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第22話 番外編 男装の令嬢の片恋。

私が拾ってきて育てたスー。


小さかったからいつも抱っこして寝ていた。時々、うなされてた。

そんな夜は、ずっと頭を撫でてあげた。


ご飯をせっせと食べさせて、剣術も勉強も教え込んだ。

いつの間にか、背が並ぶぐらいになった。男の子の成長は早いわね。

年の離れた兄しかいなかったから、私は新しく出来た弟が嬉しかった。

父も母も微笑ましく見ていてくれた。


10歳になるころ、同じベッドに寝るのを禁じられて、スーに使用人部屋があてがわれた。さんざん反対したが、覆されなかった。

それでも、いつも一緒にいた。お勉強の時間も後ろに控えた。社交の勉強も。

夜はこっそり、二人で習ったばかりのダンスを踊った。


貴族用の学院の中等部に入学する年になって、私は寮に入るように言われた。

スーは、やはり全寮制の騎士養成学校に放り込まれた。


今ならわかる。

父は私とスーの距離が近すぎると思ったんだろう。

大公家の娘と孤児。

交じり合う未来はない。


中等部はそれなりに楽しかった。仲のいい友達もできた。

妄想小説を書く友人の作品をみんなで回し読みした。


王女と騎士の恋物語。ドラゴンを倒した褒賞に姫との結婚…。

夢よね。現実的じゃないわ。


友人もさすがに、王子と平民の娘の恋は否定したじゃない。

あり得ないわ。妄想小説家にも否定される現実よね。


高等部に入ると、友人たちの婚約が決まる。

ろくに知らない10歳上の男だったり、家の保証人だったり。

・・・結婚したらその人と、一生一緒にいるのよ?それでいいの?


秘密裏に王太子の婚約者の予備になっていたらしい私は今まで婚約者がいなかった。

高等部に上がったとたん、山のように縁談が来ているらしい。


「結婚はしません。私はお父様のお持ちのエクルーズ商会のフラル支店に行きますから。」

そう宣言して、猛勉強した。高等部を1年でスキップして、アカデミアに進む。経営学を専攻して、備えた。

アカデミアは侍女や護衛を連れていけるので、スーを呼び戻してアカデミアに通った。スーは、すっかり大きくなっていた。子供らしさが抜けて、がっつりと筋肉が付いて戻ってきた。でも、スーはスーだった。


小さい頃からフラルにある支店に父にくっついて出掛けていた。アカデミアの2年間は長い休みはフラルに出かけていた。私はフラルが好きだ。


フラルは…見知った人がいない。

スーとお出かけしても、寒くて腕を組んでも誰にも非難されない。

カフェの同じテーブルでお茶も飲める。

私たちは会えなかった分の時間を埋めるように、よく話し、良く笑った。


駆け落ち?いや、スーが望んでいるのかもわからないし、公職についている父上に迷惑がかかるだろうしね。


それでいいと思うようにした。

これ以上は望むすべがない。


私は長く伸ばした髪をバッサリと切って、新しい生活へと踏み出した。

結婚はしない。もう、女性とみられる必要もない。私は、私だ。


そう思っていた。


スーが、割とあっけなく退職を申し出てきた。理由は言わなかった。

荷物をまとめて出ていくスーを、2階の執務室のカーテン越しに見送った。


スーは、振り返りもしなかった。



何万回も言ったなあ、私は私。

そう、スーにはスーの人生がある。そんなことに長いこと気が付かなかった。

馬鹿だなあ、私。


当たり前のように、いつも一緒だと思っていたのは、私のわがままだったんだなあ。


そっとカーテンを閉めて、そのカーテンに顔を埋めて泣いた。


言えばよかっただろうか?


私も行きたい、と。

行かないで欲しい、と。


でも、そんなことを言ったら、命令になっちゃうよね?

逆らえなくなっちゃうよね?

だって私、大公家の娘なんだもの。



この恋は…長い長い私の片思いだったんだなあ…。



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