俺たちのデート
また投稿が遅くなり、読んでくださっている方、申し訳ありません。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
悟は、約束の時間の15分前にはそこにいた。同じく早く来た俺に、笑ってなんか緊張する、と言った。昼だって会ってたじゃん、と言いながら俺もいつもと違う雰囲気に緊張していた。
「どっか、行く?」
「んー、こっち」
悟はゆっくり、石段を上り始めた。俺も続いて上る。神社へと続くこの石段は、長さはそんなにないが、一段一段が高く、上まで行くと結構疲れる。最後の一段に足をついた瞬間、はーっ、と息が漏れた。
「疲れた?」
「ん、大丈夫……」
差し出された手を握り、軽く体を預けるようにして歩く。悟は神社の裏手の小道を、俺の手を引き進んで行く。よく分からないまましばらく歩くと、急に見覚えのある場所に出た。
「ここって……」
「そう、雪だる展望台」
雪だる展望台は、昔俺たちがつけた名前だ。展望台の柵の飾りが、球体を上下に重ねた形をしていて、それがちょうど雪だるまのようでそう呼んでいた。展望台の上からは、この町のほとんどを見渡すことができる。小学生の頃の俺たちの、お気に入りの場所だった。懐かしさに思わず笑みがこぼれる。
「上、行こうか」
「うん」
螺旋階段を上ると、この細長い展望台の一番上に行くことができる。そこは、狭いけれどこの町で一番高い場所だ。
「きれいだな」
悟が呟いた。本当にきれいだった。建物の明かりが、闇の中でこの町の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせている。
「……きれい」
悟が笑ったのがわかった。
「デート……、成功した?」
躊躇いがちに聞いてくる声に、愛おしさがこみ上げて胸がいっぱいになる。
「……っ」
思わず、悟をぎゅうと抱きしめていた。
悟は驚いたようだったが、すぐに強く抱きしめ返してくれた。こうしていると、胸が締め付けられるような感じが、ぼうっとした心地よいものに変わっていく。
しばらくそれを味わってから、俺は腕を緩めた。数センチ先にある悟の顔を見つめる。ちょっと緊張しているように見えた。
「……ん」
さらに距離を詰めて、唇に唇を押し当ててみた。何となく、そうするのが正しいように思えた。
そして、それはおそらく合っていたのだろう。離れたと思ったすぐ後、角度を変えて何度も口付けられた。ただ当てて離れてを繰り返すだけのそれは、何度も悟に好きだと言われているようだった。
それから俺たちは、できるだけ時間をかけて来た道を戻った。少しでも一緒にいる時間を延ばしたかったのは俺だが、悟も同じように思っていると感じた。
「じゃあ、おやすみ」
「うん。おやすみ」
できることなら、ずっと一緒にいたい。そう思うほどに、別れた後は寂しさが残る。しかし、それでも不思議と心は満たされていた。
読んでくださり、ありがとうございます。
次回はまた、ヒロが登場する予定です。




