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女騎士は、団畜な部下を帰らせたい~最強上司は純真部下の恋心に気づかなすぎる~  作者: 藤谷 要


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第十六話 後日談

 ライラがあの元カレに突然復縁を迫られて一蹴した日の、宿舎に戻った直後だった。

 ソイスター商会の商会長とその娘であるアリシアがライラのもとを急に訪れてきたのは。


 その商会は元カレが勤めていた職場だったが、彼らがなぜライラを訪れたのか不明だった。やらかしたのが元カレ一人だったので、彼らは関係ないと思ったからだ。

 それを説明しようとライラは彼らとの面会を受けることにした。

 だが、宿舎では商会長を案内できるほどの質の良い部屋がなく、後日改めて騎士団に来てもらうことにした。


 ライラの身分が子爵であり、副騎士団長なので、慣れないうちはどのような対応が適切なのか今のライラには判断がつかない。そのため、グレンと騒ぎを聞きつけた騎士団長である王女が面会の場に同席することになった。


「この度は、私の娘の元婚約者であり、元従業員だったダンがリッセン卿に大変失礼なことをしでかしたと聞きました。誠に申し訳ございませんでした。本日ダンがリッセン卿のもとを訪れたときは、先日の授与式での卿への無礼さを見た娘からすでに婚約破棄されていたのですが、まだ我が商会の従業員ではありました。ですが、本日のダンの酷い行為をお聞きして、即刻解雇いたしました。我が商会が雇用していた従業員の不始末は、我が商会の不徳の致すところです。賠償金を支払う意思はもちろんありますので、是非お受け取りください」


 ダンが必死に復縁を願ってきた理由は、婚約破棄されたからだったとは。

 しかし、あんな人目のつくところで騒いだのだから、誤魔化しは効かなかったのだろう。

 まさか仕事まで失ってしまうとは。残念だが、ダンの自業自得すぎて、全く救いようがなかった。


 それよりも、ライラは素直にお金を受け取ったほうがいいのか分からなかった。

 特に商会を責める気はなかったからだ。


「ライラ様、商会長のおっしゃるとおり、誠意を受け取られてはいかがでしょうか。もし、受け取りすぎだと感じられたのなら、別の形でお返しすれば良いのですから」


 グレンがすかさず助け舟を出してくれたので、素直に従うことにする。


「お気持ち、確かに受け取りました。今後は、この件についてお互いに気にせずにお付き合いできればと願っています」

「寛大なお言葉、誠にありがとうございます」


 一人の従業員のせいで、商会長が頭を下げるはめになるなんて、ダンがしたことはよっぽど非常識だった。


 父親に黙って付き添っているアリシアも災難だったに違いない。


「アリシア嬢」

「は、はい」


 ライラが呼びかけると、彼女はビクッと肩を震わせる。


「世の中には見かけだけの優しい男がいるものです。彼の私への態度で、それを見抜いてすぐに別れたあなたを尊敬いたします」

「いえ、そんな、過分なお言葉、恐縮です」

「あのとき、ダンに釣られず、丁寧に私に挨拶してくれたあなたに今度こそ良い出会いがあることを願っております」


 ライラの言葉にアリシアは目を潤ませて、言葉を詰まらせる。


「あ、ありがとうございます」


 こうして商会長たちとの面会が終わり、彼らが帰ったあと、それまで黙っていた王女が口を開く。


「イシュルナー卿の助言、とても的確だったわ。ライラのサポートはもう少し経験のある方が良いと思っていたから心配していたけど、これなら大丈夫そうね」


 どうやら王女は対応に問題がないか確認してくれたようだ。


「そのお言葉を聞いて安心いたしました。王女殿下が同席してくださったおかげで、この件について変な噂を流す者もいないでしょう」

「うふふ、私のライラを貶めようとする者は、私を敵に回すと同義よ」


 グレンに不敵に笑う王女の言動を見て、ライラは一つ気づいた。


「殿下、お気遣いありがとうございます。なるほど、高貴な方の存在は、後ろ盾という意味にもなるんですね。勉強になります」


 うっかり変な会に参加すると、その人と同類だと認識されるということだ。

 貴族として付き合う人物の重要性を改めてライラは認識した。


 そのあと、騎士団の職場で普通に働いていたら、臨時職員であるファルミナ・ソイスターからも謝罪とお礼を言われて面食らった。


 なぜ彼女からもその話題が出るのかと思ったら、彼女はアリシアの妹だったからだ。


「あの現場を目撃して、すぐに父に報告したんです! もう副団長様に何をしているのって、すごくびっくりして。本当に寛大な処置に家族一同大変感謝しております」

「いいの、もう気にしないでね」


 苦笑いするしかない。

 謝る必要がない人たちから謝られても、ライラは居心地が非常に悪かった。

 当の本人からは、謝罪すらない。二度と現れるなと言ったが、代理人に頼むとか、手紙を送るとか、方法は他にある。つまり、本人が問題に気づいておらず、反省すらしてない状態なんだろう。


 グレンにそのことを休憩中に話すと、彼は深刻そうな顔つきをする。


「ライラ様の屋敷を維持するためには使用人を雇う必要があります。良ければ、私の実家から信頼できる人を紹介しましょうか? 腹に一物を持つ人を万が一雇っては大変ですから」

「本当? すごく助かるわ。色々と採用するにも、いちいち私が担当したら大変だと思って執事を雇おうかと思っていたのよ」


 国からもらった屋敷は、元平民だったライラの感覚からしたらかなり大きい。

 三階建てで、庭付きなので、一人では到底手が回らない。


「お任せください」


 そのあと、ライラの屋敷はグレンの実家の伝手のおかげで無事に使用人を雇うことができた。屋敷の家具や調度品についても、センスが分からないというライラをグレンが助けて、ご縁ができたソイスター商会に商品を依頼して、貴族としての体面を整えることができた。


 とうとう屋敷に引っ越ししたとき、世話になったグレンにお礼がしたくて、早速彼を屋敷に招待する。


 食事を振る舞い、奮発して高級なお酒を提供して、彼をもてなした。

 日頃のお礼とアウラ発現のお祝いで彼に剣を贈ったら、泣いて喜ばれたので、良い品を選べたと満足だった。


「未熟者の私だけど、これからも助けてもらえるかしら?」

「喜んで」


 グレンほどの良い部下は、なかなかいない。

 有能なのにヒラで勿体ないと思っていたら、アウラにも目覚めて昇進の条件を無事に満たした。

 順調に制御できれば、隊長格への道も遠くないはずだ。


 部下の活躍は上司として嬉しいはずなのに、前よりもグレンを遠巻きながらもキラキラした目で見ている女子が増えているので、最近ちょっとライラの胸中は複雑である。


 こんなに近くにいるのに、上司としてではなく、もうちょっと女性として見てもいいのでは?とライラは彼に対して密かに思わなくはなかった。



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