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第十七章 青すぎる空 8

雨は、朝には止んでいた。

レインは、鎮静剤で朝まで眠ったものの、目が覚めると恐怖が襲って、ガタガタと震えていた。

その様子をロブは不憫に思って、睡眠薬を飲ませた。

SAFから、アルバートを呼び、レインに付き添ってほしいと頼んだ。

ロブは昼までに、支度を済ませようとしていた。

カスターは、カインに挨拶しに行こうと、要塞をうろついていた。

間違って、地上に出てしまった。周囲は昨日の晩に雨が降ったことなど微塵もないかのように乾ききった土ぼこりが一帯を覆っていた。

大きな岩があって、そこに人がいてる気配がしたので、カスターは近づいた。

岩の陰に隠れて、エミリアがいた。

カスターは最初気が付かなくて、茫然と立ち尽くしていた。

スカイブルーのスカーフを握り締めていて、エミリアは泣いていた。

「あ、邪魔したかな。」

「いえ、わたしは・・・。」

涙をぬぐってエミリアはカスターをみて、見覚えがあったので尋ねた。

「あの、もしかしてSAFのクルーの方ですか。」

「ええ、そうだよ。ちょっとわけあって、診療室にいてて病み上がりみたいなものなんだけど。」

カスターもエミリアだと最初は気が付かなかったが、スカーフをみて、思い出した。

エミリアが首に巻いているのは、グリーンのスカーフで、なぜスカイブルーのスカーフを握り締めているのだろうと考えた。

「えっと、君はエミリア上等兵だったかな。訓練はどうしたのかな?」

「昨日、事件がありまして、わたしは事件のことを口外しないために、謹慎中なのです。」

「謹慎中なのに、こんなところで。」

「アップルメイト大尉のご好意で、体術訓練を受けていたのですが、思うように体が動かなくて、訓練を受けたことにして、休養するようにと。」

「そ、そうかぁ。邪魔したね。僕は道に迷ってしまって、こんなところに出てしまったんだ。」

キョロキョロしているカスターに対して、エミリアは沈黙していたが、顔をあげてカスターをみて、言った。

「お時間をすこしいただけませんか。誰にもお話しないという条件で聞いて欲しい話があるのですが、よろしいでしょうか。」

カスターは、エミリアが話ししたいことは、レインのことかと思いながら、うなづいた。


クレアは、支度をコーディにまかせて、ジェフが何かあったときのためにと用意してくれていた秘密の電話回線でテオと連絡をとった。

事件のことはテオにも報告が届いて、内容は伝わってこなかったので、人脈でもって、真相をつかんでいた。

エミリアたちがフェリシア捜索に向かったあと、スカイロードでは、フェリシアの隊列の教官と最後尾のエアジェットのメンバーが心不全で突然死した。

原因は不明だが、健康状態はいたって良好だった。突然死する兆候はなかったし、3人がいっぺんに同じ状態になるのも不自然だった。

要塞では、検死して原因を調べているが、薬物による致死ではないことは判明していた。

クレアはその内容を聞いて、白い魚を思い浮かべていた。

レインが遭遇した、人格をのっとられたホテルマンのことを。

そして、すこし、恐怖した。

(一度に3人も致死することができるというのか。)

白い魚の可能性を考慮して、犠牲になった三回生は確実に、ホテルマンのように人格をのっとられたに違いないと考えた。

クレア自身の考えはテオには伝えなかった。

下手に話せば、皇帝が動き、邪魔が入ってしまうと思ったからだ。

テオの情報を手に入れて、戻ろうとした時、クレアは開放されたジェフに会った。

「事件の知り得た情報を話すわけにいかないのですが、鉄鉱石窃盗団の捕獲作戦の際、突然死するものがいたことは内密になっています。

今回の事件と関係性があるのではないかと思っています。」

「ジェフ、そういうこと要塞ここで口にしていいのか。」

「突然死は検死報告書にはありませんから、内密といっても、僕の妄想ということで。」

「あ、そう。」

「そっち方面の情報をしらべてもいいのですが、今日発たれるんですよね。」

「ああ、すっかり、邪魔者扱いになったよ。大尉には気に掛けてもらってありがたいが、これ以上迷惑はかけられない。」

「そうですね。」

「で、ジェフもこれ以上首を突っ込むのはやめにしなさい。上に睨まれるぞ。」

「ええ、確かに。要塞ここは中央司令部から離れていならも、サンジョベーゼ将軍による皇帝派寄りと思われているみたいで、排除派から探りは入っているみたいです。

なにかあったら、潰しに掛かろうとしているのでしょう。」

「今回の事件と、排除派が関わっていたら、黒衣の民族カラスはそっちがパトロンになっている可能性もあるということだろうな。

ま、この手の話はこれまでにしよう。」

「では、なにか情報が手に入りましたら、少佐のところへ入れておきます。そのほうが無難でしょう。」

「ま、自分の身を案じて、よろしく頼むよ。」

ふたりは周囲を気にしながら、言葉を交し、何事もなかったかのように、分かれて行った。


雲ひとつない空のおかげで、地面は太陽から照りつけをもろにくらっていた。

エミリアは空を見上げて、まぶしい太陽の日差しを手で隠して、空を見ていた。

あまりに青すぎる空を見ながら、エミリアは、兄の事をカスターに語った。

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