11 ヘアピンdeアームカット
そして、夜が訪れる。いつものように四人で夕食を食べ、並んで歯を磨き、223の前で中谷さんと別れる。でも、中谷さんと俺、このあと呼び出し食らうんだよなー。院長、来たかな。って、あれ?中谷さんがUターンしてくる。
「どうしたんだよ」
「院長の診察が本気で怖いから一緒に居てほしい……」
「あぁ、まぁ、そうだよな」
それじゃ、廊下のソファにでも並んで座っておくか。後藤さんと徹君はニヤニヤしながら、二人だけで223へと入っていった。あのニヤニヤ、やめてほしい。俺と中谷さんはそんな仲じゃない。もっとピュアな関係だ。
……俺がやっていることにニヤニヤされる要素があるのは自覚しているが。
「ねぇ、嵐君。入院してどれくらいなの?」
不意に中谷さんにそう聞かれ、俺は指折り数えて答えた。
「記憶があるのは、三年前辺りから。それ以前のことは覚えてない」
「じゃあ、いつ今の状態になったのかもよく分からない?」
「うん、その通り。院長なら知ってると思うけど」
「そうだな、私なら知っている」
……出た。いや、おばけとかじゃないし失礼かとは思うが、出た。院長。いつもの白衣が暑そうに見えるくらい汗をかいている。まさか、自分で医学書を運んだのか?院長が?素手で?だとしたら凄いな。
「中谷さん、雨宮君、一緒に来たまえ」
「あ、はい。ほら、行くぞ、中谷さん」
「うー……」
中谷さんがまた泣きそうな顔をする。俺は慌てて頭を撫でる。子供か、こいつは……。
しかし、俺は俺でその面倒を見てしまう。どっちもどっちかな。




