8 ヘアピンdeアームカット
後藤さんが自分の鍵付きロッカーを漁る。223食料庫は後藤さんのロッカーの中に作られている。あれでもないこれでもない、と、どんどん出てくるお菓子やらジュースやら。
後藤さんの私物、ほんと少ないからなぁ。スペースを借りられて有り難い。俺のロッカーは無駄に多い衣類でいっぱいだし、徹君のロッカーはゲーム機とか漫画とかでいっぱいだし。223の食料庫を作ろう、と三人で決めた時に肝心のスペースに困って、後藤さんのロッカーが食料庫の第一候補に上がったのだ。
「あー、あったあった。結構、種類あるよー」
「あの、中谷さんもご一緒しちゃマズいッスかね……?」
俺が恐る恐る切り出すと、後藤さんはサラッとこう答えた。
「中谷さんはもう、223の準メンバーなんだしいいんじゃない?」
「俺もそう思う。もう、他人じゃねぇよなー」
徹君の「他人じゃない」という言葉を聞いた中谷さんが、再び泣き出す。動揺する後藤さんと徹君。俺は中谷さんの頭を軽く撫でる。もうこれ落ち着かせる時の定番になっちゃったな。
しかし、今日の中谷さんは本当によく泣く。これで今夜、院長に泣かされなきゃいいけど。あの人は女の涙に弱いとか、そういうことは一切無い人だから容赦なく腕の傷を咎めてくるだろう。
「な、中谷さん、チョコレートあげるから……」
「そ、そうそう!スパークリング・チョコレートとか変わり種もあるぜ!」
後藤さんと徹君が中谷さんにそう声を掛けると、中谷さんは更に激しく泣き出す。俺の身体にしがみついて。悪い気はしないし嫌でもないけど、ここまで激しく泣かれると……もう抱き締めるしかない。




