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じゃあ俺だけネトゲのキャラ使うわ ~数多のキャラクターを使い分け異世界を自由に生きる~  作者: 藍敦
第十六章 西都の大ダンジョン

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第二百五十話

 スティルとの密会。時刻は深夜を回り、俺は紅茶と焼き菓子だけを口にしながら話を聞く。


「最後になりますが、シズカは既に帝都へと出立したようです。恐らく第二皇子の元へ戻ったのでしょう。帝都は、完全なる階級社会です。リンドブルムのように下層、中層、上層と分かれていますが、それぞれの階層へ向かうには身分が必要なのです。恐らくシズカは上層、それも城塞区画にいるのでしょう。今の主では、事を荒立てずに侵入するのは難しいでしょうね」


「本当にそう思うか? その気になれば侵入くらい出来そうだが」


「シーレと小狐さんは無理でしょう? そこを狙われる可能性がある。そうなれば当然、武力衝突は避けられません。事を荒立てることになるでしょうねぇ」


 既にシズカがこの国の中枢へ向かったことを知らされる。

 そして、正攻法でないと会うことが出来ないのだという事実を突きつけられる。


「……黒幕連中をヘタに刺激するのも、帝国が戦を始めるきっかけを与えるような真似をするのも得策ではないか」


「ええ。ただまぁ……もし仮に、シズカを諦めるか、シズカをこちらの手中に戻すことが出来れば――その時はもういいでしょう?」


 その瞬間だった。ゾクリと、身の毛がよだつのを感じた。

 鎧の下の空気までもが一瞬で冷えるような、そんな怖気が奔る。

 スティルから、凄まじい狂気と、殺意が漏れ出てているのを、感じ取る。


「これ以上我が主を煩わせるのは我慢なりませんからねぇ。シズカが手中に戻れば、もういいでしょう? 戦争など起こさせずに、そのまま一瞬で灰燼と化せば良い。黒幕も、何もかも、一切合切。私だけでは難しいでしょうが――まだ、外に出せる人員に余裕があるはずでしょう? それに、この都市のダンジョンで追加のコアも手に入りますでしょうし」


「お前……『シュヴァイゲン』を顕現させろって言うつもりか」


「彼なら喜び勇んで滅ぼしてくれるでしょう? 私も、さすがに彼の殲滅速度には勝てない。何か対策を取られる前に一瞬で国を滅ぼすなら彼が適役です。無論、私もお手伝いしますがねぇ」


「……却下だ。最悪の場合、そういう手段を選ぶことがあっても、帝国を潰すような真似はしないよ。ただ、もしも俺と敵対し、滅ぼしたいと思える相手がいれば……その時は俺自らが手を下すさ」


 最悪を起こす必要があるのなら、それは俺がするべきことだ。

 シズカに執着しているのは俺なのだから。


 だがもし、帝国での活動を妨害され、完全に封殺され対抗することが出来なくなったとしたら、その時はしっかりと、俺達の負けを認めよう。

 敗北宣言をスティルにでも託し、この国のダンジョンから手を引くさ。


「スティル、情報感謝する。じゃあ、俺はそろそろ帰るよ。お前も、あまり無理はするなよ。あんな似合わない仕事、相当ストレスが溜まっているだろう?」


「そうですねぇ。なので、追加のドロップ缶をください? もう残り二缶しかありませんので」

「ははは……じゃあ残りは全部持っていけ」


 大量のアイテムをスティルのメニュー画面に移動する。


「で、結局俺は正攻法で帝都の上層区を目指せってことか。方法は?」

「『黄金隼翼章』を取得してください。あれは低級貴族と同じだけの地位、力が約束されています」

「今のランクよりもう一つ上のランクか……どこか大きなダンジョンをクリアすればいけるか?」


「我が主はまだ公には一つも大ダンジョンをクリアしていないので、二つクリアしてください。コアの売却に関係なく『国に利益をもたらす可能性の高い探索者』として認められるでしょう」


「なるほど。じゃあここをクリアしたら、他の都市に移動するさ」

「私の方でも、近々北の都市に拠点を移します。ついでにコアを入手しておきますよ」

「ついでで出来る……だろうな、お前なら。分かった、そっちは任せる。俺は南の都市を目指すよ」

「となると『南都サリザダバン』ですね。私は『北都ポルクラット』へ向かいます」

「詳しいな。じゃあ、次に会うのは……いつだろうな」


「そうですねぇ、何か大規模な事件が起きるのなら、帝都で会うこともあるかもしれません。が、そうならないことをお祈りしておきますよ、我が主」


「そうだな。じゃあ、今日はこれで失礼するよ」

「ええ、ごきげんよう、我が主」


 そうして、俺はそこでスティルと別れ、借りた家へと戻る。

 一層暗くなった夜の歓楽街。照明の数が減り、代わりに闇に生きる者が増える時間。


「ままならないもんだね、本当」




 帰宅すると、家の明かりがまだ点いており、シーレが一人、リビングで何かを書いていた。


「ただいま、シーレ」

「おかえりなさい、シズマ。随分と物騒な装備ですね?」

「この時間に活動するならね、ある程度変装は必要さ」

「なるほど。メルトは先に眠っています。スティルからの報告を共有して頂けますか?」


 俺は、彼から聞いた話を、そして今後の方針を彼女に伝える。


「……なるほど。国のほぼ頂点に近い場所までもう……スキルの力はきっかけにしかなりません。やはりあの美貌と経験、彼女のなせる技、かもしれませんね」


「そうだね。正直、ここまでとは思っていなかった。ストライキの先導から始まって、第二皇子の寵愛を受ける立場まで……正直早過ぎる」


「もしかしたら、シズカのことを第二皇子も利用しているのかもしれませんね」

「互いに利用して、か。ありえるかもしれないな」


 大衆を味方につけるシズカの力は、現在国の主権を手に入れる為に、長男と争っている第二皇子も欲しい、ということか。

 ……シズカ。見誤るなよ、自分の力を。


「じゃ、俺も寝ようかな。シーレも遅くまで待たせて悪かったね」

「いえいえ。では、今夜は私と寝ますか?」

「いいえ。メルトが寂しがるので大人しくそっちに行ってください」

「ふふ、残念。……無理はしないでくださいね、シズマ」


 こっちが多少、弱っていることなんてお見通しか。

 俺はせめてもの意地で、なんでもない風に手で軽く『行った行った』と示し、鎧を脱ぐ。

 ソファに横になり、目を閉じる。既に遠くへ向かったシズカに、少しだけ思いを飛ばしながら。






 スティルとの密会から、さらに四日の時が流れた。

 俺はこの日、再びダンジョン近くの探索者ギルドへと向かい、さすがにそろそろ定員に近づいてきているだろうと、職員に尋ねた。


「現在、試練の間に到達した探索者の総数は一八名ですね。パーティがもう一つでも到達すれば、試練の開始が可能です。近日中に、そちらの紙に印が現れるはずですので、ダンジョンへの入場をお願いしますね」


「お、ついにですか。これ、遅れたりすっぽかしたら不味いですよね?」


「そうですね、そこに更に追加のパーティが現れて条件を満たしてしまったら、貴方抜きで試練が始まり、また待ちなおしになるかもしれません」


 なるほど、これは今日からこの区画で待機した方が良さそうだな。

 俺は家に戻り、シーレとメルトの二人に、今聞いた情報を伝える。


「おー! ついに先に進めるのね! どんな試練なのかなー! 石像壊すのかな? それとも試合かな? 絶対突破してやるんだから」


「危険な試練の場合、参加拒否は……出来ないのでしょうね。事前準備はしっかりしておいた方がいいでしょう。シズマ、ゲーム時代のオート蘇生薬や、あらゆる薬の準備をしておいてください」


「そうだね、使えそうな道具はリストアップしておくよ。装備は……この間の鎧の方が舐められなくていいかな?」


「えー! 私あれイヤ! 怖いもん!」

「私もあれは……舐められたとしたら、実力で分からせればいいのですよ」

「ぐぬぬ……シーレが中々に過激派だ。分かった、いつもの装備で行くよ」


 どうやら、俺の鎧は不評だったみたいです。

 あと三年くらいもすれば、もう少し大人びた顔に成長してくれると信じましょう。

 そうして俺達は、早ければ今日、試練が始まるかもしれないからと、探索者区画にある武具店や飲食店へと、時間を潰しに向かうのであった。




「この街の武具屋さんって、変わった物が多いのねー?」


「そうですね、見たところ……これらはどこか特定の工房の作ではなく、ダンジョンから出土したもののようですね?」


「なるほど、だからデザインも全部バラバラだし、不思議な形の品も多いのか」


 この区画にある最も大きな武具店にて、不思議な刀身の剣や、やたらとオーラを放つ鎧、いずれも目玉が飛び出るような値段の装備を目にし、これらがダンジョン産の品だというシーレの言葉に納得していた。


「ふふん! でも、私の剣の方が凄いんだから! シズマがプレゼントしてくれたこのダガーなら、きっとどの武器にも負けないわ」


「ええ、きっとそうでしょうね。凄く、美しく洗練された品です」

「まぁ、それを越えられる剣なんてそうそう出てこないと思うよ」


「綺麗だもんね。それに、この剣だとどんな相手だってスパスパ切れちゃうもの。石像破壊の試練がきても、これなら一瞬でバラバラにしてあげるわ!」


 かつて、シジマの姿で作り上げ、彼女に贈った二振りのダガー。

 それを手に、メルトは嬉しそうに、そして自慢げに語って見せる。

 ああ、俺も保証しよう。ここに並ぶ数々の武器達。中には魔剣に類する品だってあるのだろうが、そのどれよりも、メルトのダガーの方が強力だと。


「何かしらの破壊競争だと良いですね」

「そうだなぁ。お、あっちに薬品の棚があるな。もう回復薬が市場で出回り始めたのかな?」


 ふと、店の中にある薬品棚が目に留まる。すると、既にその棚には瓶が疎らにしか残っていなく、それが品薄ではなく、客がこぞって購入しているからだということが判明した。

 何故なら――


「すみません、少し場所を開けてください! 『コモンエリキシル』の追加を陳列しますよー! 回復効果は通常のポーションの数倍! ある程度の重症も、打撲程度まで弱めることが出来ます! さぁ、お値段は一瓶で三〇〇〇リクス! 水で希釈すれば通常のポーションと同じ感覚でも使えますよ! 四倍希釈で通常ポーションと同等だ!」


 そう、陳列されるや否や、客が殺到して飛ぶように回復薬が売れていたのだ。

 これは……とんでもない数の探索者を救うことになるのではないだろうか?

 メルトの親切心が、この都市を救ったと言っても過言ではないだろう。


「わー……凄い、これならみんな安心ね?」

「そうですね……しかし希釈しても効果が残るように作るなんて可能なんですか?」


「すっごく難しいよ? 本来成分のバランスを考えて作ってるものだから、勝手に薄めたら、満足に効果が出ないんだもん。でもこれ……たぶん、それに対応して作られているわねー」


「それは凄いな……今の都市の状況を考えて、薬不足にならないように工夫して作ったんだろうね」

「きっとそうね。シアンちゃん、頑張ったのねー」


 せっかくだからと、俺達も四つほど購入しようと店員の元に向かう。

 こういう買い物の為に持ち歩いている財布を取り出し、お金を出そうとしたところで――


「あ」


 財布に入れていた、いつでも確認できるようにしていた紙片。

 その紙片に、見慣れない赤い〇印が現れているのに気が付いた。

 ついに、試練の間の定員が埋まったのか!


「二人とも、薬を買ったらギルドに行くよ。どうやら、試練の始まりみたいだ」




 ギルドに向かい紙片を見せると、『ではこのままダンジョンの入場ゲートに向かってください』と言われ、すぐさま移動する。

 今日もゲートの向こうにある紋章には長蛇の列が続いており、俺達はダンジョンに途中から復帰する人間の為のゲートに並び、紙片を見せる。


「試練に参加されるパーティですね? リーダーのシズマさん、そしてメンバーのシーレさんとメルトさん。三人とも『白銀鷲翼章』をお持ちのようですね」


「はい。では、よろしくお願いします」

「いよいよね! 緊張するわねー!」

「そうですね……それに、中継されてしまうんですよね……」


 そう、俺達の試練の様子は、この探索者区画の一部の店や、ギルドの休憩スペースで放送されるのだ。

 そして……もしかしたら、とんでもない内容の試練をさせられることになり、その様子を見られてしまうのだ。

 まぁ、さすがにそんなことにはならないと思うのだが――


 俺達は転送紋章に入り、そして再び何もない、広いガランとしたフロアに転送された。

 だが、前回とは違う。今は俺達以外の探索者も存在しており、そして次々とその数を増やしている。


「ひーふーみー……お、今来た人達で丁度二一人だ」

「あ、みてみてシズマ。あっち……前に、私達が隅っこに寄せた探索者さん達がいる」


 メルトのひそひそ声に言われるまま、彼女の指す方向に目をやれば、そこには確かに、初めてダンジョンに挑んだ際、俺に攻撃を仕掛けてきた三人組の姿があった。

 ……向こうが悪いと思うが、俺も悪かった気がしないでもないな……。


「シズマ、何やら空中に文字が浮かび上がり始めました! 試練の内容が発表されるはずです」

「! よ、よし! じゃあ内容は……」

「何を壊すのかなー?」




『今回の試練は、発想力と推理力、度胸を確かめるものとなります。これから表示される、古のかすれ文字。そのかすれた部分を自分達で埋め、文章を完成させた後に、実際にその“文の内容を実行”してください。達成した人間から自動的に次のフロアに転送されます。棄権は禁止です』


「なんだ? クイズみたいなものか?」

「穴埋め問題でしょうか?」

「うん? 何か壊すわけじゃないのねー?」


 どうやら、今回は頭脳を使った試練らしい。

 ひとまず命の危険はないだろうと、ほっと息を吐く。

 だが――表示された穴抜けの文章が、大問題だった。






【ここは――――――ックス――――――ないと――――――――進めないフロアです】






『文字数に制限はありません。今自分達が持っている道具、人員だけで成立させてください』。

(´・ω・`)いよいよ今月が二巻の発売です。

というわけで、来週の更新から、少し更新頻度を上げようと思います。

是非、皆さんのお力で、この物語を最後まで書き切らせてください。

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