表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/129

45-4.後始末(4)

「私は関係ない!」

「アシュトン侯爵に脅されていたんだ!」

「無理やり従わされていたのだ! どうか恩赦を!」


 有力貴族たちが続々と捕らえられ、部屋から出て行く。その中には宰相まで混じっていた。


「宰相まで罪に加担していたとは……」


 王が額を押さえ、首を横に振る。


「これまでアシュトン侯爵家、それに連なる家の者が、政治の中枢を牛耳っておりました。侯爵家は力を持ちすぎたのです。……我々は一刻も早く、腐敗した政治を正常な状態に戻さなくてはなりません」

「そうだな……」

「コンラッド、私はアネッタさんを送ります」


 エリアナが、アネッタの肩を抱きながらそう申し出た。コンラッドは頷き、側近に声をかける。


「頼む」

「承知いたしました」


 側近がエリアナとアネッタを連れて、部屋を出て行く。

 そして、扉が閉まったその時だった。


「父上! 私もアシュトン侯爵の悪事を暴こうとしていたのです!」


 ヘンリーが必死にそう訴える。

 ヘンリーはこの場に残されていた。大神官もである。大神官は項垂れたまま、石のように動かない。

 王はヘンリーを一瞥するが、すぐに目を伏せた。


「父上!」


 コンラッドがヘンリーと王の間に立ち塞がり、静かな口調で言う。


「ヘンリー、お前のやったことは許されない。アシュトン侯爵の件は関係なくな」


 ヘンリーはコンラッドを睨みつけ、責め立てるように叫んだ。


「聖獣は聖女の元にいるべきだ! 私は、大神官の望みを叶えようとしたまで! そもそも、最初に聖獣をターナー領へ連れ去った彼らが全て悪いのだ!」


 そうだろう? と同意を求める視線を大神官に遣るが、彼は俯いたまま顔を上げようとしない。


「大神官! お前も言っていただろう! 今更関係のない振りか!」

「静かにしろ、ヘンリー。大神官にも罪はある。だが、理由はどうあれ、ターナー領を襲ったお前の罪は重い。王族であっても、いや、王族だからこそ許されないのだ」


 あくまで淡々と語るコンラッドは、他人の目からすると冷酷に映るだろう。だが、彼も苦悩していた。

 なんだかんだ言いつつも、ヘンリーは家族だ。実の弟であり、幼い頃はそれなりに仲も良かった。そんな彼を断罪しなければならないのだから、内心では身を切られるような思いだった。


「ターナー領からも訴えが出ている。非があるのはこちらだ。厳しく対処する必要がある」

「父上! 何とかおっしゃってください!」


 ヘンリーは、コンラッドでは埒が明かないと、王に縋るような視線を向ける。しかし、王は何も応えようとしなかった。

 彼もまた、裁かれる身なのだ。王は、何が何でもヘンリーを止めなければならなかった。国のトップであり、為政者として。


「ヘンリー、お前は大きな罪を犯したが、私もまた同様だ。再びコンラッドを王太子とし、妃を娶った時点で私は王位を譲る。これはもう決定事項だ」

「!」


 ヘンリーは驚愕し、その場にヨロヨロと崩れ落ちた。

 王である父が、王位を退く。そして、兄のコンラッドが王となる。自らは廃嫡となり──この先、いったいどうなるのだろう?


「ああああああああーーーーっ!!」


 ヘンリーは狂ったように泣き叫ぶ。それに呼応するように、大神官も両手で顔を覆った。


いつも読んでくださってありがとうございます。

いいな、面白いな、と感じていただけましたら、ブクマや評価(☆☆☆☆☆)をいただけますととても嬉しいです。皆さまの応援が励みになります!

どうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ