3 院長の患者たち
223を出て廊下を歩きながら、俺は後藤さんと徹君に言った。俺と中谷さんとは別の席で食事をしていい、と。しかし、そこは情に厚い後藤さんと徹君、きっぱりと断られた。俺一人を犠牲にはしない、と。男同士の友情や仲間意識は素晴らしく美しい。
「嵐君、僕の息子はきっと明日も元気さ」
「俺の息子だって、午後には元気だぜ!」
朝から息子、息子、と連呼しているがこの男同士でのやり取りは美しいはずだ、絶対いやたぶんいやきっと。そんなこんなで復活した後藤さんと徹君と一緒に食堂へ辿り着いた俺は、既に配膳が始まっていたので早足で配膳車に向かった。
今日の朝食は、病院では普通出ないであろうベーコンエッグ。ご飯大盛りの患者はプラスで納豆。納豆好きな俺としては納豆を食べたいところなのだが、大盛りのご飯を食べ切れる自信は無かった。ご飯大盛りの徹君は育ち盛りだからなぁ。
「おーい!嵐君、後藤さん、徹君ーっ!」
「そんな大声出さなくても聞こえてるよ、中谷さん……みんな、見てる」
俺たちは周囲の患者たちから注目されながら、中谷さんが陣取った昨日と同じ席に昨日と同じように座った。今日、なーんか憂鬱だなぁ、と思いながら。何でだっけ。また忘れてる。困ったもんだ。
と、俺が少し沈んだ顔をすると中谷さんがいち早く気付いてくれた。
「あれ?嵐君、元気ないね。診察日だから?」
「……あーっ!!」
今度は俺が大声を出してしまった。でも、それも仕方ない気がする。そう、今日は院長の診察日だった。定期的とも不定期とも言えない、院長から圧を掛けられる憂鬱な日。そっか、俺が忘れていた憂鬱のタネはそれか。
一気にジューシー感のあるベーコンが不味く感じられてきた。




