6中谷さんがやってきた
「改めて、初めまして。私、中谷 智恵里です。好きな鳥はハシビロコウ、好きな色は暗褐色です。智恵里って呼び捨てにしてもいいし、ちーちゃんとかでもいいし、好きに呼んでください。タメ口、大歓迎です」
ニコッ。ハートが飛びそうなくらいの、極上の小悪魔スマイル。ちょっと変わってるけど、悪い子ではないのかな?俺にそんなことを考えさせる、中谷さんの自己紹介。……いや、中谷さんが可愛く自己紹介したからって中谷さんが危険じゃない証明にはなっていない。よく考えるんだ、俺。
「じゃあ、えっと……中谷さん、部屋で何してたの?すっっっごい音してたけど」
……俺がその質問をした瞬間、後藤さんと徹君の表情が固くなった。それはそうだ、俺だって出来ればあの破壊音の真相なんか知りたくはない。だが、聞かないことには中谷さんの危険性を計れない。今日、とことん勇敢な俺を褒めてくれ、誰でもいいから。
「あ、ごめんね、うるさかった?ちょっと入院の荷物多くて、必死で片付けてたの」
再び、中谷さんがニコッと笑う。荷物の、片付け。あの音の正体は色々と面倒な荷物の片付け。……信じられない。質問しようが何をしようが、俺はたぶん、中谷さんを安全な人間だと思えない。後藤さんも徹君もそうだろう。
「……中谷さん、あの音は正直、荷物の片付けじゃ済まされな、」
「あ、三人の名前も聞かせて?せっかくこうしてお話しているんだし!」
人の話を聞け。と、ツッコミそうになった。尋ねられたら答えるられるくらいの名前は持ち合わせているつもりだが、どうにも躊躇ってしまう。これは、俺と後藤さんと徹君が望んでいたような大事件に違いないのに、何故か嬉しくなかった。




