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63話 勇者パーティーの奮闘(7)

所持スキル


パッシブスキル  『無限転生』『視力向上』『聴力向上』『運向上』

         『容姿向上』『短剣特効(速)』『水中歩行』『暗闇無効』

         『投擲(必中)』『レア世界』『頭脳向上』『視界向上』

アクションスキル 『空中跳躍』『物体透過』

 獅子顔に撃墜された俺は大地に突っ伏した。焦げた肉の臭いで吐き気がする。痛みは麻痺したようにあまり感じなかった。

 顔を上げると周辺が赤い。ペタンと座って眺める世界は炎に包まれていた。数秒で揺らぎが生じて薄まり、霞のように消え去った。

 獅子顔が近くにいた。グラグラと揺れて片膝を突いた。他の者達はすでに倒れて身じろぎもしない。

「……知略による勝利、見事だ。我の問いに答えよ。宝玉の特質に、いつ気付いたのだ?」

 肩で息をしながら獅子顔は問い掛けた。

 答える前に俺は何度も小刻みに息を吸った。片方の肺が潰された影響かもしれない。

「はっきりとはわからないが引っ掛かった。人類を圧倒できる力を持ちながら今までは小競り合いで済ませていた。宝玉を奪われたことで王都を攻め落とした。宝玉にはそれだけの価値があるということだろう」

「何故、宝玉を壊そうと考えたのだ」

「最初の戦いで俺は首を狙われた。お前が止めたことで意図を理解した。宝玉のないところを狙ったと。そこで魔王に宝玉を破壊させる案が思い付いた。その結末まではわからなかったが」

 多くを語ったせいなのか。力が抜けてきた。感覚も乏しく酷い眠気に襲われる。

 獅子顔の上体が傾き、受け身も取らないで倒れた。顔を横に動かし、力ない声を絞り出す。

「女神に対抗する為、秘術で生み出したのが宝玉だ。魔王軍の者達の命が、詰まっている。故に肉体は、不死を得た。それが、壊された、今、我等は……」

 獅子王は沈黙した。俺も同じ末路なのか。首が据わらない赤子のように揺らぐ。

「おめでとさんですー。達成ガチャをお届けに参りましたー。盛大にチリンチリンなのですー」

 場違いに明るい声は上からだった。

 揺れる頭で空を見上げると黄金の光を纏ったカプセルトイがゆっくりと降りてきた。その上には純白のイブニングドレスを着た女神のような人物が小躍りしていた。両手にハンドベルを持ち、上下にシャカシャカと動かす。

 音も無く大地にカプセルトイが降り立つ。女性は軽々と跳んだ。金髪とスカートを広げて俺の手前に着地。しゃがむとにっこり微笑んだ。

「達成ガチャを回してくださいな」

「……死にそう、なのですが」

「そうようですねー。少しだけ、命を延長してあげましょう」

 女性は両手を伸ばした。俺の顔を挟み、上に向けさせてキスをした。その状態で勢いよく息を吹き込む。無くなった部分が膨れ上がるようにして復活を果たした。

 女性は唇を離した。

「どうですかー」

「……風船になった気分です」

「女神の息吹ですよー。さあ、どうぞー」

 やはり女性は女神らしい。手を差し出した先には神々しいカプセルトイが(たたず)む。

 俺は握っていた右手を開くと金色のコインが現れた。表面には両翼を開いた女神が描かれていた。

 今一度、コインを握り締める。立ち上がって軽く息を吐いた。倒れている魔王筆頭に目礼して歩き出す。

 カプセルトイにコインを入れた。祈るような気持ちでハンドルを回す。

 出てきたカプセルも金色。その場で割って細長い紙を取り出した。

 両面にスキルが書かれていた。一面には『技能破壊』と書かれていた。他方に『技能詳細』とあった。

 女神は胸を弾ませて駆け寄る。

「どうでしたかー」

「このようなスキルでした」

 渡すと女神は、あー、と今まで以上に間延びした声を出した。

「達成ガチャの中ではハズレ寄りですねー。説明しますと、『技能破壊』は要らないスキルを壊すことができますよー。一回だけですが。技能詳細はー、獲得したスキルの詳細がわかるようになりますぅ」

「スキルを壊せる……」

「それでは受け取ってくださいねー」

 女神は俺に抱き付いた。強引に唇を奪う。足を絡めた姿で紙を握り、光球に変えて俺のこめかみ辺りに押し込んだ。

「はい、これで完了ですぅ。ごちそうさまでしたー」

「あのぉ、キスは必要なかったような」

「いいじゃないですかー。数十年振りの達成ガチャなんですよー。それしか出番がないわたしの気持ちがわかりますかー。女神心のわからない男性はモテません。もうプンプンなので帰りますぅぅ」

 女神はカプセルトイの上に乗った。ゆっくりと浮上を開始する。いつの間にか両手に持ったハンドベルを鳴らしながら、次はもっといいことしましょうねー、と片方の胸を()み出したまま踊り狂った。

 半ば呆れ、急いで気持ちを切り替えた。僅かに残された命を使って技能詳細を心に念じる。アクションスキルのようで頭の中に獲得したスキルが列記された。

 注目した『空中跳躍』は持続が三秒で再利用まで二十分と表記されていた。

 今回、大活躍した『物体透過』は持続が六秒で再利用まで八秒とあった。

 パッシブスキルには時間の指定がなかった。今回、獲得したスキルは全てアクションスキルで『技能破壊』は一回と限定されていた。

 命の終わりが見えてきた。右側が失われ、元に戻った。俺は(くずお)れるようにして倒れた。冷たい大地に頬を当てた姿でぼんやりと思う。


 技能破壊で無限転生を破壊したら、俺は……。


 考えが纏まらない。意識が濁って、この世界での役割を終えた。

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