とある休日2
アギエルは雪人の気まぐれで休みになったため、暇を持て余していた。ロクスウェルの方は近隣の国でオタクの祭典だとかいう祭りにいったし、サイリスはなんとなしに上手くいったサンライズとデートしにいっているし……だが弟としては……。
「……彼氏出来た事に喜ぶのはいいが連日祝杯はやめてほしい」
サイリスも結局の所……アギエルの家で寝泊まりをする事になり、ただでさえシングル用の8畳ほどの部屋にベッドを窮屈において尚且つ部屋を片付けるのがアギエルという地獄のような図式が完成してしまったのだ。
職場の後輩からは姉と同居とかマジうらやましいとか言われたりもするが、家族に欲情をするようなそんな性癖はあいにく持ち合わせてはいない。酒も強いほうだが姉が潰れるまでは寝る事はできんし、結局飯も作らねばならん。
「……全く弟の立場にめまいがするな……早急に不動産にいかねばな」
そんな事を考えながら片づけを始めると玄関のチャイムが鳴った。
「おう、アギエルいたか」
「ラグナさんか、散らかってるがいいか?」
大学院で共に研究するようになりラグナとも多少は気易く話せるようになったアギエルは手早く塵を片づけると珈琲を淹れる。
「インスタントでもうしわけないな、砂糖は?」
「今日は余り寝てないからブラックで………姉上殿達は相変わらずだな」
「ああ、相変わらずさ、是非注意してくれ」
ラグナも研究室のついでに遊びに来る事も多くなったせいか、サイリスやロクスウェルとも仲が良くなり、アギエルには料理を教わりに来るくらいだ。
「……面倒見がよいのだな」
「昔から役割的に俺だからな、ラクシャーナは迷惑かけてないか?」
「ああ、いつも楽しく我が家で過ごしてくれてるよ、今日予定は?」
「実は暇を持て余してるから部屋でも決めようかと」
「いいね、私も付き合おう」
「それは助かる」
アギエルはその言葉を聞くと同時に黒いコートを羽織り、ラグナは珈琲を飲み干し街へと歩き出した。
中央広場
「もうすぐ年が変わるな」
「ああ、主達が来て二年らしいな」
「月日は早い………まさか七天龍に会えるとは思わなかった」
アギエルは空を見上げラグナはくすりと笑う。
「大層なものではないさ、人に紛れて生きているだけで」
「……そうだな、そんなに大差がない」
ラグナはふふと笑う。
「それで……いつまで私達は友人なのかな?」
「いきなりな切り返しだな」
「いきなりな切り返しだとも」
探ることなく軽快に二人は話していく。
「私ははじめてあった時美しい男だといったよ?」
「そうか、俺は美しい女だと思ったよ、ラグナ」
「おや、呼び捨てかい」
「呼び捨てだとも、龍といえど小心者だからな」
「小心者は呼び捨てにするのかい?」
ラグナはクスクスまた笑いだす。
「そうとも、大きな気持ちになりたいからな」
アギエルもクスクス笑うと、いつの間にか街の不動産の一つにたどり着いた。
「ここで一つ提案がある」
「聞こうじゃないか」
「最近の流行でルームシェアというのがある」
「あるね、実に家賃が安くなり仲良くなれる技法だ」
ラグナはクスクスと微笑みを深くする。
「俺と住むのはどうか?特典弾むぞ、なんせ家事が得意でしかもやりくり上手……ずぼらな姉二人がついてくるが」
「それならば私と住むのもどうか?特典弾むぞ、なんせ魔術が得意で薬の開発も得意だ、料理はまだまだだが、可愛い妹分がつく」
「まあその女の子は俺の妹だがよしとしよう」
「そうだなよしとしよう」
ラグナとアギエルは手を叩きあい不動産へと入っていった。




