2 中谷さんの小さな図書館
俺もたまには漫画とか読もうかな。それとも、ライトノベルにするか。俺が悩んでいると、中谷さんに服の袖を引っ張られた。中谷さんの手には一冊の本。タイトルは「瞳の奥の虎」。文庫本っぽかった。
「それ、中谷さんのオススメ?」
「うん、展開とかめちゃくちゃだけど面白いよ」
「じゃあ、俺はそれ、借りようかな」
後藤さんも読みたい本を見つけたようだ。それを中谷さんに引っ張り出してもらい、後藤さんも本を手に持つ。さて、223の男三人は223に戻りますかね。逆はともかく、男が三人も女の子の病室に居るのはよろしくない。
が、中谷さんが俺の服の袖を握って放してくれない。
「中谷さん、俺、帰れないんだけど」
「嵐君は居残りー」
「え、」
俺、何かしましたっけ。そんな顔をしている俺に中谷さんが笑顔で言う。
「読み聞かせしてあげる。それ、小さい絵本なんだよ」
「読み聞かせ……」
子供の頃、母親に絵本の読み聞かせをしてもらったことはあるだろうか。父でもいい。俺は愛されて育ったのだろうか。そんな記憶すら記憶障害に喰われている俺にとっては、何ともくすぐったいというか、変な感じだ。
お言葉に甘えてみるかなぁ。何か、気恥ずかしいけど。
「じゃあ、僕と徹君は223に戻ってるから」
「変なことすんなよ、嵐ー」
徹君もニヤニヤしているけど、後藤さんもニヤニヤしている。変なことってなんだよ、変なことって。俺が中谷さんに手を出す勇気のある勇者だとでも思っているのか?俺にはそんな恐ろしいこと出来ねぇよ!




