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後日譚 第90話


 外は無法地帯といった感じだったが、建物の中は以前のような感じのままのように見えた。

 建物内は力のあるものが仕切っているようで、お店として成り立っているようで少し安心する。


「中は変わっていないな。それを確認できて安心した」

「外は無法地帯。中は変わらず、違法なものが高額な値段で取引されている状態ですね。確かに外を見てしまうと治安がよく見えますが、最悪の治安なままです」

「そうなんだよ! 見た目が整っているから重宝されている売り子の奴隷とかはまだいい。裏で働かされている奴隷の扱いは本当に酷い。というよりも、徐々に扱いが酷くなってきている!」


 確かにいい環境ではないが、荒れていたらもっと酷いことになっていただろうから安心してしまった。

 ただ、ブルースの話では、裏で働かされている奴隷もいるようだ。


 確かに売買を行っているのは見た目の良い女性の獣人ばかりで、男性の獣人は見当たらない。

 前回訪れた時は深くは考えなかったが、獣人にだって男性がいるのだから、男性の獣人の奴隷だっているはず。


 おそらく男性や見た目が良くない女性の獣人は、基本的に裏とやらで働かされているのだろう。

 その裏についてはよく分からないが、良い環境ではないことだけは分かる。


「その裏という場所はどうやったら見ることができるんだ?」

「基本的には王都とは別のところに集められているんだ! 闇市の地下でも少しは働かせているみたいだけど、闇市の方は見たことがない」

「奴隷たちが働かされている街が点在しておりまして、そこで作られたものがこの闇市に集まるんです。色々な街を経由されているため、追うのが非常に難しく未だに全容が掴めていないんですよ」

「この間、闇市まで届けてくる商人を尾行し続けて、その拠点の一つを見つけたんだけど……本当に酷い有様だった。思い出したくもないな」

「色々と闇が深すぎるな。その拠点は解放できたのか?」

「はい。解放はできましたが、一つ一つは小さい拠点ですので、助けられたのは僅か十人ほど。それに……助けた後、すぐに全員死んでしまいました」

「助けたのに死んだ? 襲われたとかか?」

「いえ。奴隷紋を刻まれておりまして、主人に歯向かったとして紋章が起動してしまったんです」


 なるほど。奴隷紋のせいで死んでしまったということか。

 聞いているだけで胸糞が悪くなるし、尾行して、突き止めて、助けたのにも関わらず、目の前で死なせてしまったアレクサンドラ達のやるせなさは計り知れないだろう。


「奴隷紋のせいでってことか。一つ気になったんだが……奴隷を管理していたのは『ザマギニクス』か『アンダーアイ』じゃなかったのか? そいつらが消えたら、奴隷は解放されるものだとばかり思っていた」

「それは俺らもだ。だから、実際に尾行して突き止めるという行為に出たんだからな」

「考えられるのは一つ。奴隷の持ち主と裏の組織は関係がなかったということですね」

「裏の組織と関係がない? それじゃ奴隷の持ち主は誰なんだ?」


 俺がそう聞くと、ここまで全てを答えてくれていたアレクサンドラとブルースは黙り込んでしまった。

 この様子を見るに、分からないのではなく、心当たりがあるけど口に出せないといった感じ。


「……ギルモアは何か知っているのか?」

「……何の確証もありませんが、貴族が絡んでいる可能性は非常に高いと思っています。それも有力貴族が絡んでいると思いますね」

「なんで確証がないのにそう思ったんだ?」

「裏の組織が絡んでいないとなった場合、単純に貴族が絡んでいないと奴隷の管理、購入できた説明がつかないからです。それから貴族が絡んでいると考えるなら、王都に闇市という無法地帯な場所がある違和感の説明もつきます。そして、これが一番の理由なのですが……この件に関して私たち三番隊しか動けていないのは、王国騎士団に上からの圧力がかかっているからという噂もあります」

「王国騎士団の上ってことは、王族も絡んでいるのか?」

「ギルモア、流石に確証もないことをペラペラと話し過ぎだ。クリスさん、申し訳ありません。全て噂レベルの話ですので真に受けないで頂けたら幸いです」


 アレクサンドラに話を遮られてしまったが、今ギルモアが話したことは全て噂話で片づけていい話ではないはず。

 有力貴族や王族が絡んでいるとしたら、色々と合点のいくことが多い。


 この惨状を表では善人ぶって偉そうにしている連中が行っているとしたら、反吐が出そうになってくる。

 先ほど、ギルモアが俺に裏組織のトップに立ってくれと進言してきたのは、王国騎士団すら信用できないという意図からだったのかもしれない。


「俺にはただの噂とは思えないな。とりあえず噂かどうかを調べたくなった」

「むむむ……。知ってしまったらそう言うと思っていましたが、クリスさん自身は大丈夫なのでしょうか? お忙しいということを言っておられましたが」

「もし貴族が暗躍しているのであれば、魔王よりも悪だからな。これ以上に優先することは俺の中でない」

「分かりました。そういうことでしたら、私達も情報集めをお手伝いさせて頂きます」


 俺に知られるのを嫌そうな反応を見せたため、もしかしたらアレクサンドラは俺にその情報を知られたくないのかと思っていたが、どうやら協力してくれる様子。

 手伝うと申し出てくれたことからも、単純にこれ以上俺を巻き込まないように配慮しようとしてくれただけのようだ。


 とりあえず、ここからの動きは定まった。

 貴族が絡んでいるのかを調べ、黒だった場合は……先ほどギルモアに進言された、裏の組織のトップを目指すということを、本格的に目指すことにしようと思う。

 もちろん、ラルフとヘスターに相談してからだけどな。



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