↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/21

第五章:思いがけない訪問者

映画ノベライズ『もしも、僕の彼女が妖怪ハンターだったら。。。(おかわり)』第五章「思いがけない訪問者」をお届けします。

夜の林での死闘から一転、舞台は落ち着いた民家の和室へ。謎の追っ手から逃げ延びた市華を匿う大和たちですが、マイペースに動き回る付喪神のロレッタを市華から必死に隠そうとする、コミカルな攻防が繰り広げられます。

さらに料理担当だった四人目の仲間・翔太も合流。張り詰めた緊張感が一気にいつものドタバタ劇へと変わる、絶妙なテンポ感をお楽しみください。

夜の民家の中。落ち着いた和室のテーブルに、温かい湯気を立てるコーヒーカップがコトンと置かれた。

「はい」

七海がカップを差し出すと、まだ少し怯えた様子を残す市華が小さく頷く。

「ありがとう」

市華の隣には雛と七海が座り、彼女を労わっていた。そこへ、シャワーを浴び終えた大和が、首にかけたタオルで濡れた髪を拭きながら部屋に入ってくる。

「ふぅ。あの場所に変な人はいなかったし、さすがにここまで追ってはこないと思うよ」

大和がそう言って腰を下ろすと、七海が市華の顔を優しく覗き込んだ。

「大丈夫、怪我はない?」

雛も尋ねる。

「とりあえずここにいれば安心だと思う。一体誰に追われてるの?」

その時、雛の前のテーブルの上に置いてあるスタンドの明かりが消える。

犯人は、雛が大切にしている人形の付喪神・ロレッタだった。

普通の人間が自由に動き回る人形を見たら、きっと卒倒するに違いない。

慌てて、市華にロレッタのことが知られないように誤魔化そうとする三人。

七海は市華の気を逸らすように、矢継ぎ早に問いかけた。

「どこから来たの?家は近いの?追ってくるのは男?女?」

その間も、ロレッタは小さな紙飛行機を飛ばしたり、大和の膝をつついてみたりと、イタズラが止まらない。

「ストーカーかな?何かされた?」

七海も誤魔化すのに必死だ。

「名前は?」

大和まで前のめりになって問いかけると、市華は戸惑ったように視線を泳がせた。その様子にハッとした七海が、慌てて謝罪する。

「ごめんね、質問攻めで」

少し落ち着きを取り戻した市華は、ぽつりと口を開いた。

「私は、神大寺市華」

「私、山口七海」

「私は、謝花雛」

「僕は、稲田大和。みんな同じ大学の同級生で、今日はあの、友達の実家の、お留守番がてら四人で旅行に来てるってわけなんだけど。あ、その四人目はね、今キッチンで料理中」

大和の言葉に、市華は小さく頷いた。

「とりあえず警察に連絡しといたほうがいいと思う」

七海がそう提案した、まさにその時だった。

ピンポーン。

玄関のチャイムが鳴り響き、一同にピリッとした緊張が走る。

「はーい!」

キッチンの奥から、エプロン姿の西山翔太の呑気な声が聞こえた。

「どちら様?今開けますね!」

翔太がズカズカと玄関へと歩いていく。大和や七海、雛は慌てて「開けるな!」と必死のジェスチャーを送るが、翔太は全く気づかずにガラリと玄関の戸を開けてしまった。

しかし、そこに立っていたのは怪しい追っ手ではなかった。

「すみません。昼間、子供たちがこちらのお庭にサッカーボールを入れてしまったのですが、どなたもいらっしゃいませんでしたので、お庭を探させてもらってもよろしいでしょうか?」

落ち着いた声で話すのは、黒いバンダナを巻いた男性・葛城久音だった。

「あぁ、どうぞどうぞ」

と快諾する翔太。

そのやり取りを部屋の奥で聞いていた大和は、ホッと胸を撫で下ろして囁いた。

「違ったみたい。ストーカーじゃない」

それを聞き、雛が玄関の方へと顔を出す。

「あれ?葛城さんですよね?」

「あれ?謝花さん?どうしてここに?」

葛城も驚いたように目を丸くした。

「大学の同級生たちと旅行中。葛城さんこそ?」

「あぁ。僕は毎週ここで、ボランティアで子供たちに人形劇を見せたり、サッカーをしたりしてるんです。あ、ロレッタちゃんはどうですか?」

葛城の問いに、翔太が不思議そうな顔をする。

「ロレッタって誰?」

「あのね、雛ちゃんが大事にしてる人形」

大和が小声で教えると、雛は葛城に向かって微笑んだ。

「ありがとうございます。前よりも綺麗になったって喜んでるみたいですよ」

「そうですか。ロレッタちゃんは可愛いですからね。それはよかった。それではこれで失礼します」

葛城は丁寧にお辞儀をして、暗闇の中へと去っていった。戸が閉まり、部屋に戻ってきた翔太が雛に尋ねる。

「雛ちゃん、あの人誰?」

「あぁ、知り合いの人形師」

「へぇー。こんなところで会うなんて奇遇だね。雛ちゃんが人形好きなんて知らなかったよ。ロレッタちゃんって言うんだっけ?雛ちゃんの人形。よかったら今度僕にも見せてよ」

そう言いながら視線を巡らせた翔太は、見慣れない少女・市華の存在に気づいた。

「お?で、こっちも誰?」

「あぁ、この子は今誰かに追われて逃げ込んできて、僕たちが今匿ってる途中の、こう…」

大和が説明を濁すと、市華が自ら真っ直ぐに見つめて名乗った。

「神大寺市華です」

市華を見た瞬間、翔太の顔がパァッと明るくなった。

「あ、じゃあ今日ここに泊まっていけば!あぁ、俺、西山翔太」

「なんでそうなるかな」

七海が呆れ顔でツッコミを入れつつ、市華に確認する。

「市華ちゃんはそれでいい?」

「うん」

市華が頷くと、翔太は嬉しそうに身を乗り出した。

「それがいいよ。みんなでいた方が心強いし。大丈夫。僕が絶対に市華ちゃんを守るから」

翔太は市華の手を両手でしっかりと握りしめ、熱弁を振るう。

「ほら、手を取り合うも多少の縁って言うじゃない。きっとこれも何かの縁だよ」

その言葉を聞くや否や、七海が容赦なく翔太の手を市華から引き剥がした。

「それを言うなら、袖振り合うも多生の縁!」

「え?そうでしたっけ?」

キョトンとする翔太の顔を、七海が両手でガシッと掴んで強引に自分の方へ向けさせる。

「市華ちゃんのことじっと見てんじゃないわよ。真菜ちゃんに振られたからって、手出したらダメだからね!」

痛いところを突かれた翔太は、目をひん剥いて叫んだ。

「なんでそれ知ってんの!?」

――翔太の脳裏に、キャンプ場でのほろ苦い記憶がフラッシュバックする。

自然に囲まれたテーブルで、横並びになってカレーを食べていたあの時。無情にも立ち上がった真菜が、空になったお皿を差し出して言い放ったあの一言。

『おかわり!』


第五章「思いがけない訪問者」、いかがでしたでしょうか。

動くロレッタに翻弄される三人の慌てっぷりや、雛の知人である人形師・葛城との予期せぬ再会など、今後の鍵を握る要素とコメディが入り混じるエピソードでした。

そして何より、翔太の苦い失恋の記憶と共に蘇った真菜の「おかわり!」の一言。まさか本作のサブタイトルがこんな形で回収されるとは……と思わずクスリとしてしまう、映画本編でも印象的なシーンです。

市華が一晩泊まることになり、ますます賑やかになった一同。しかし、彼女を狙う危険な影が完全に消え去ったわけではありません。次章の展開もどうぞお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。