4カウンセリングはお嫌いですか?
院長が俺の目の前のソファに座る。日野さんはその隣りに。
「……いつでもいいッスよ、院長先生」
「……雨宮君、君にはお姉さんが居る。覚えているかね」
「……全く。俺の入院費を払ってるのも誰か知りませんもん」
「お姉さんの名前は、歩鳥さんという」
……俺の姉、歩鳥。……白い肌に刻み込まれた赤と白。急に視界が暗転した。
「姉さん、また切ったの……?」
俺にはたった一人の家族で、世界の全てだった姉の姿が視えていた。姉はいつも、俺が全てだと言ってくれた。でも、自傷行為での生傷が絶えない人だった。俺はそんな姉が、歩鳥がたまに怖かった。──歩鳥も、両親と同じで俺を置いて死んでしまうんじゃないか、って。だから、だから、
「姉さん……?」
無駄に広い和室のリビングのテーブルに置かれた一通の手紙を、歩鳥の遺書を、俺は永久に忘れない。忘れても、忘れても、忘れることはない。急に、何も視えなくなった。
「姉さん、……姉さんっ!!」
「雨宮さん、歩鳥さんはご存命です。落ち着いて」
「姉さんが、姉さんが死んじゃう!俺のことを置いて、遠くへ、」
「雨宮さん、この前、歩鳥さんとお会いしましたよね?」
……今、見えているものが記憶なのか現実なのか、分からない。聴こえてくる声が記憶なのか現実なのか、分からない。ただ、俺は絶望的な気持ちになっていた。歩鳥の遺書は、あまりにも綺麗な字で長々と書かれていた。それをよく、覚えている。覚えている?俺が歩鳥のことを、姉さんのことを、覚えている……?




