33-2.相棒(2)
「まぁ、こちらもなんて美しい……」
「雄々しくも気品があって、いやぁ、素晴らしい!」
両親は、今度はノワールに夢中になっている。
「それにしても、ターナー家はすごいね。本物のフェンリルを目の前にしたら、多少は怖がるかなと思ったのだけど、全くだね。これほど興味を示してくれるとは思わなかった」
「それは……だって、二頭ともとても美しくてかっこよくて、素晴らしいのですもの!」
シェリルの言葉に、ケイシーが眦を下げる。
自分の相棒を褒められ、嬉しいのだろう。この表情で、ケイシーがどれほどフェンリルを大切にしているのかわかる。
「ヴァイスは一旦僕と帝国へ帰るけれど、ノワールは置いていくよ。居場所を作ってやってもらえると助かる」
「もちろんです!」
シェリルは即答する。ノワールはネイトの相棒だ。丁重に迎えなくては。
「それじゃ、僕はそろそろ行こうかな」
ケイシーがそう言うと、皆が集まってきた。
「ケイシー殿下、この度はありがたいお話をいただき、感謝いたします」
セドリックの言葉に続き、ローザも頭を下げる。シェリルもそれに続いた。
ターナー領で作ったポーションを、オルグレン帝国で売る。契約書を確認すると、卸値もそうだが、売れた際にターナー領へ入るマージンが通常より高い。こちらにとって、かなり有利な取引となっていた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ケイシーも一礼し、手を差し出した。セドリックはその手を取り、二人はがっちりと握手する。
ネイトもそうだが、ケイシーもターナー家を見下したりせず、対等に見てくれる。小国の最底辺の貴族にもかかわらず、尊重してくれる。それがとても嬉しかった。
「それじゃ、きゅいくん。そこを僕に譲ってもらえるかな?」
「きゅう……」
きゅいは離れ難そうにしている。そんなきゅいを無理やり引き剥がすことができず、ケイシーは困りながらも顔はにやけていて、ネイトにすっかり呆れられていた。
「兄上、キリがないぞ」
「そんなこと言ったって! きゅいくんのこんな切なそうな顔を見て、引き離すことなんてできないだろう!」
ケイシーも、すっかりきゅいの虜である。
「きゅうぅぅぅ」
「離れたくないよ」と言っているかのような鳴き声に、ケイシーは項垂れる。
「クゥ~、クゥクゥ、ウォンッ」
「きゅきゅっ」
すると、ヴァイスが何か言葉を発するように鳴く。それにきゅいが応える。
「きゅいっ、きゅきゅきゅ~~~っ」
きゅいは最後に何かを伝え、ヴァイスの背の上に立ち上がり、シェリルに向かって飛んだ。
「きゃあっ」
シェリルは何とかきゅいをキャッチし、ヴァイスを見る。ヴァイスはきゅいに向かって青い瞳を一度だけ瞬かせ、ケイシーを振り返った。
どうやら二人は、お別れを済ませたらしい。
「何か会話をしていたようだね。いやはや、驚きだ。それでは、ヴァイスときゅいくんの挨拶も済んだことだし、行くか」
ケイシーはヴァイスの背にまたがり、皆を見渡した。
「今後のことは、ネイトを通じて連絡するよ。行くぞ、ヴァイス」
「ウォーンッ」
ヴァイスは気合を入れるように鳴き、走り出す。最初からトップスピードに乗った走りで、その姿はあっという間に見えなくなってしまった。
「すごい……」
ターナー家の親子は、呆気に取られる。そしてきゅいは、いつの間にかちゃっかりとノワールの背中に乗って、黒い毛並みをもふっていた。
「よほど気に入ったみたいだな」
「きゅいっ」
ご機嫌なきゅいを見て、自分ももふりたいと思うシェリルであった。
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