
当時、まだこの町に開通したばかりの鉄道路線、その数少ない王都直行便になんかうっかり乗車して行ってしまわれた方がいたらしい。
当時の商家の方々は慌てて後を追ったが、王都直行便は便数がなく遅れること数日、王都に着いて方々を探したが見つからない。
かなりの日数を捜索に費やし半ば諦めかけた頃、村の方角から探していた当人が町へと何故か走ってやって来た、っておい。
ちなみに、その村人を追って王都へ数日遅れで入った商家の人間によると、その時の王都では前の日の深夜に軍施設が集中する区画の方で爆発があったらしく色々と混乱があったらしいです、っておい。
村長、あんた笑いながら爆発かー怖いねー、じゃねーよ。
おじさん超笑顔で、件の村人さんは何故か今まで購入する事がなかった魔石燃料をそれ以降に買い求めるようになったようですね、っておいぃ!
何代か前の村長ゥ、またお前か!
コレどう考えても以前聞いた『炉』の時の話じゃねーか!
どうせ何かロクでもない経緯だろうとは思ってた、思ってたけれども。
これは想定外とかそういう次元の話じゃねーよ、洒落にもならんは何をやった言え!ってもうとっくにお亡くなりだよチクショウ!
おじさんのこの満面ながら一部引き攣った笑顔が怖い。
ってか、具体的に何を仕出かして何を持ち込んだかは把握してないけど、やらかしたのは確信していらっしゃるよコレ。
そして村長、薄々思ってたけどアンタ実は腹の中真っ黒なんじゃねえのか、未だに朗らかな笑顔で何考えてるか全然わからねー。
と言いますか、これ子供の居る前で話すことじゃあないよねと思ったんだが、思ったんだが。
まさか、これって、思いっきり釘刺されてる?
俺に対して変なことはすんなよって言外に釘刺されちゃってますゥ!?
あっはい、僕は今の話は子供だからよくわからないけど王都はなんか怖そうなんでオトナシクシテマスネー。




