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Face of the Surface (小説版)  作者: 悟飯 粒
彼らは新人類編
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魔力の話

登場人物

飯田(いいだ)狩虎(かこ):あだ名はミフィー君。俺は主人公なんだ………誰がなんと言おうと主人公なんだ。

・イリナ:最強の勇者。主人公だよー。

 魔力の狭義の意味は[1人に1つ生得的に持つ力]である。目には見えないが左胸にそれは存在するらしく、その能力に応じた形や大きさをしている。イリナの魔力はきっととても大きな雷みたいな形だろうし、俺もまた大きな炎の形だろう。偉い人達はそれを臓器のように例えるが、頭がメルヘンな俺は魔力は[魂]だと感じている。まぁ、そうなると俺が炎のように激情的な人間になってしまうのだが………ないな、うん。俺がそんな熱血な人間なわけがない。魂案はパスでお願いします。


 「そして広義的には魔力とは[この世界に存在する魔法エネルギーの総称]です。位置エネルギーから始まる運動、熱、光、電気………数えればキリのないこの物理エネルギーをもう一次元上げた代物だと考えてくれて大丈夫です」


 俺は右手を遠くにある岩に向けると炎を放った。その炎は空気を一切燃焼することなく突き進みぶつかった岩を消滅させた。


 「魔法エネルギーを熱エネルギーに変換させずに放ちました。そのせいで周りの温度を上げることもなく、酸素を消費することもない炎を作り出せるわけです。………魔法エネルギーとは熱でも光でもない不思議な力なのです。」


 そして話を聞いている11人の勇者達に向き直ると俺は話を続ける。


 「しかし勇者の大半はこの魔法エネルギーを扱えていません。みんな魔力を発動させても物理的に攻撃しているだけです。炎を生み出してもそれはただの炎で、水もただの水。物を燃やすことしかできないし水圧で物を少し削ることしかできない。みなさんの防御系の魔力も、ただ物理的に敵の攻撃を止めているだけにすぎません。それじゃあせっかくの力も持ち腐れだ…………あーーピンときてませんね。そりゃあ皆さん、自分の力に絶対の自信があるんですもんね。当然のことです。そこの人、ちょっと魔力を発動してもらっていいですか?」


 俺は一番遠くにいた人に立ってもらうと、その人に左手を向けた。


 「今から炎を放つので自分の持てる限り最高の力で防いでください。」


 それだけ言うと俺は直径30cmぐらいの炎を放った。そして勇者の方は魔力で巨大な盾を生み出すと炎を完璧に遮断し


ボッ!!


 しかし炎は盾を消滅させ穴を開けると、勇者の肩を掠めてどっかに飛んで行った。


 「今の炎は98%が魔法エネルギーで、残りの2%は勇者の皆さんでも視認できるように光エネルギーで構成されていました。このままアジト殲滅戦に参加すれば、皆さんはまず間違いなく成す術なく殺されたでしょうね。それは認識しておいてください」


 俺は両手の平を軽く合わせパンパンと音を立てる。ある程度の説明と勇者達の現状確認は終わったな。


 「逆を言えば魔法エネルギーを操ることができれば、魔王である俺の攻撃すらも防げるということです。………皆さんにはこの2日間で魔族の魔力を防御するプロフェッショナルになってもらいます。それじゃあ特訓開始!」


 そして俺は両手を力強く叩き、一段落したので地面に座ってボーッと空を眺めることにした。


 「……………」

 「……………」

 「……………」

 「………あ、あのーー具体的にはどうすれば?」


 近くにいた勇者が恐る恐るきいてきた。ああ確かに、具体的な方法を教えてなかったな俺。


 「不思議なパワーを思い描きながら魔力を発動するしかないですね」

 「ざ、雑すぎない流石に!?」


 ずっと黙って聞いていたイリナが我慢できずにツッコんできた。


 「不思議なパワーってなに!?君の説明なんかもう抽象的すぎるよ!意味わかんなすぎるんだけど!」

 「仕方ねーだろ魔法エネルギーなんだから。論理の外にあるんだから論理的に説明できないんだよ。アドバイスできることがあるとしたら、[頭を柔らかくしようね]ぐらいだな」

 「いやだからそれが雑なんだって!私も参考にしようかと思ったけど、そんな説明じゃ一切わからないよ!」

 「ん?いや、イリナはこんなの覚えなくていいぞ。もう出来てるから無意識的に」

 「え?ほ、本当?」

 「うん。だからイリナは魔族と互角以上に渡り合えてるんだぞ」


 イリナは戦闘の天才だ。人から教えられなくても、戦闘の中で有効策を無意識的に弾き出してしまう。しかも敵の未知の能力を見ても全然驚かないし………とても頭が柔らかいのだろう。対応力が凄まじく高いのだ。


 「だからイリナに関しては俺の大雑把な説明を聞くだけで十分なんだ。根本を[知るだけ]で勝手に本能が調節してくれるよ。好きに戦えばいいんだ」

 「そうなんだ…………やっぱり私って天才だね」

 「当たり前だろ。俺を殺せるのはお前だけだって確信してるからな」


 最強の勇者、勇者の希望…………イリナはこれからもまだまだ成長する。この世界のルールを超えて、魔王であるこの俺を倒してくれるはずだ。


 「難しく考えず、自由に振る舞ってみてください。例えば子供が気の向くままに壁に落書きするように、ルールや法則に囚われることなく、頭の中の全てを表現するんです。それが一番の近道でしょうね」


 俺の言葉を聞いて勇者の皆さんは練習を開始した。コツが掴めた気がしたら俺を呼んで試そうとするが、そもそも一朝一夕でできるものではないのだ。簡単に俺の炎に突破されてしまうとまた練習の繰り返し。それを見ながら俺は自分の修行を始めた。


 「さっきの説明さ、覚えてるイリナ?」

 「魔力の話の方?それとも習得方法?」

 「魔力の方」

 「広義と狭義ね。大体は覚えてるよ」


 さっきの魔力の話にはかなり大切なことが詰まっている。それを知っているか知らないかで魔力の取り扱いには雲泥の差ができるのだ。


 「ああ………実はな、さっきは勇者のことをバカにしてたけど、勇者には魔族にないものがあるんだ。それが何かわかる?」

 「えーーっと………身体能力?」

 「その通り。勇者は魔族に比べて魔力が小さいし扱いも苦手だけど、その代わりに身体能力が遥かに高い。その理由は魔法エネルギーが体全体を循環しているからなんだ」


 体の各部位や筋肉に宿っている魔法エネルギーのおかげで、常人では信じられないような身体能力を発揮しているのだ。逆に魔族は魔法エネルギーのほぼ全てを魔力に取られているから身体能力が常人に近い。


 「今から魔法エネルギー100%の炎の壁を作り出すから、イリナはそれを思いっきりぶん殴ってくれ」

 「私じゃあ見えないんじゃない?」

 「イリナなら見えるよ。俺が保証する」


 俺は赤色の炎で高さ1mぐらいの炎の壁を作り出すと、イリナはすぐさまにその壁をぶん殴った。すると壁は簡単に砕け散り消滅した。


 「どう?俺の炎に触れてみたわけだけれど、なにか感じた?」

 「いや何も、全然。ただ壁を殴った感じだったよ」

 「そうなんだよ。勇者は魔法エネルギーを纏っているから、高い身体能力の他に魔力に対する高い防御力を持っているわけ。本題に入ろう。俺はこれからこれを習得するつもりだ」

 「勇者と同じ性質を得るってこと?」

 「ああ。魔族側の魔力を封じられている今、格上の魔族や勇者と渡り合うにはこの技術が必要不可欠だ。ただこればかりは独力で出来ないから、イリナ、俺の練習相手になってくれ」

 「それならいいよ、お安い御用だ。」

 「あのーーちょっといいですか飯田狩虎」


 むっ!このフルネーム呼びは!俺は声がした方を見ると、そこには#寿々乃井__すずのい__#さんがなんかよくわからん剣を持って立っていた。ていうか振り下ろして………


 「イリナさんに気安く話しかけてるんじゃない!」

 「やだこの人俺のこと殺そうとしてくるんだけど!」


 間一髪なんとか攻撃をかわしきり尻餅をつく俺を見下ろす寿々乃井さん。そして地面に深々と刺さっているよくわからない形状の剣を引っこ抜くと、肩に担いだ。どういう形をしてるんだあれ?テニスラケット?いやもっとグチャグチャな形だな。剣と呼んだらバチが当たりそうなほど、物を切れなさそうな形をしている。でも今地面を切り裂いたわけだし…………どうなってるんだ?


 「ああ、ごめんなさい。ついつい憎ったらしい飯田狩虎がイリナさんと喋っていて殺したくなっちゃいました。………本題に入ります。どうやら私、魔法エネルギーを操れるみたいなんです」

 「え?いや………嘘はよくないですよ寿々乃井さん」

 「人の発言を聞いて真っ先に嘘だと決めつけるその考え方、恥じた方がいいですよ飯田狩虎」

 「ごめんなさい…………」

 「とりあえず私に炎を放ってみてくださいよ」


 俺は仕方ないから炎を放った。本当に操れているのか…………うわお。

 魔法エネルギー100%の炎を放つと、寿々乃井さんは簡単にそれを見切りよく分からない剣でそれを切り裂いた。


 「ね?出来ちゃったでしょう」

 「…………まじで言ってんのかよ」


 この第二試験の最初の合格者が寿々乃井さんとか予想外すぎるだろ。

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