表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/253

ドローエマグの魔道書 8



 その日、俺は夢を見た。

 

「やあ、久しぶりだね小井戸くん」

「スターウェイ……?」


 俺は俺と向かい合っていた。といって、俺が見ている俺は明らかに俺じゃない。柔らかな物腰、儚げな存在感、魔法王スターウェイ=ランキャスターだ。

 以前会ったときは、映画館のような場所だったが、今回は何もない場所だ。空間すら存在するのか疑わしい黒の中に自分とスターウェイだけが立っている感じ。


「これは夢なんですか? あなたは俺が作った幻?」


 立て続けに二つ問う。スターウェイはすらすらと淀みなく答える。


「これは確かに夢だ。そして、僕は幻であり、現実でもある」


 夢だということは分かった。ええと……


「互いに干渉しない空間がいくつもある。しかし、それらの時間軸は同じ――神様は案外怠け者でね、それぞれの空間に管理者を配置するのを嫌って、全て一まとめにして管理しているんだ。だから、この僕は幻という基本属性を保ちつつ、本質的には現実の存在なんだよ」


 補足してくれたつもりなんだろうか。ムツカシイこと言ってはぐらかしているのか。まあ、どちらにせよ俺にはまったく分からなかった。


「伝わらないか、歯がゆいね。 ――そうだ、この間覚えた言葉を使ってみよう。どれだけ丁寧に説明しても伝わらない時、君が最初にいた世界ではこう言うんだろ?」


 スターウェイは諦めたような、人を馬鹿にしたような顔で、


「ググれ」


 古代魔法都市を収めていた世界最強の魔法使いが、しょうもないネット用語を……。



 *



「大体君が考えていた通りさ。ドローエマグは”魔導書”に分類されているが、実際はただの”ゲーム筐体”だ。仮想世界ではなく現実の異世界を使っていて、プレイヤーは生身の本体。という違いはあるがね」

「それって、もはやゲームじゃない気が……」

「形式が同じという話さ。それに、モンスターを育ててボスを倒しゲームをクリアするというのもRPGゲームというやつと同じ流れだ」

「まあ、たしかに」


 話が進まないので”RPGゲーム”は流した。


「それじゃ、やっぱりクリア不可な状況なんですか? ボスを倒さなきゃいけないのに、ボスがいない――手詰まりですよ」

「いや、そうでもない。ドローエマグの魔導書には”こう”書いてなかったか――世界の真実を解き明かせ」


 言われて思い出す。

 たしか「五体の聖なる獣を打倒し」、「世界の真実を解き明かせ」とページを跨いで書いてあった。


「ボスを倒すのは、世界の真実を知るための工程に過ぎない――と解釈することができる」

「そうか……聖なる獣を倒さなくても、世界の真実を見つければ帰れるんですね!」

「――かもしれない」


 かもって……ものすごく説得力があるけど、案外テキトーだなあ。


「でも、そうですね――何も分からないよりはいい。調べる方向性を変えてみます」

「ああ、そうするといい。小井戸くんなら、きっと帰れるさ」


――そんな根拠のない励ましの言葉が、夢の終わりだった。



 *



 翌日、再び三人で聞き込み。聖獣の居場所ではなく、世界の秘密を知っている人は居ないか、と聞いて回った。すると、いとも簡単に情報が出てくる。

 昼頃、昨日と同じ酒場に集合。集めた情報を出し合う。

 ラークとマローダも俺と同じような話を聞いてきたようだ。


「この町の長老は何でも知っている」

「長老なら、何を聞いても答えてくれる」


 フォエニの町で物知りと言えば長老――というのが共通意思のようだ。

 ふと、不思議に思う。

 それほど信頼されている人物がいるのに、何故昨日の時点で名前が挙がらなかったのか。


「聖獣の居場所を知りませんか?」

「私は知らないけど、長老なら知っているかもしれません」


 という流れになっても不思議じゃない。むしろ、その方が自然じゃないか。だというのに、俺たち三人が長老の存在を知ったのは今日になってから。不可解だ。

 昨日と今日で何が違うのかと言えば、質問の内容だ。

――特定のキーワードを使った途端、話が進んだ。

 いよいよゲームっぽくなってきた。正しい質問をすれば、意味のある回答をくれる。フォエニの人々はNPCということになる。まったくそうは見えない、どこからどう見ても普通の人だ。しかし、この世界自体非常識なところだらけであり、一概に否定もできない。世界の秘密とやらを暴けば、はっきりするのだろうか。まあ、今は深く考えないでおこう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ