10 院長の患者たち
宮田さんはピッチに出て、心底嬉しそうな声を上げた。
「本当の本当に帰っていいんですかーっ!?」
どうやら、石見さんが病院に着いた、もしくは誰かが石見さんの穴埋めをしてくれたらしい。さすがに夜勤明けに検温をして回るのはしんどいだろう。宮田さんはぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでいる。いや、めっちゃ元気じゃん。
「と、そ・ん・な・わ・け・でー」
「お疲れ様、宮田さん」
「ちょっと最後まで言わせてよー!!そんなわけで!私、帰るねー!」
宮田さんが検温セット一式を持って223から飛び出して行った。本当に元気だな。……あれ?中谷さんもいない。いつの間に223を出た?まぁ、一時的にだが223は平和になった、かな。
後藤さんも徹君も俺も、検温と同じ時間帯に回ってくる朝の薬を待った。しかし、待てども待てども薬は来ない。そして、何だか隣りの病室──中谷さんの個室の方が騒がしい。野次馬根性が働き、俺は様子を見に行くことにした。
面白そうだと思ったのか、後藤さんも徹君も付いてくる。
「何かやったんスかね、中谷さん」
「彼女なら何でもやりかねないよ」
「だなぁ……って、朝の薬、中谷さんの部屋で止まってんじゃん」
中谷さんの病室の前には、既に数人の患者が集まっていた。さっき223を飛び出して行った宮田さんの姿もある。俺は宮田さんに声を掛けてみることにした。下手に人の病室を覗き込んだら強制的に病室に戻されそうだ。




