悪魔がウチにおりまして・1194
ウチには悪魔がいる。
しいたけを被っている悪魔が。
そのサイズのしいたけ、どこから持ってきたのだろう。
悪魔の頭をすっぽりと覆うほどのサイズ、直径50センチはあるだろうか。
「あげませんよ」
「いりません」
じっと見ていたら勘違いされた。
ただ、そのサイズだと本当にしいたけなのか不安になる。
もっとこう、あっちの禍々しい何かなのではないか。
「とりあえず茹でて良い?」
「ダメに決まってます、クタクタになるじゃないですか」
煮ると柔らかくなるのはちゃんとしいたけだった。
「ところでそれ、どこから採ってきたの?」
悪魔が採って来たとは限らないけれど。
「実は竹じいに貰ったです」
竹じい、竹じい……あーあの人。
「また交流あったんだ?」
「時々稽古つけてくれるです。竹取槍術、侮りがたしです」
そんな設定を今出すんじゃありません。
「それは良いけど。しいたけと関係なくない?」
槍を使おうが剣を使おうが、巨大きのこがどこから出てくるのやら。
「それは昔、紀元後2000年くらいの話です」
うん、今だな。
「竹じいはきのこを育てたくなって、地下に倉を掘ったです」
じめじめしている方が良いものね。
「栽培は難航を極めたです。木を置いていてもきのこが生えてこなかったのです」
「ちゃんとタネ乗せた?」
「そこで竹じいは思いついたです。竹を置いてみたらどうかと」
絶対胞子を付けて無かったんだろうなぁ。
「竹にはちみつをたっぷり入れて、その上にしいたけを置いたらどうなったと思いますか!」
「腐る」
どう考えても方法間違ってるからね。
「苦難の連続、そんな折竹じいは思いました。本物じゃなくても良くない?と」
何一つ実らない努力をなさる方だ。
「そう思った竹じいは早かったです。手芸店に行くと大きなフェルトと綿をたくさん買ってきました」
……ん?方向転換がおかしくない?
「竹じいはスマホ片手にぬいぬいする日々。するとどうでしょう、手元には立派なしいたけがあるではありませんか」
何それ、フェルトクッションだったの?
「いえ、ベレー帽です」
確かに似てるけど。
「綿はどこ行ったのよ」
「これは詰め忘れたそうです。その結果ボクの頭に」
有効活用、と言って良いのかしら?
「結局しいたけは諦めたの?」
「みたいです。今は手芸教室に通って、お野菜クッションを作っているみたいで」
聞いたことある、にんじんの抱き枕とか。
「ニンゲン、フェルトって食べられますか?」
大事になさい、貰ったものなんだから。
ウチには悪魔がいる。
「……角に引っかかるんですよねぇ」
確かに帽子がピンと張ってると思ってた。




