2話
酒場の中は当然というか、冒険者たちでごった返していた。
普通に食事したり、わいわいと騒いだり、真面目に作戦会議をしている人たちと様々。
そんな中であーしとゼルは適当に注文を済ませ、料理が出来上がるまでにお互いの事を話し合っていた。
「『スマホ』か、面白えアイテムだな。アカネが作ったのか?」
「作ったのは別の人。あーしは買っただけ」
「どこで売ってんだ?」
「えっと、日本っていう遠い国・・・かな」
「ほー」
ゼルが興味津々だったので、とりあえずあーしは『スマホ』『写真』『インスタ』についてざっくり説明した。
写真は、スマホに映った景色を保存する技術。
インスタは、その写真を世界中のみんなで共有できる技術。
スマホは、写真とインスタが出来るアイテム。
って感じで理解してもらった。
正解ではないけど、別に間違ってもないしいいよね。てゆーかスマホに関しては、全部説明できる人の方が少ないと思う。
「つまりアカネは、その『インスタ』で世界の絶景スポットの写真をみんなに届けたいと」
「まぁそんなとこかな」
「いいじゃねえか。魔物だらけのこの世界じゃ、絶景スポットなんざ一般人には無縁だからな。冒険者らしくていいと思うぜ」
「あっ、それなんだけどさ」
インスタの説明しててすっかり忘れてた。あーしも聞きたい事があるんだった。
「あーしも冒険者になったら、魔法とか使えるようになるの?」
ファンタジーの世界に来たんだし、あーしも派手な魔法とか色々使ってみたい。
火の魔法とか氷の魔法とか、とにかくインスタ映えしそうなやつ!
「さぁ?」
「えっ?」
予想外の返答に、一瞬時が止まる。
「えっ、冒険者になったらそういうのが使えるようになると思ってたんだけど・・・」
「いや、魔力なんざ生まれつき身についてるモンだろ。種族によっちゃガキの頃から使うヤツもいるし」
「・・・えっと、じゃあその、生まれつき使えない人とかは・・・」
「まぁ使えないだろうな」
そんな・・・・・・。
急降下していくあーしのテンション。
「一応聞くけど、冒険者になったら力が上がるとか・・・」
「ねえよ。そういうのは地道なトレーニングで身に着けるもんだ。・・・さっきから何言ってんだお前さん?」
言ってる意味が分からないと表情で訴えてくるゼル。
どうしよう。のっけからつまずいた。
これじゃ冒険者になった所で、スマホ持ってるただの一般人でしかない。
絶景スポットを巡ろうにも、魔物のエサになるのが目に見えてる。
こうなるともう地道に働いて護衛を雇うとかしかないのかなぁ
・・・それもう日本に居たころと大して変わんないし。むしろ出費増えてるし。
「はぁぁ・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
目に見えてテンションが下がったあーしをしげしげと眺めるゼル。
何か考え事でもしてるのか、時折フムフムと頷いている。なにさ。
「なぁアカネ。俺とパーティ組まないか?」
「・・・・・・えっ?」
またも予想外の返答。
「察するに、お前さん戦う力が無いんだろ?」
「そう・・・・・・だね」
まぁ鍛えれば剣とかで戦えるようにはなると思うけど、何年かかるか分からないし、それにもう何のためにこの世界に来たのか分かんなくなるし。
「なら、俺がアカネの代わりに戦ってやる」
「えっ!?」
思わず大声を出して飛び起きるあーし。集まる視線。恥ずかしい。
「嬉しいけど、何でそこまで・・・?」
「あァ、勘違いするな。もちろん対価は支払ってもらうぜ」
「対価って・・・?」
「なぁに簡単なことだ」
妙にもったいぶって喋るゼル。
なんだろう。まさか体で払えとかそういうのだったりしないよね。
唾を飲み、ドキドキとしながら待っていると、ようやくゼルの口がゆっくりと開いた。
「俺様の活躍を、そのインスタで広めてくれ」
「・・・・・・えっ?」
予想外三回目。
「えっと、そんなんでいいの?」
「何言ってんだ! それが一番重要・・・・・・って俺の目的をまだ言ってなかったな」
そう言うなり、ゼルはあーしを見下ろす高さまで浮かび上がると仁王立ちし、まるで決め台詞かのように大層なドヤ顔であーしに語った。
「俺様の目的は、この手で魔王をブチ殺す事だ! そして世界最強の武闘派魔法使いとして世界にその名を轟かせてみせる!」
「チンピラフェアリーが何か言ってるぜ」
「聞こえてんぞテメコラァ!」
野次を飛ばしてきた冒険者に野犬の如く噛みついていくゼル。
あー・・・なるほど、そういう事ね。
「・・・オホン! つまりだな、俺がアカネの分まで戦う代わりに」
「あーしがその戦いをインスタで広めればいい訳ね」
「話が早くて助かる」
「あーしはいいけど、ゼルは大丈夫なの?」
「問題ねえよ。世界最強を目指すんだ、女一人守れねえとなァ」
チンピラだなんだ言われてるけど、それ相応の頼もしさを見せてくれるゼル。
少なくとも儚い妖精のイメージは完全にすっ飛んでった。
「オッケー乗った。これからよろしくねゼル」
「決まりだな。メシ食い終わったら冒険者登録を済ませに行こうぜ」
そしてタイミングよく注文した料理が到着。
お皿代わりの大きな葉っぱに乗せられた、豚の特大スペアリブ。何これデカッ!?
三十センチくらいある巨大肉を前に、ゼルは豪快にかぶりつき、あーしは写真を撮りまくる。
いずれはこんなデカい豚も冒険で出会うことになるんだろうかと、あーしはフレームの中の料理を見つめながら考えていた。




