5中谷さんがやってきた
数分間、時間が止まっていたような気がする。中谷さんだと思われる美少女は、俺と後藤さんと徹君の顔を順に見ていた。しかし、俺は……俺たちは中谷さんに見惚れている場合ではない。
だって、あの破壊音の主は……目の前のこの子だと思われるのだ。命の危険を考えた方がいい、恐らく、この狭くはない閉鎖病棟で今一番危険なのは彼女だ。何故、俺の部屋を特定出来た?
「あの……名前、呼んだの俺だけど何で病室分かった、の?」
俺の声は震えていた。そんな俺の問いに、中谷さんは小悪魔的な笑顔で答える。
「足跡を辿っただけだよ」
足、跡……?ここは病棟内、よほど床か履物が汚れていない限り、見える足跡なんて残らないはずだ。それを、見えないそれを辿った……?この子、ただ者じゃない。俺の背筋は凍り始める。表情まで凍っていたのか、中谷さん(?)が笑う。
チクショー、可愛い。
「あはは、そんな怖がらないでよ。ただの冗談だから」
「本当はどうやって特定したの……?」
「片っ端から病室を訪ねて回るつもりだったの。一発で当たり引いちゃった」
さっきから無言の後藤さんと徹君は大丈夫だろうか。二人の顔を見てみると、引き攣った表情で中谷さん(?)を見つめたままだった。そんな二人の状態を無視して、中谷さん(?)は笑って自己紹介を始めた。
自由だ。この子、きっとどこまでも自由だ。




