11 続・中谷さんがやってきた
「それじゃ、俺はもう寝るわ」
そう言って、まだ消灯までたっぷり二時間はあるのだが徹君は寝に入った。俺と後藤さんは徹君におやすみを言い、小声で会話を始めた。いつも消灯時間に寝る俺と後藤さんは徹君の安眠妨害にならない程度に毎日こうして小声で会話をしていた。基本的に疲れている時の徹君の眠りは深いが、今日は昼寝の時は眠りが浅かったし注意を払いながらになる。
「平和だねぇ、嵐君」
「そうッスねぇ、今は平和ッスねぇ」
「平和の反対言葉ってなんだろうねぇ」
「危険、じゃないッスか?」
「じゃあ、退屈の反対言葉は?」
「……忙しい?」
「忙しくもないのに退屈じゃないのは、どうしたものかねぇ」
「退屈に戻りたいッスよね……」
今はもう悪い意味で退屈じゃない。俺はそう言葉を続けた。別に、充実しているから退屈じゃないということでもないし。刺激は少しだから気持ちが良い、度の過ぎた刺激は害にしかならない。中谷さんは明らかに度の過ぎた刺激をしてくるだろう、と寝る前の薬で少しぼーっとしてきた頭で考えた。
後藤さんは呟いた。K型性精神疾患様症状……と。
「普通の可愛い女の子に見えるんだけど、それだけに苦労してきただろうね、彼女」
「今のところ、性格が悪くてどうの、ってわけじゃないですしね」
「まぁ、変わってはいるけど夜中に破壊音を出すようなことはしなさそうだし」
「意外と無害なんスかね」
「無害と有害は紙一重だよ、嵐君」
そう、そうだよな。何でもかんでも表の裏には別のものが潜んでいる。その潜んでいるものは、大抵がろくなものじゃない。今日、変な悪夢を見たりしなきゃいいな。俺は後藤さんのように繊細なつもりはないんだけど、よく悪夢を見るのだ。さて、明日からどうなることやら。この晩、俺はいつもより早く寝付いた。疲れていたんだろう、な。




