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50話 大迷宮に挑む(2)

所持スキル


パッシブスキル  『無限転生』『視力向上』『聴力向上』『運向上』

         『容姿向上』『短剣特効(速)』『水中歩行』『暗闇無効』

         『投擲(必中)』『レア世界』『頭脳向上』『視界向上』

アクションスキル 『空中跳躍』

 決めた方向に歩きながら心に誓う。

 あまり慎重になり過ぎてはいけない。的確な判断と行動力で攻略を進めていかないと命が尽きる。

 先程、判明したのだが手持ちの食料が尽き掛けていた。噛み応えのある干し肉が五枚と缶コーヒー程度の容器に入った水しかない。

 準備不足ではなくて、すでに深いところまで入り込んでいるようだった。腰にぶら下げた道具はそれなりに使い込まれていた。

 灰色の壁に従って左手へ曲がる。一目で嫌な予感がして足を止めた。

 見通しの良い直線はかなり先で丁字路(ていじろ)になっていた。

 耳に意識を集中させる。遠くの方で鳥と思われる鳴き声。それ以外の物音は聞こえない。一気に走り抜ける自分の姿が頭に過り、すぐに取り消した。

 聴覚に優れているのは俺だけとは限らない。挟撃を恐れて走れば最悪の事態を自ら招き寄せるかもしれない。

 その判断は正しいと心中で言い含めて歩き出す。

 十分ほど歩いて気付いたことがある。古い石畳にやや新しい傷が付いていた。徘徊(はいかい)する何者かが残した痕跡と捉えることもできる。引っ掛かるのは不規則ではなくて、全てが横向きで統一されている点であった。

 一度、後ろを振り返ってから前を見た。見比べればわかるが直線の半分も来ていない。先の長さが否応なく不安を掻き立てる。

 脱出経路を探すように目は上へ向かった。そこにもささやかな不安が隠れていた。出だしに見た壁よりも高さを感じる。空中跳躍を使っても手が届くように思えなかった。

 膨らむ不安が俺の足を急がせた。走る寸前まで追い込まれ、前へ転びそうになった。

 数歩、後ろの石畳を見ると一部が凹んでいた。調べる間はなく全身に細かい振動を感じた。

 両側の壁がこちらに向かって同時に動き出した。走っても逃げられない。上は諦めて左右の二択となった。

 俺の目は右を選び、物体透過のスキルを信じて駆け出した。

 強固な壁はホログラムと同じで易々と通り抜けた。その先は小ぢんまりとした広間になっていた。

 背後から質量に比例した凄まじい音が響く。大仕掛けに反して動作の時間は短く、さすがに肝が冷えた。

 まだ安心はできない。大きな衝突音を聞き付けた者達がこちらに向かってくる可能性が捨て切れない。狭い通路に殺到する異形の者達を思い浮かべるだけで身体が猛烈に震えた。

 急かされるように広間を突っ切った。高い壁に仕切られた三方の通路が悩ましい。どれを見ても先が見えず、カンで右を選んだ。

 最初の直線は先に進むに連れて左へ緩やかに曲がる。古い作りのようで壁の欠損が目立つ。穴のような箇所には慎重になった。空中跳躍を使って回避した。

 何事もなく進む。反して警戒心が強まった。順調と見せ掛けた凶悪な罠のように思えてならない。

 緊張を強いられて歩いていると視界に白いものが漂い始めた。煙と違って臭いがない。最初の地点で目にした濃霧が発生する地域に入ったようだ。

 進む程にその濃さは増した。ほぼ強制と言っていい。俺は足を止めて前へ右手を伸ばす。指先が見えなくなった。

 暗闇無効のスキルは全く通用しなかった。引き返す案が頭に浮かぶ。が、実行には移せない。困難なルートの先にはご褒美が待っている。そんなゲーム的な発想が頭の中をパンパンに占めていた。

 俺は()り足で進むことにした。何か問題が起これば即座に引き返すと心に決めて前方を見据える。

 左右に対する用心も怠らない。両腕を水平に伸ばして突然の衝突を回避した。

 気分は綱渡り。少しの油断で足を踏み外し、命を失う。命懸けの行動を続けた。

「ぅお」

 軽い驚きで身体が前後に揺れた。その場にしゃがみ、前の方に右手を下すと指先が濡れた。その部分を嗅いでみたが嫌な臭いはしなかった。

 やや躊躇(ためら)いながらも指先を舐めてみた。酸味も甘みも感じない。真水のようだった。

 大雑把に調べてみると通路は水によって分断されているようだ。水溜まりのようなものではなかった。右腕を肩まで入れても底には届かない。

 俺は立ち上がって考える。


 ただの行き止まりなのか。または仕掛けによって通路が隠されているのか。そうだとしても状況が悪すぎる。手持ちの食料が限られているので迷う時間も惜しい。


 まずは水分補給と気持ちを切り替えた。腰に下げた容器を取り外して栓を抜き、中身を喉に流し込んだ。程々の喉の渇きもあって数秒で飲み干した。

 空になった容器は水の中に沈める。適当なところで切り上げて栓をした。

 この通路が行き止まりだとしても構わない。貴重な真水を得られたのだ。悪くない結果と言える。

「……戻るか」

 立ち上がって踵を返す。未練がましいのを承知で軽い溜め息を吐いた。

 その僅かな油断を狙うように足首を掴まれた。腰に下げたハンマーを取り外す前に俺は水の中に引きずり込まれた。

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