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第九章  絆 1

登場人物


レイン=スタンドフィールド(主人公・愛称レイニー)

ジリアン=スタンドフィールド(主人公の弟・愛称ジル)

ロブ=スタンドフィールド(主人公の兄)

カスター=ペドロ(スタンドフィールド・ドックのクルーでメインは通信士・愛称キャス)

マーサ(ロブの父親ゴメス=スタンドフィールドの後妻。カスターの実母)

ゴメス=スタンドフィールド(ロブの父)

クレア=ポーター(ダンの養女。医者)

レテシア=ハートランド(元ホーネットクルー。グリーンエメラルダ号のクルー)

遅い食事を取っていたレインに、ロブが声を掛けた。

「レイン、体調は元にもどったのか。」

「あ、うん。もう大丈夫だよ。」

「食事が終わったら、展望台に来てほしい。話しておきたいことがあるんだ。」

しばらくだまって食事をしていたレインだったが、いつものように好奇心をむき出しにてロブに何の話をするのかとたずねたりしなかった。

「うん。わかったよ。後で行くね。」

レインの素直な様子に不安を覚えつつ、ロブは、その場から去った。

展望台にはジリアンがすでにいた。

日々つけている天気図をみながら、立体的な雲の様子をイメージしていた。

空を飛んでいく鳥の視点で雲をかき分けていく。

等圧線を指でなぞりながら雲の谷間をイメージしていき、下を見下ろすと地図上の山脈が見えて来る感じをとらえていた。

(まだ、1回しか飛行していないけど、足元をみたら、地上が全部みえちゃうんだな、パジェロブルーって。)

ドアが開く音がして、ジリアンが振り向くと、展望台にロブが入ってきた。

「話って、何なの?」

「レインが来てからだよ。食事をしていたから、終わってから来るように言ったから。」

「あのパジェロブルーっていうのは、クレアさんが言ってた話で飛行することになるの?」

「ああ、そうだ。」

「戦闘用って言ってたけど、どうやって戦うの?武器とか装備してなかったと思うんだけど。」

「それは・・・・。ジリアンがうまく操縦できるようになってから、パフォーマンスしてやるよ。」

「パフォーマンス?」

「どうやって、戦うかってことだ。口で説明するより、わかりやすいと思う。」

ジリアンの頭の中で、パジェローブルーがどうやって武器を使わずに戦うかと考えてみたが、どれもうまく連想できなかった。


レインは、食事を残してしまい、考え込んでいた。

考えれば考えるほど、認めたくない答えになった。

気分が悪くなって、顔を上げ、天井を見ていた。

レインのそんな様子をカスターは厨房で見ていたが、言葉はかけようとしなかった。

ロブが出生の秘密を明かすつもりでいることを知っているカスターは、これからレインがどんな気持ちになるのかと考えると胸が締め付けられる思いがしていた。

いずれは知らなければいけないことだとして、それはあまりにつらくないかと。

レインは天井を眺めていると蛍光灯がまぶしく感じた。

胸焼けしそうな感じがしたので、顔を上げるのをやめて、椅子をひいてたち、食器を持って、厨房に向かった。

「キャス、ごめん。あんまり食欲がなくて。」

「いいよ。まだ、調子もどっていないんだろう。今日は早く休むようにすればいい。」

「うん、でも、これから展望台にいって、兄さんの話を聞かなくちゃ。」

「そうか。」

レインの元気のない様子に心配だったカスターだったが、それをレインに悟られないように笑顔で食器を受け取った。

レインは食堂を後にして、展望台に向かった。


レインが展望台に入ると、ロブとジリアンは天気図を見ながら航空図を作っていた。

「遅くなってごめん。」

ロブは、ため息をついた。

レインは不思議そうにロブの様子を見ていた。

「どうかしたの?」

「いや、その。まず、何から話そうかと思って。」

ジリアンはロブの服を引っ張った。

「クレアさんの話は?」

「そうだな。」

ロブは書棚の上から、筒をとり、中から図面を取り出した。

図面を机に広げた。

「空挺のスカイエンジェルフィッシュ号だ。」

レインは目を見開いて、その図面を見た。図面を見ただけでは想像できなかったが、大きさだけは理解できた。

「クレアさんが、スカイエンジェルフィッシュ号で人命救助を行う。

これはグリーンオイル財団の慈善事業が展開するものだ。」

「兄さんがクレアさんのお手伝いをするって言う話なの?」

「ああ。お前たちもだ。」

「え?」

レインは一瞬理解できなかった。

ジリアンの顔をみていると驚いていないので、ジリアンは知っているのかとレインは思った。

「僕たちもこの空挺に乗せてもらえるの?」

「そうだ。クレアさんが乗せるように言ってきたんだ。

正直言って、俺はあまり気が進まなかったんだが、いろいろ面倒なことがあって・・・。」

「面倒なことって?」

「そのことで、大事な話をしておかないといけないんだ。」

ジリアンはそのことを知らないので、真剣な顔でロブを見ていた。

「ふたりとも、俺の話を最後までしっかりと聞いてくれ。」

ロブは深呼吸を小さくすると、今までになく真剣な面持ちで話し始めた。

「お前たちふたりは、オレの弟じゃない。ゴメスとマーサの子供じゃないんだ。」

レインは驚いたが、ジリアンは驚いていなかった。そればかりかしかめっ面をした。

「レインは・・・・。」

「聞きたくない!!!!」

ロブが言いかけたそばから、ジリアンは怒鳴った。

「僕がロブ兄さんの弟じゃないとか、レイニーの弟じゃないとか、聞きたくない!」

ロブはジリアンを気の毒に思った。ジリアンが真実を言葉にしなくても知っているということを理解した。

レインはその状態がなんだか、わからなかったけど、気を失ってから頭の中で押し問答しづけていることを思い起こしていた。

「僕のお父さんはゴメスで、お母さんはマーサなんだ。それ以外の人なんて、僕は知りたくもないんだ!」

ジリアンはそういうと、呼吸が荒くなった。

ロブは透かさず、ジリアンを抱きしめた。

「お願いだ、聞いてくれ。とても大事なことなんだ。」

「スーハー、スーハー。嫌だ!スーハー、スーハー。嫌だよ。」

レインは何かに取り付かれたように、言葉を発した。

「ママ、パパ。ママ、パパ。ママ、パパ。ママ、パパ。ママ、パパ。」

ロブはレインのほうに目をやった。

レインは魂が抜けた状態で、目が逝ってしまっている感じだった。

ジリアンもレインを見ていて、様子が変なのを理解すると、冷静になろうとしていた。

ロブはジリアンの呼吸が普通になったのを確認できると、レインの方に近づいた。

「おい、大丈夫か、レイン。」

ロブに声を掛けられて、レインの目から涙がこぼれた。

「ママはどこへ行ったの?もう戻ってこないの?」

その言葉を耳にしたロブは、唖然とした。

ロブはレインを抱きしめて言った。

「すまない、レイン。オレが悪いんだ。レテシアからお前を引き離したのはオレのせいなんだ。」

「ママ~。」

レインがそう叫ぶと、ロブを突き飛ばした。

ロブは机に背中をたたきつけられた状態になって、跳ね返った。

「うっ」

ジリアンはその様子をただただ、見ているだけでどうすることもできなかった。

レインは正気になっていた。

「僕は兄さんの子供なんだ。どうして、僕は本当の父親のことを兄さんって思ってるんだよ!」

ロブは背中に手をやって、やっと息が出来る状態だった。

しばらくして、やっと、言葉を口にした。

「言い訳をするつもりはない。ほんとうに聞いて欲しい話をまずは聞いてほしい。」

「聞きたくない。」

「頼むから、聞いてくれ。命に関わることなんだ。」

「嫌だ。」

「ジリアンを失いたくなければ、話を聞いてくれ!」

その言葉にレインやジリアンも冷静になった。

BGM:「小さなひかり。」fra-foa

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