攻略記録その1 ラスボス前の街、はじまりの街に宣戦布告する
《終焉都市ヴァルハラ》。
その名を聞けば、大抵の冒険者は二種類の反応をする。
ひとつは、
「いつか行ってみたい」
もうひとつは、
「まだ行きたくない」
後者の方が圧倒的に多い。
理由は簡単だった。
ヴァルハラの北門から、
魔王城まで――徒歩十五分。
近い。
あまりにも近い。
天気がいい日には、城壁の上から魔王城の尖塔まで見える。
そして、もっと天気がいい日には、
魔王も見える。
「今日もいるな」
城壁の兵士が遠眼鏡を覗いた。
「どこだ?」
「東塔のベランダ」
「ああ。本当だ」
「洗濯物干してる」
「魔王も洗濯するんだな」
「そりゃするだろ」
そんな会話が日常的に交わされる街。
それがヴァルハラだった。
―――
「第三城門前、黒竜三体!」
「討伐完了!」
「西街道に魔王軍の斥候!」
「捕縛しました!」
「北門にS級魔獣!」
「何体だ!」
「一体です!」
「一体なら新人に回せ!」
「了解!」
朝八時。
ヴァルハラ市庁舎では、今日もごく普通の報告が飛び交っていた。
この街では、
剣を握れるだけでは一人前とは呼ばれない。
竜を見ても走って逃げない。
悪魔を見ても腰を抜かさない。
アンデッドの群れを見ても、
「今日は多いな」
くらいで済ませる。
そこまでできて、ようやく普通の市民である。
武器屋の店主は元・竜騎士。
宿屋の女将は元・宮廷魔術師。
パン屋の主人は昔、魔王軍の将軍をフランスパンで殴り倒したという。
本人は、
「剣を取りに戻る暇がなかった」
と説明している。
そして。
そんな街を治めている男がいた。
「市長」
「なんだ」
「お手紙です」
ヴァルハラ市長。
ガルド・バルバロッサ。
六十二歳。
身長百九十二センチ。
右頬から顎にかけて三本の傷。
左目には黒い眼帯。
かつて《獄炎将軍》と呼ばれ、魔王軍との戦争を二十年以上生き抜いた歴戦の軍人だった。
現在の仕事は市長。
ただし本人を含め、市民の大半がまだ軍人時代の感覚を引きずっている。
「誰からだ」
「《はじまりの街リスタ》の町長、ポポル様です」
ガルドの手が止まった。
「リスタ?」
「はい」
名前くらいは知っている。
これから冒険を始める若者が集まる、小さな街。
周辺にいる魔物は、
スライム。
ゴブリン。
野犬。
運が悪いとオーク。
ヴァルハラ市民に説明すると、
「それは魔物なのか?」
と聞き返される程度の生物しかいない。
少し前まで、ヴァルハラとリスタの間には険しい山脈があり、直接行き来することはできなかった。
ところが先月。
大規模な地滑りによって谷が開け、新しい街道が完成した。
これにより、
世界でもっとも冒険の終盤に位置する街と、
世界でもっとも冒険の序盤に位置する街が、
直接つながってしまった。
双方の行政にとっても、交流は避けられない。
「内容は?」
「友好関係を築きたい、というご挨拶のようです」
「ほう」
ガルドは少し機嫌を良くした。
戦争ばかりしているように見えるが、市長である。
交易も必要。
人の往来も必要。
税収はもっと必要。
「読め」
「よろしいのですか?」
「ああ」
秘書官は封筒を開いた。
白い便箋。
右下には、小さな花の絵。
ヴァルハラの公文書では絶対に見ない形式だった。
秘書官が読み上げる。
「親愛なるヴァルハラ市長、ガルド・バルバロッサ様へ」
「うむ」
「このたび新しい街道が開通し、ヴァルハラの皆様と交流できるようになりましたことを、心より嬉しく思います」
「まともだな」
「はい」
「続けろ」
「リスタは、これから冒険を始める若者たちを応援する街です。歴戦の皆様から学ばせていただけることも多いと思っております」
ガルドは満足そうに頷いた。
「分かっているではないか」
「私もそう思います」
「よい町長だ」
「はい」
ここまでは。
秘書官が次の行を読んだ。
「ひとつだけ、以前から気になっていたことがございます」
ガルドの眉がわずかに動いた。
「《終焉都市ヴァルハラ》というお名前は、とても格好良いのですが――」
「うむ」
「初心者の方には、少し怖いのではないでしょうか」
沈黙。
秘書官が止まった。
ガルドが言う。
「続けろ」
「はい」
「なぜ止まった」
「この先に……資料が添付されています」
「資料?」
封筒を逆さにする。
ぱらぱら。
数枚の紙が机に落ちた。
一番上。
大きく、丸い文字で書かれている。
《初心者冒険者百人に聞きました!》
その下。
《ヴァルハラって、どんなところ?》
ガルドが黙った。
「……読め」
「はい」
秘書官は一枚目を持ち上げる。
「質問一」
「うむ」
「《終焉都市ヴァルハラと聞いて、行ってみたいと思いますか?》」
「当然だ」
「結果です」
秘書官が一瞬ためらった。
「『はい』三名」
「…………」
ガルドは聞き返した。
「何名中だ」
「百名です」
「残り九十七名は?」
秘書官が紙を見る。
「『まだ死にたくない』七十二名」
ガルドの頬が引きつった。
「残り二十五」
「『名前を聞いたところで帰った』」
ミシッ。
机が鳴った。
「次だ」
「質問二。《終焉都市という呼び名をどう思いますか?》」
「うむ」
「『格好いい』九名」
「そうだろう」
ガルドの機嫌がほんの少し戻る。
「『怖い』三十一名」
「まあ……分からなくもない」
「『呪われていそう』二十六名」
「呪われておらん」
「西区画は一部呪われています」
「今は関係ない」
「失礼しました」
秘書官が続ける。
「『入った瞬間、ものすごく強い魔物が出そう』十八名」
「出ることはある」
「ありますね」
「しかし毎日ではない」
「週四くらいです」
「十分安全だ」
秘書官は最後を見る。
「残り十六名」
「なんだ」
「『死ぬ前に遺書を書いてから行きたい』」
バキッ。
机の端が割れた。
「次だ」
「はい」
秘書官は二枚目を持ち上げる。
「ポポル町長からです」
「読め」
「『皆様の街が本当は素晴らしい場所なのに、名前だけで怖がられてしまうのは大変もったいないと思いました』」
「……ほう」
悪意はない。
むしろ褒めている。
「そこで――」
嫌な予感がした。
「初心者の皆さんに、親しみやすい愛称を募集してみました」
ガルドの左眉が上がった。
「愛称?」
「はい」
「我が街の?」
「はい」
「誰の許可で?」
「おそらく善意です」
「善意は許可証ではない」
もっともだった。
秘書官が紙を見る。
「応募総数、八十七件」
「そんなに集めるな」
「上位三案をご紹介します」
「紹介するな」
「第三位」
ガルドは無言。
「《ドキドキ魔王城前タウン》」
ミシッ。
「…………」
「市長?」
「次だ」
「第二位」
「言え」
「《がんばれ冒険者村》」
バキッ。
机のもう一方の端も落ちた。
「村」
ガルドが呟いた。
「人口十二万の我が都市を」
「はい」
「村」
「応募者は街の規模を知らなかったのかと」
「知らぬ者に名前を付けさせるな」
正論だった。
「そして第一位」
秘書官が止まった。
「なぜ止まる」
「市長」
「読め」
「ですが」
「読め」
「……承知しました」
秘書官は姿勢を正した。
「得票数四十二票」
ガルドの眼帯の下までぴくりと動いた。
「《わくわく冒険タウン》」
静寂。
市長室から音が消えた。
窓の外。
遠くで竜が吠えている。
ドオォォォォン。
どこかで爆発も起きた。
しかし。
室内の方が怖かった。
「…………」
「…………」
ガルドはゆっくり口を開いた。
「秘書官」
「はい」
「我が街の正式名称を言え」
「終焉都市ヴァルハラです」
「由来は」
「三百年前、魔王軍十万の包囲を受けながら七日七晩城門を守り抜いた初代市民たちが、『ここが人類最後の砦となろうとも戦い抜く』と誓ったことから」
「そうだ」
ガルドは震える手で紙を持ち上げる。
「三百年」
「はい」
「幾千の兵が死に」
「はい」
「幾万の市民が血を流し」
「はい」
「それでも守り抜いた名が」
「はい」
「わくわく」
秘書官が顔を伏せる。
「冒険」
「はい」
「タウン」
「……はい」
ガルドは天井を見上げた。
一度。
深く息を吸う。
そして吐く。
「まあよい」
秘書官が顔を上げた。
「市長?」
「初心者の子供じみた思いつきだ」
「その通りです」
「知らぬ者が好き勝手言うこともある」
「おお」
秘書官の顔が明るくなる。
思ったより冷静だった。
さすが市長。
かつて大軍を率いた人物だけある。
「ポポル町長も悪意があったわけではあるまい」
「その通りです!」
「今回は不問とする」
「賢明なご判断です!」
秘書官は胸を撫で下ろした。
そして、
最後の一文に気づいた。
「あ」
「なんだ」
「まだ続きがあります」
「読め」
「はい」
秘書官は読んだ。
「『第一位の名前がとても好評でしたので――』」
ガルドが固まる。
「……ので?」
「『試しに観光案内用の看板を一枚作ってみました』」
ガルドの目が細くなる。
「看板?」
「はい」
「どこにある」
「『街道開通のお祝いとして、近日中にヴァルハラへお送りします』」
沈黙。
「…………」
「…………」
「つまり」
ガルドが立ち上がった。
「我が街に」
「はい」
「《わくわく冒険タウン》と書いた看板を」
「はい」
「送りつけてくる、と」
「贈呈だと思います」
「敵性物資だ」
「看板です」
「国境を越えて侵入してくる」
「配送です」
「都市の名称を書き換えようとしている」
「観光案内です」
ガルドの拳が震えた。
「秘書官」
「はい」
「軍議を開く」
「市政会議ですよね?」
「軍議だ」
「なぜです!?」
ガルドは手紙を握り締めた。
「戦争だからだ」
「看板です!!」
―――
三十分後。
ヴァルハラ市庁舎。
第一会議室。
緊急会議が開かれた。
議題。
《対リスタ問題》
出席者。
市長ガルド。
副市長ローデン。
防衛局長ハインツ。
財務局長セシリア。
商工会代表ベルン。
冒険者ギルド支部長ダリオ。
そして秘書官。
机の中央には例の手紙が置かれている。
誰も触れない。
触ると市長が爆発しそうだからである。
副市長ローデンが咳払いした。
「では、まず状況を整理します」
「必要ない」
ガルドが言う。
「宣戦布告する」
「必要です」
「わくわく冒険タウンだぞ」
「知っています」
「貴様は何とも思わんのか」
「私は」
副市長は少し考えた。
「響きだけなら、悪くないかと」
ガルドが立ち上がった。
「貴様!」
「だから正式名称にしろとは言っていません!」
防衛局長ハインツが手を挙げる。
「市長。仮に軍事衝突となった場合ですが」
「うむ」
「リスタの守備兵力について調査済みです」
副市長が額を押さえた。
「なぜもう調べている」
「新街道開通時の安全調査です」
「何人いる」
ガルドが聞く。
「常備兵、二十八名」
「少ないな」
「冒険者を含めれば百名ほど」
「ならばこちらは何人必要だ」
ハインツは少し考えた。
「五人」
会議室が静まり返った。
「五人?」
「念のためです」
「三人では?」
「不測の事態もありますので」
「なるほど」
副市長が机を叩いた。
「なるほどではありません!」
商工会代表ベルンが手を挙げた。
「市長」
「なんだ」
「名称問題とは別に、リスタについてご報告があります」
「言え」
資料が配られる。
ベルンは一枚目を指した。
《リスタ産・傷薬草》
販売価格。
八ゴールド。
次。
《ヴァルハラ産・高濃度治癒薬》
四千八百ゴールド。
ガルドが資料を見る。
「比較対象がおかしくないか」
「当然、性能はまったく違います」
「なら問題ないだろう」
「ところが」
ベルンが別紙を出す。
《市民アンケート》
『指を切った程度なら八ゴールドの薬草でよくない?』
沈黙。
「……まあ」
ガルドが言う。
「指を切っただけで高濃度治癒薬を飲む必要はない」
財務局長が口を挟む。
「これまで皆さん飲んでいました」
「なぜだ」
「街にそれしかなかったので」
「なるほど」
「さらに」
ベルンが続ける。
《リスタ製・旅人の短剣》
九十ゴールド。
《ヴァルハラ製・竜牙鋼短剣》
二万八千ゴールド。
「市民の声です」
ベルンが読む。
「『パンを切るだけなら九十ゴールドで十分では?』」
ガルドが机を叩いた。
「竜牙鋼でパンを切っていたのか!?」
「今まで普通でした」
「刃こぼれしないので」
冒険者ギルド支部長も頷く。
「肉もよく切れます」
「そういう問題ではない!」
ようやくガルドがまともなことを言った。
ベルンがさらに紙をめくる。
「リスタの商品が入ってから、一部の市民の購買行動が変わり始めています」
「悪いことなのか?」
「必ずしも」
ベルンは答えた。
「ただし、価格差が大きすぎます」
ヴァルハラの商品は、
魔王軍との戦争を前提に作られている。
剣。
悪魔の骨を断つ。
鎧。
竜の爪に耐える。
薬。
内臓が一つや二つ潰れても戦える。
当然、高い。
一方。
リスタの商品。
剣。
ゴブリンが倒せる。
鎧。
スライムの体当たりに耐えられる。
薬草。
転んで擦りむいた膝が少し楽になる。
その代わり、
安い。
圧倒的に安い。
ベルンは言う。
「このまま無制限に商品が流入すれば、一部の生活用品についてはヴァルハラ商人への影響が出ます」
「なるほど」
副市長が頷く。
「これはリスタ側と協議すべきでしょう。関税、流通量、商品区分――」
「分かった」
ガルドが腕を組んだ。
「つまり奴らは」
嫌な予感がした。
「安価な商品で我が街の市場を侵略し」
「していません」
「歴史ある都市名を笑いものにし」
「笑っていません」
「最後には看板を送りつけ、都市名そのものを書き換える」
「書き換えません」
ガルドが立ち上がった。
「やはり戦争だ!」
「なぜ全部そちらにまとめるんですか!!」
―――
その頃。
《はじまりの街リスタ》。
人口三千二百人。
名物。
薬草パン。
近隣の危険生物。
スライム。
たまにゴブリン。
そして町の中央には、
巨大な看板が立っている。
《冒険者のみんな! あせらず、ゆっくり強くなろう!》
平和だった。
恐ろしいほど平和だった。
その町役場。
裏庭。
「ふんふんふーん」
ポポル町長が花に水をやっていた。
五十八歳。
小太り。
丸眼鏡。
趣味は園芸。
最近もっとも頭を悩ませている問題は、
裏庭に住みついたスライムが花壇の水を飲むことだった。
「こらこら」
ぷるん。
「それはお花のお水だよ」
ぷるん。
「仕方ないなあ」
ポポルは小皿に水を入れてやった。
そこへ役場職員の少女、ミミがやってくる。
「町長」
「なんだい?」
「ヴァルハラに送ったお手紙、もう届いたでしょうか?」
「今日くらいじゃないかな」
ポポルは嬉しそうに笑った。
「仲良くなれるといいねえ」
「そうですね」
「向こうはとても強い人たちが住んでいるんだろう?」
「竜とか倒すみたいです」
「すごいねえ」
ポポルは感心した。
「うちの警備隊長なんて、去年オーク一匹に追いかけられて屋根に登ったのに」
「言わないであげてください」
「でも名前はちょっと怖いよね」
「終焉都市ですもんね」
「若い子が怖がるのも分かるよ」
ポポルはにこにこ笑う。
「《わくわく冒険タウン》、気に入ってくれるといいんだけど」
「一位でしたからね」
「四十二票も入ったからねえ」
「看板もかわいくできましたし」
二人の視線の先。
庭の端には、
大きな木製看板。
青空。
虹。
笑顔のスライム。
楽しそうに剣を持つ冒険者。
中央には、
大きな文字。
《ようこそ! わくわく冒険タウン・ヴァルハラへ!》
ポポルは満足そうに頷いた。
「明日には送ってあげよう」
「きっと喜びますよ」
「うんうん」
その時。
遠くから馬の蹄の音が聞こえた。
ダダダダダダダ――!
役場の前で止まる。
数秒後。
バン!
扉が開いた。
黒い甲冑。
大剣。
顔に傷。
どう見ても、この役場に似合わない男が立っている。
「リスタ町長、ポポル殿!」
ポポルが振り返る。
「はい?」
「終焉都市ヴァルハラ市長、ガルド・バルバロッサ閣下より正式文書を預かっている!」
ポポルの顔が明るくなった。
「おお!」
ミミも笑顔になる。
「もうお返事が来たんですね!」
「早いなあ」
「きっと喜んでくれたんですよ!」
「そうだねえ」
黒騎士は何とも言えない顔をした。
「……こちらを」
差し出されたのは、
黒い筒に収められた文書。
ポポルが受け取る。
「重いね」
「正式文書です」
「立派だなあ」
封を開ける。
紙を広げる。
読む。
「…………」
止まった。
ミミが横から覗く。
「なんて書いてあります?」
「…………」
「町長?」
ポポルは眼鏡を外した。
布で拭く。
かけ直す。
もう一度読む。
そして黒騎士を見る。
「これ」
「はい」
「《宣戦布告》って書いてあるんだけど」
「はい」
「友好都市のお返事じゃなくて?」
「宣戦布告です」
ポポルは困った顔をした。
「何か失礼なことをしたかな?」
「しました」
「どこだろう」
黒騎士は一言で答えた。
「わくわく冒険タウンです」
「…………」
ポポルはミミを見る。
ミミもポポルを見る。
二人はもう一度、
庭の看板を見る。
虹。
青空。
笑顔のスライム。
《ようこそ! わくわく冒険タウン・ヴァルハラへ!》
ポポルが恐る恐る聞いた。
「もしかして」
「はい」
「気に入らなかった?」
黒騎士は力強く答えた。
「ものすごく」
ポポルはしばらく考えた。
そして言った。
「じゃあ」
「はい」
「《ドキドキ魔王城前タウン》の方だったかな」
「第二次宣戦布告になります」
「そうかあ」
こうして。
魔王討伐目前の世界で。
魔王とはまったく関係のない戦争が始まった。
《終焉都市ヴァルハラ》。
対。
《はじまりの街リスタ》。
推定戦力差。
約二千倍。
なお。
リスタ町役場ではこの時点でも、
「話し合えば分かってもらえるだろう」
という意見が多数派だった。
ヴァルハラ市庁舎では、
「こちらの誇りを理解させる」
という意見が多数派だった。
両者とも、
相手を滅ぼす気はない。
そこだけは幸運だった。
問題は。
どちらの街にも、
相手の常識を理解できる人間が、
一人もいなかったことである。
そして翌朝。
リスタは戦争に備え、
町中の冒険者を招集する。
総勢――四十三名。
そのうち十五名が、
昨日冒険者になったばかりだった。




