悪魔がウチにおりまして・1209
ウチには悪魔がいる。
ペンギンの着ぐるみを着ている悪魔が。
「ケモノがケモノになっている」
「ふっふっふ、そんな挑発には乗らないですよ、ニンゲン!」
挑発と言うか感想と言いますか。
「これぞ、我が家に代々伝わっている気がするなりきり着ぐるみです!」
ペンギンだけなのだろうか。
「そんなことより悪魔、ボールペン知らない?」
「そんなこと!?」
だって着ぐるみ着ているだけじゃない。
「このぷりちーなボクを見たらボールペンとどっちが大事ですか!」
「ポールペン」
思いついた空想レシピをメモしなければならない気がする。
「そんなテキトーなことよりボクの愛くるしい姿を見て癒されるですー!」
「ハイ、魚」
ペンギン姿の悪魔に冷蔵庫にあったアジの開きを渡す。
「ニンゲン、生です」
「ウサギなら生で食べられるでしょ」
テキトーなこと返したら悪魔に正気を疑う目を向けられてるんだけど。
「……ウサギに、生魚ダメですよ?」
「知ってる知ってる」
あ、サインペンでもいっか。
「ニンゲン、今日はどうしました!いつもなら愉快痛快大殺界に乗ってくれるのに!」
その韻は踏む必要ありまして?
「今日は忙しいの。ほらうぱと遊びなさい」
ちらりとうぱを見るとカメの頭巾を被っていた。
「なに?お遊戯の日?」
「可愛いでしょう、クモちゃんも着てます」
クモの名前が出ると足元にあったスツールがのっそり歩き出す。
「……動物じゃない」
「クモちゃんがこれ着たいって」
本当に?
そう思いながらクモを見ると確かに誇らしげに鼻を鳴らす。
「クモちゃん、たくさんの毛に囲まれてみたいって言ってたので」
それで妙にけばけばしたスツールなのかぁ。
「乗れるの?」
クモに尋ねると自らの背中をぽんぽんと叩く。
「座って良いみたいですね、ボクも乗ります」
悪魔とクモに座るとなかなかのバランス。
さすがに大きなクモとはいえ、2人で乗るには少し狭いか。
「クモちゃん、重くないです?」
乗られたクモは意外と余裕そう。
さすが八脚、伊達じゃない。
「そうしたらニンゲン、どこに行きましょうか!」
「部屋から出ません」
さすがに大騒ぎになり……ならないんだっけ?
「ですよークモちゃんはアイドルですから」
ふぅん、それなら行ってみますか。
そのまま玄関を出て、街に繰り出すのだった。
ウチにはクモがいる。
公園で列ができてしまったクモが。
ただいま、クモ列車30分待ちです。




