3 ヘアピンdeアームカット
俺は中谷さんからヘアピンを預かり、鍵の掛かるロッカーの一番奥に隠した。衣類の奥だ、ヘアピンの一本くらい平気で紛れさせることが出来る。さて、ナースステーションに行くか。
223を出て、中谷さんの手を引いて歩く。
「嵐君には迷惑掛けてばっかりだねー」
「もう慣れてきたよ、こういう日常にも」
でも、退屈を取り戻したくないわけじゃない。退屈を取り戻すには中谷さんが居なくなる、それが最低条件だが中谷さんの退院はずーっと先だろうと思う。ヘアピンで腕を切るとか、入院環境下でそれじゃ退院したらどうなることか。
ナースステーションのカウンターに、たまたま石見さんがいた。丁度良い、石見さんならK型の中谷さんをの自傷行為をよく理解してくれるだろうし、石見さんに対応してもらおう。
「石見さーん」
「あ、雨宮君。それに中谷さんも。どうしたんですか?」
「あー……俺は俺で用があって、中谷さんはまた別件で」
他の看護師さんが近くにいる時に、中谷さんが自傷行為しちゃったんですよーなんて気軽に言えない。どうせ夕方には申し送られるだろうけど、この場でゴチャゴチャあるのは中谷さんにとってはしんどいだろう。
一応、反省の色は見える。
「俺の方は長引くんで、中谷さんを先に……」
「どうしたの?中谷さん」
「……これ」
中谷さんが石見さんだけに見えるように左腕の生傷を見せた。石見さんは一瞬驚いたようだが、さすがK型の姪っ子さんを持っているだけある。特に騒いだり慌てたりするような様子もなく、石見さんは中谷さんを処置室に入れた。
俺は俺で中谷さんの傷の処置が終わるまでに、さっきのことをちょっと整理しておきたい。




