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反逆のMYTH【シーズン3】~表舞台じゃ誰も敵わない最強の力を妬まれるだけなので、死を偽装した懸賞金を元手に新天地で闇金や夜の店の経営者としてアウトローの道を極めます~  作者: 公月奏
星の落ちる先は~三太サイド・現実世界→異世界

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79. ☆「資格なき最強」

「背、伸びたな」


 窓に映る今の自分の姿を見る。元々リアルの俺の身長より断然高いが、今や190も超してそうだな。


「髪も、だいぶ」


 反面男のくせに無駄にキレイだった銀髪ロングはずいぶん傷んでおり、愛用の濃紺マントも所々ほつれなどのダメージが目立つ。

 あれから皆と、アンジュたちと別れてどれくらいになるのかな。そんなことを思いドアノブを握る。


(おい、あいつ【死超星】だぜ。仕事の達成率10割って凄腕の――常勝不敗、絶対無敵ってあの噂の)

(ここらじゃ最強の男か。しかも300万人にひとりの“氷使い”。――ひとつ雇ってみようかな、俺?)

(バカやめろ、信用を得て油断させ最後には仲間を皆殺し取り分は独占、やつの十八番なんだぞ!?)

(女がいれば散々なぶったあと闇市場へだと。マジであいつこそ討伐されるべき、散滅すべし魔物だ)


 店に入るなり無数の視線と無言の陰口が注がれる。聞こえなくても何を言われてるかは大体わかる。


「……ガチガチ」


 対面席の店主までこれだ。「おい……いらっしゃいませはどうしたンだよ。それとももう品切れかい」と思わず悪態が口をつく。


「ごっごっ、ご注文は――」

「キツいの、くれないか。すぐにでも酔いたいンだ」


 ルーシーのやつ一人称も“僕”じゃなくなり、言動が現実の俺に近くなったかな。

 そう、だいぶやさぐれた。そして人相もまた変わったな、とグラスに反射してる表情を再び見やる。

 よく言えば線の細いイケメン、悪く言えば柔和すぎる雰囲気にもかなり深い影が差したようだな――


(ケッ。早く消えろっての。酒が不味くなるぜ……)


 あんな恐ろしい魔物も倒せるほど強くなり、経験を積み自分の中から甘さの消えてるこの感じ、クールでとても格好よくもある。

 けどこれが俺の憧れた“強キャラ”なのか? いわれなき悪意をただこの背中で受けるのみだなんて。


「チッ、こんなトコで飲めっかよクソッタレが!!」

「おい、聞こえるぞ――!」

「ハッ、構うもんかよ!!」


 ……


「よォ、死超星!! 早くどっか消え失せろや!!」


 ……


「その強さ“魔族”なんじゃねェのか!! いい加減にしねえとオレらがテメェの討伐依頼出すぞ!!」


 ……


「いいか、したことのツケは必ず回収されんだ!! 今に滅ぶのはきっと、テメェの方だからな!!」


 別に変わりはない。何の力も才能もない弱者、陰キャとナメられてた男が強すぎる力を得、そのせいで現実じゃ彼女に振られた。

 一方的な理不尽や攻撃に晒されたり同じ目に遭うのなら知り合いのいない異世界の、このゲームの方がマシだ。そうに違いない。


「旦那、もう一杯もらおう」

「あの、お代は結構ですので。これで、お引取りを」

「……」

「どっ、どうかウチにはもう、来ないで――下さい」


 ――次に気づけば酒場を出た町外れ、森沿いの街道をふらりふらりと歩いてた。


「……ふう」


 何杯あおったか忘れたが不思議と意識は鮮明だ。現実でもストゼロを一気しても眠れない時もあるが、ストレスのせいだろうか。


「どうせ、当分は働かなくても食ってける。帰ろう」


 不意に独り言が漏れ出る。俺のものなのか、こいつの意思なのかはわからない。

 だけど、食うってどこで。死超星(バケモノ)に誰が、物を売ったり飯を出してくれるンだ。

 それに、帰るってどこに。死超星(おれたち)に安住の地なンてトコがあるって言うのかよ。


「行こう。もっと遠くへ、誰も俺を知らない場所へ」


 つぶやく口に水滴が入り込む。そうか、皆と離れてからずっと、お前も孤独だったんだな。俺と同じ、嫌われ者の日陰者同士か。

 そう、確かに最強にはなった。だが結局それには“資格”がなければ。強者というのは“他者を惹きつけられなければ”駄目なんだ。

 俺みたいな無気力の根暗が、こいつのように優しすぎる男が力を得ても押しつぶされ、周りからは妬みや恐怖を向けられるのみ。

 思えばルーシーの前に言ってたことはコレだったのかな。“分相応”の生き方を受け入れろってのは。

 でも今の俺はこうしてこっちに舞い戻る他ないんだ。なぜなら猫――


「いやっ、やめてぇっ!!」


 その時、絹を裂くような悲鳴がウジウジ悩む間を断ち斬った。声の響いた木々の間に視線を凝らす。


「へへへ、誰も来ねえよ!」


 女ひとりに、男数人が寄ってたかって髪や衣服をつかんでる。こっこれは――やべーぞレイプだ!!

 そしてあのポニーテールの小柄な女、見覚えがあるぞ。確かルーシーがデオッチェって呼んでたな。


「……」


 だが部隊はもう解散したし関係ない。それにあいつは俺を、ルーシーを化け物呼ばわりしたクソだ。

 そう、どうなろうが知ったこっちゃないんだ。ゆっくりと踵を返す。


「……くっ!!」


 しかし、しかと背中を向けたはずが一歩、また二歩三歩と後ずさる。

 ここで本ゲームお得意の現象再びの発生だ。思考する“俺”でなく、この“身体”の判断が優先される。


「デオッチェェェッッ!!」


 そうして勢いよく駆け出し暴漢たちの前に躍り出る。やれやれ、仲間だった者は見捨てられないってかよ。とんだお人好しだな。

 でも付き合うよ。何せ俺はお前で、お前は俺だから。ここまで来たら日陰者にして儚き星がふたつ、どこまでもともに在ろうぜ。

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