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Face of the Surface (小説版)  作者: 悟飯 粒
彼らは新人類編
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魔法則と物理法則

登場人物

飯田(いいだ)狩虎(かこ):あだ名はミフィー君。主人公だったりじゃなかったりする。

・イリナ:最強の勇者。まな板だったりじゃなかったりする。いや、どう頑張ってもまな板だった。


 3日後に控えたカースクルセイドのアジト殲滅戦は苛烈を極めるだろう。その理由はたとえ敵側のスパイが勇者領内部にいようと、敵が不意打ちをたくさんかましてこようとも、勇者領側はこの戦いを避けることができないからだ。丁寧に説明していこう。

 まず第一に勇者領は敵の全貌を把握しきれていない。魔族と勇者、2つの種族が[勇者領を倒す]という志のもと集結していることはかなり危険だ。種族の垣根を超えて作られたグループは、志さえ一致すればどんな人間でも簡単に受け入れ巨大化していく。可能性が無限大なのだ。種族を超えて巨大な敵を倒そうとする彼らは視点が違えば主人公だろう。………話が逸れたが、とにかく、敵には拡張性がある。進化の余地とも言ってもよい。そのせいで敵は急速に成長しているため、手がつけられなくなる前に早急に倒さなくてはならないのだ。

 第二に俺の存在だ。君がカースクルセイド側として考えてほしい。ボタン一つで殺すことができるコントロールされた魔王が敵側にいて、しかも警戒するあまり敵がその魔王の力を封じたまま戦場に駆り出していたとしたら?補足説明をすると、その魔王の力は勇者領もカースクルセイドも壊滅できるものだ………としたら、当然、ボタンを奪取するだけで全てを手中に収められるのならば、ボタンを狙うはずだ。この戦いにおいて俺はどの陣営にも有利に働くジョーカーだ。アジト殲滅戦といってはいるが、本質的に見ると魔王争奪戦だったりする。まぁ俺からすればアジト殲滅戦なわけだけれども、その辺の詳しい話はまた後日しよう。とかく、魔族の最上位に君臨する俺を手に入れるチャンスなのだ、カースクルセイドが勝負をかけてこないわけがない。彼らを完全に倒したい勇者領はこの絶好の機会を逃すわけにはいかないのだ。

 絶対にカースクルセイドを倒したい勇者領と、確実に勇者領を倒したいカースクルセイド。この2つの組織による全力投入のぶつかり合いの架け橋になっているのが俺というわけ。つまりこの戦いを実現させ、なおかつ勇者領を勝利に導くために必要なことは[制御装置のボタンを絶対に守り切れる部隊を作り出す]ことなのだ。カースクルセイドの猛攻に耐え切れるだけの力………今日はそれを探し出さなきゃいけない。


 「飯田狩虎!イリナさんに近づくな!」

 「いや、10mは離れてるんだけど……」

 「もっとだもっと!100億km離れろ!」


 それ地球何周してるんだろう。約4万kmだから想像以上に離れてない気がする。俺はもう2歩だけイリナから離れると、勇者の方を見る。魔力制御装置のボタンを守る部隊の選考。結構大切なことだから勇んできたのに、なぜか現実世界の知り合いがいて拍子抜けなんだよなぁ。それになぜか俺嫌われてるし。やってらんないよなぁ。


 「正味、私から言わせればイリナさんがド派手に活躍すればアジト殲滅戦などすぐに終わるのだ!お前を守る為だけの部隊設立に私達の時間を使うんじゃない!」


 マジでめっちゃ嫌われてるなぁ。確かに生徒会長のくせに一切仕事しないけどさぁ………一応重要人物よ俺。


 「じゃあなんでこんな所に来たんですか寿々乃井さん…………」

 「イリナさんにお近づきになるために決まっているだろう!悔しいことにお前がイリナさんを独占しているからこの機会でもないと出会えんのだ!恥を知れ恥を!」


 ちょっと現実世界よりもあたり強くない?あっちだともっと静かに罵倒してなかった?ここまで情熱的ではなかったとおもうんだけど。


 「イリナさんお願いします。どうか私をイリナさんの私兵部隊に加入させてください。後生ですからなにとぞ、なにとぞよろしくお願いします」


 そしてイリナに擦り寄る寿々乃井さん。うわー必死だわこれ。


 「あれ知らないの?私の私兵部隊はもう解散したよ」

 「え!?」

 「ミフィー君のせいでみんなやめちゃったんだよね。真っ当な勇者なら魔王なんかと一緒に冒険したくないでしょ」

 「飯田狩虎ぉお!!お前のせいで私がイリナさんとウハウハ冒険する夢のような時間がなくなってしまったではないか!!」


 多分断られてたからいいんじゃないかな。正当な理由で断られるだけまだマシでしょ。


 「あーー寿々乃井さん。ひとまず本題に入りたいんで黙っててもらえます?」

 「私に指図するとはいい度胸だな飯田狩虎!」

 「寿々乃井さん。黙って」

 「はいイリナさん」


 たーーんじゅん。


 ようやく黙った寿々乃井さんを脇に追いやり、俺は今日集まってくれた勇者の人達に説明をすることにした。


 「ひとまず今日見たいのは敵の魔力に対する防御力です。俺がテキトウに炎を出すんで、各々好きなように攻撃を防いでください」

 「第二制御術式まで解放する?」

 「いや第三まででいいよ。大怪我されても困るし」


 俺は自身で解除できる第3制御術式まで解放すると、右手に炎をまとった。


 「でもそれじゃあそこまで力を測れないんじゃ?」

 「魔族の魔力は質が違うんだよね。なんつーか、こう………言葉にしづらいけど違うんだ」

 「ふーーん………でもまぁなんとなくわかるよ。私も魔族と何回か戦ったことがあるけれど、殺気っていうのかわからないけど気圧されたもん」


 殺気とは違うんだけどなぁ。こう………濃いんだよな、力が。ドロッドロのカレーとサラッサラのカレーみたいな違い。絶対伝わらないけどそんな感じなのだ。


 「ということでやる気のある人間からエントリーして来てくださーい」


 なんて言ってもそう簡単にやりたがる人なんかいないよなぁ。力を制限されているとはいえ魔王の魔力に触れるんだもん。怖いよね、わかるよその気持ち。でもこのままじゃ見定められないのよ。


 「うーーっす、オラがやるっすよー」


 というわけでこういう時の為にサクラとして黒垓君を紛れ込ませておいて正解だったな。彼ならば簡単に俺の魔力を切り裂いてくれるだろう。

 俺は全力で炎を発射すると黒垓君は白色の剣で簡単に切り裂き、更に空中で白色の手を生み出すとそれらを握り潰して消した。…………黒垓君の能力がなんとなく分かってきたな。


 「はい合格ー。次の人います?簡単ですよー」


 …………ダメか、誰も立候補してくれない。最初にしてはちょっとハードル高かったかな?


 「信用してないだけだと思うよ」

 「…………じゃあ代わりにイリナがやるか?彼らに全力で魔力ぶつけるの」

 「殺しちゃうからやだ。手加減できるような魔力でもないし」

 「だろ?」


 雷ってマジで元が強すぎるからなぁ。素が強いのに魔力で強化されてるんだもん、炎なんかよりもよっぽど恵まれてるよ。さて俺を信用しないことに関してはどうでもいいけど、話が進まないのはまずいなぁ。このまま意味もなく時間が過ぎ去ってしまえば殲滅戦に間に合わなくなってしまう。さーてどうにかできないものか………乱暴にやるか、もう。面倒くさいし。


 俺は片手を上に向け炎を放つと空高く上昇し、速度が0になり停止。


 「さぁ、どうにかして自分の身を守ってくれ」


 周りの空気と熱を奪い取りながら巨大化していき、接地する頃には直径1mという巨大な火球となって放物線を描きながら勇者達に降り注いだ。制限されている俺の力でも、魔族であるために魔力の質は勇者を超える。ただの炎ではなくて魔法の炎なのだ。ちゃんとした防御系の魔力を持たなければ無傷とはいかないだろう。絶え間なく降り注ぐ火球によって地面は吹き飛び砂埃が舞い上がる。しかしその砂埃すらも炎が飲み込み消滅させると視界が晴れ渡った。


 「残ったのは10人か」


 魔族の魔力を無傷で止められる勇者が10人なら十分だろう。ひとまず彼らは合格ということにしよう。


 「いや、11人だよ」


 イリナが指さした方を見ると寿々乃井さんが無言で立ち尽くしていた。周りには俺の炎を防ぎきれずに倒れている勇者達。………マジで言ってんのかよ。


 「………………」

 「………………」

 「………………」

 「あ、喋っていいよ寿々乃井さん」

 「お前ごときの攻撃でやられる私ではないわ!」


 寿々乃井さんにはここでリタイアしてもらいたかったなぁ。


 「じゃあ黒垓君、彼らを病院に運んでおいてくれる?放置してたらまた批判されちゃうから俺」

 「問答無用で攻撃した時点でかなり批判の対象だと思うっすよ」

 「ちゃんとチャンスを与えたのに飛び込んでこない方が悪いだろぉ?あと3日しかないんだ、急ぎたいんだよ俺は」

 「珍しいね。君がいれば次の戦いなんて余裕そうなのに………危機感でも覚えてるの?」


 怪我をした勇者を黒垓君のワープゲートに投げ込んでいるとイリナが聞いてきた。


 「俺に関しての危機感はないよ。ただ勇者領全体に対してはかなりの危機感を抱いているよ。正直、かなり追い込まれてると思うよ」

 「そう?私や君がいるのに?」

 「それが問題なんだよ。勇者領は第二類勇者に依存しきっている。第二類勇者を抜いた戦力を見るとカースクルセイドが圧倒的なんだ。このまま何も策を講じなかったら痛い目を見るだろうね」


 昴さんと青ローブがいるということは、ミレニアルズのように魔力を2つ持つ敵が量産されていると考えるべきだ。ここに俺達が予想もしていなかったことが起こると………最悪、下克上が発生しかねない。そうなるともう勇者領は立て直せないだろう。このままじゃいけないのだ。


 「早急に勇者達は強くならないといけないんだ。強い人間におんぶに抱っこでなんとかなる時代は終わったんだよ」

 「結構真面目に考えるんだね」

 「当たり前だろ。安心してイリナが俺を殺せるようにするには不安事項を排除しなければならないからな」


 負傷者の輸送を終えた俺は残った11人の勇者に向き直った。


 「んじゃあ次の試験に行く前に、ちょっと真面目な話をしますか」


 俺は地面に座り空を見上げた。


 「さっきもちょっと話に出てきたけれど、魔族の魔力は少し特殊なんですよ。階級が上がれば上がるほど物理法則を無視し、魔法世界の法則に従事する傾向が高いんです。例えば魔王の俺は酸素を燃焼させる炎を生み出すこともできるし、酸素ではなく魔力を燃焼させる炎も作り出せる。さらに踏み込めば燃やす以外も出来るわけなんですけれども………[炎]ひとつとっても魔族ができることは多いんですよ」


 俺は人差し指の先に炎を生み出し、それに息を吹きかけたが炎は激しく揺らめくことなく燃え続ける。外的要因による影響を排除する炎を作り出した。これは何物にも作用しないしされないから、酸素を消費することも熱を周りに発散させることもない。ただの[炎の様相をした何か]だ。


 「みなさんの魔力がどんなものか俺には分かりませんが、きっと、みなさんの魔力にはまだまだ先がある。物理法則に従っているうちは真髄に触れることはできませんからね」


 俺はその炎を握り潰すと急いで立ち上がった。


 「というわけで第二試験は[物理法則を無視すること]です。期限は2日間、俺がみっちりアドバイスするので魔力の真髄に触れてみましょう」


 さぁ、ここから勇者領を強くしていこうじゃないか。

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