悪魔がウチにおりまして・1214
ウチには悪魔がいる。
タコ糸で肉を縛る悪魔が。
「ニンゲン、バットを取ってください」
言われた通り玄関にあった木の棒を渡す。
「そうですそうです。このバットで肉を叩いて……って愚か!」
ノリツッコミに愚かと言われるのは初めてかも知れない。
「この流れでバットは金属トレイでしょう!チャーシュー道を舐めてるですかー!」
手に持ったバットを床にドンっ。
「あのですね、できればですね、その縛った肉を乗せるためにですね、トレイを取って頂けるとですね」
最初からそういえばこちらとしても手伝ったのに。
「それにしても、たくさんあるわねぇ」
バットに積まれた肉はすでに5本以上。
その太さも腕くらいあり、2キロくらいはありそう。
「ザリさんに頼まれたですよ、今度はうどんにチャーシューを乗せるんですって」
あのお店は何をしているんだい?
「普通、ラーメンに乗せない?」
「ボクもそう思ってます。だけどうどんのお出汁に合うチャーシューがあるはずと言い張って」
ザリガニ、そんな融通効かないこと言うなんて珍し。
「昔、オーストラリアで食べたチャーシューが忘れられないそうで」
全てが胡散臭いのですが。
「そう!私は以前オーストラリアに居たのです!」
……確かにオーストラリアでは養羊が盛んだけれども。
「貧困を極めたときに頂いた一杯のうどん。その上に乗っていたほろほろのチャーシュー。私はその一杯に命を救われたのです」
羊さん、熱弁しているところ悪いんだけどもアンタの依頼なの?
「ザリさんに無理言ったお客ってアンタですかー。それなら自分で作れですー」
悪魔の文句はごもっとも。
「ご依頼金はザリさんにこの通り」
「わぉ。誠心誠意務めるですー!」
いくら?ねぇいくら?
「ニンゲンさんも食べたいでしょう?お出汁と絡み合い、主張控えめ、脂濃くないのになぜか忘れられないあの味を」
あの、と言われても経験ないんだけど。
「その味を知ってる羊さんに味見してもらわないと完成しない気がしてきました」
珍しく悪魔が聡明ですねぇ。
「私はお出汁の味しか覚えていなくてですね」
それなのにチャーシュー求めてるわけ?
「そのほろりと崩れる触感はまさに至極っ!」
グルメマンガのような品評が始まったぞ。
「そんな良いモノなら、レシピくらい聞いてきてほしいですー」
悪魔はジト目で羊を見ている。
「それができたら自分で作っております!できないからこそザリさんに頼んだのです!」
巡り巡って悪魔だけどね?
「仕方ないですねぇ、出来たらボクにもお金出すですよー?」
「……それ、私じゃなくザリさんに言ってもらえます?」
ごもっともよね。
ウチには悪魔がいる。
「二重取りこそ!我が人生!」
とんでもねぇこと口走ってる悪魔が。




