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 数日後。曇り空の日曜日。

「……じゃ、行ってきます」

「あ、ちょっと待ちなさい柚穂。これ」

 遊びに出かけるという柚穂に、瑞希は先日買っておいたものを手渡す。

「これは?」

「折り畳み傘。これなら持ち歩くのも手間じゃないし、突然降りだしても平気でしょ?」

 水色の生地に白い水玉模様の入った折り畳み傘。柚穂の好みというのもよくわからないために直感で選んだものだが、もしかしたら気に入らないだろうかと今になって不安を感じる。

「……ん」

 しかし柚穂は特に気にする様子もなくそれを鞄の中にしまい込む。気に入ってくれたかはわからないが、どうやら嫌ということもないらしい。これで今日は雨が降ってもビニール傘が増えずに済むだろう。

「……行ってきます」

「行ってらっしゃい。気をつけてね」

 柚穂を見送る瑞希はすっかり安心しきっていた。どうしてもっと早く折り畳み傘を買ってやることを思いつかなかったのだろうか。

「たかだか千五百円の出費であれを止められるのなら安いものよね」

 すっかり安心した瑞希はリビングに向かう。今日何の予定も無いのは、家族では瑞希一人だった。予報では雨が降るそうだしテレビでも見て過ごそう。そう思ってリモコンを手に取った。

 そんな昼間が過ぎ、夕方の四時頃になって柚穂は帰ってきた。ただいまの声を聞き、瑞希は玄関へ迎えに行く。

 ……そして、唖然とした。

「……なんでよ」

「? 瑞希、どうかした?」

 首をかしげながらしれっとそんなことを言う柚穂に一瞬怒鳴りそうになってしまうが、ぐっと堪える。わなわなと震える手で、柚穂の手の中にあるものを指さした。

「……どうしてビニール傘を持ってるのかしら、柚穂?」

 柚穂は、いつもの様に新しいビニール傘を持っていた。

「……だって、雨」

「だから雨はわかってるのよ。折り畳み傘はどうしたの?」

「……ん」

 鞄から、カバーを外した形跡すら見られない折り畳み傘を取り出される。忘れていたというわけでもないようだが。

「なんで……折り畳み傘、使ってくれないの?」

 問いかけると柚穂はちらりと右に視線を逸らし、少しの間考えこんでから答えた。

「……なんで?」

 訊かれても困る。

「せっかく折り畳み傘持ってるんだから、わざわざビニール傘なんか買ったらもったいないでしょ」

「でも……」

 柚穂は、おもむろに手に持っていた傘を指し示す。

「一本、百円」

 次に折り畳み傘を手にする。

「……千五百円」

「……で?」

「十五本分」

 どうやらあと十四本新しく増やすまではこっちのほうがお得だと言いたいらしい。

 なるほど十五本も新しいビニール傘を増やすだなんて普通なら考えづらいところだ。が、柚穂なら平然とやってのけかねない。それも数週間以内に。

「……着替えてくる」

「あ、柚穂!」

 止める間もなく、柚穂は自分の部屋へ向かっていってしまった。

「……模様が嫌いだったのかな」

 頬に手を当てて考えこんでしまう。それならそうと言えばいいのにと思わないでもない瑞希だったが、一方で柚穂が面と向かってそういうことを言うタイプではないというのもわかる気がした。

「もう三年になるのに……。私、知らないことばっかりだ」

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